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42歳のおっさん、赤ちゃんからやり直す ~営業スキルで異世界改革~  作者: コンペイ党
第3部 営業課長、消えかけた村を再生する編

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第百五十六話 営業課長、十年前の真相を聞き出す


「すべて話します」


ローディンは、そう言った。


アルトはすぐには答えなかった。


「その前に」


机の上に一枚の紙を置く。


「証拠を確認したい」


ローディンが頷く。


「分かりました」


最初に取り出されたのは、十年前の物流改革案だった。


「これは、どうやって手に入れた?」


ローディンが尋ねる。


アルトは答えた。


「旧王家倉庫です」


「……」


「西地区の火事の後、俺たちは黒帳が倉庫を利用していることを疑った」


アルトは続ける。


「その後、旧水路を調べた」


「そこで、黒帳が証拠を処分しようとしていた」


ヴィクターが補足する。


「燃やされかけた箱の中から、古い物流記録が見つかりました」


アルトは一枚の紙を持ち上げた。


「この紙です」


紙の端は焦げている。


だが、中央部分は残っていた。


「当時の物流変更指示書」


ローディンの顔が変わった。


「……それが残っていたのか」


「残っていました」


アルトは紙を裏返す。


「しかも、焼け残った部分に承認番号があった」


「……」


「王家物流管理局の記録番号です」


ローディンは黙り込んだ。


アルトは続ける。


「そこで、俺たちは王家の記録庫と照合した」


「照合?」


エリシアが頷く。


「王家の正式な記録と、焼け残った文書を照らし合わせました」


「すると――」


アルトが別の紙を出す。


「同じ番号が見つかった」


そこには十年前の日付。


そして。


レオン・レインハルトの名前。


レオンが息を呑む。


「俺の名前……」


「はい」


アルトは静かに頷いた。


「でも、ここで妙なことが分かった」


「何だ?」


マルクが尋ねる。


「王家の原本には、レオンさんに責任を負わせる記述がない」


「……何?」


レオンが目を見開く。


「つまり」


アルトは二枚の書類を並べた。


「後から別の文書が差し込まれていた」


「改ざん……」


ヴィクターが呟く。


「そうです」


アルトは頷いた。


「しかも、改ざんされた文書には正式な承認番号が使われていた」


ローディンが小さく息を吐く。


「そこまで調べたのか……」


「営業ですから」


アルトは真顔で答えた。


「数字が合わないと、気になるんですよ」


マルクが苦笑する。


「そこだけは相変わらずだな……」


アルトは次の証拠を取り出した。


「次はこれです」


黒い表紙の帳簿。


黒帳の帳簿だった。


「これは旧水路で見つけました」


ヴィクターが説明する。


「正確には、黒帳の人間が燃やそうとしていた箱の中です」


「箱?」


ローディンが聞く。


「ええ」


アルトが答える。


「三つありました」


「三つ?」


「一つは燃えていました」


「二つ目には物流記録」


「そして三つ目に、この帳簿が入っていた」


ローディンの表情が変わる。


「……そういうことか」


アルトは頷いた。


「黒帳は証拠を一か所に置いていなかった」


「火事や襲撃が起きても、全部を失わないようにしていた」


「はい」


アルトは帳簿を開く。


「だから俺たちは、三つの保管場所を別々に調べた」


そして。


帳簿のあるページを開いた。


「ここに、お前の名前がある」


ローディンは目を閉じた。


「……はい」


「これはいつの記録だ?」


「十年前です」


「金額は?」


「私が受け取った報酬です」


アルトは別のページを開く。


「そして、こっちは現在の記録」


そこには最近の日付が並んでいる。


商業祭。


物流妨害。


西地区。


東地区。


そして――。


ローディン。


「現在も黒帳から金を受け取っていた」


「……はい」


「つまり、お前の告白だけじゃない」


アルトは帳簿を閉じた。


「金の記録が残っている」


ローディンは何も言わなかった。


続いて、アルトは小さな封筒を出した。


「最後の証拠です」


ローディンの視線が止まる。


「それは?」


「旧王家倉庫で見つけた」


アルトは封筒を机に置いた。


「ただし、最初から中身が分かっていたわけじゃない」


「どういうことです?」


エリシアが尋ねる。


アルトは説明した。


「旧王家倉庫を調べたとき、床の一部だけ新しく補修されていた」


「……床?」


「そうです」


マルクが首を傾げる。


「普通なら見逃す」


アルトは笑った。


「でも、物流の現場では不自然な補修は目立つ」


「荷物を運ぶ場所だから、床の傷み方には規則性がある」


「そこだけ補修されていたから、床板を外してみた」


その下にあったのが。


小さな金属箱だった。


「中には封筒が三つ」


アルトは一本目を取り出した。


「一つ目は物流改革案の写し」


二つ目。


「二つ目は金銭の受け渡し記録」


そして三つ目。


「これが問題だった」


アルトが封筒を開く。


中から出てきたのは、一枚の指示書。


『レインハルト家に責任を集中させること』


その下には。


『物流改革を失敗に見せること』


さらに。


『王家内部の承認を取得すること』


最後に。


『承認者――王家最高位』


部屋が静まり返る。


レオンは文書を見つめた。


「……これが」


アルトは頷く。


「十年前、お前を悪者にするために作られた指示書です」


ローディンは長く沈黙した。


そして。


「……私が見たものと同じです」


「見た?」


「はい」


ローディンは顔を上げた。


「十年前、私はこの指示書を受け取りました」


アルトの目が細くなる。


「誰から?」


「直接ではありません」


「では?」


「王家物流管理局の中にいた連絡役です」


「名前は?」


ローディンは首を横に振る。


「当時は知らされませんでした」


「役職は?」


「それも分かりません」


アルトは少し考える。


「でも、王家最高位の承認が必要だった」


「はい」


「つまり、お前より上にいた人間がいる」


「……その通りです」


アルトは証拠を並べた。


十年前の物流改革案。


焼け残った変更指示書。


王家の原本。


黒帳の帳簿。


金銭記録。


そして、旧王家倉庫から見つかった指示書。


どれも別々の場所から入手した。


それなのに。


すべてが同じ事件を指している。


「これだけ揃えば」


アルトは言った。


「もう偶然とは言えない」


ローディンは頷いた。


「はい」


「十年前の物流改革は、意図的に潰された」


「はい」


「レオンさんは、そのための身代わりにされた」


「はい」


「そして、その仕組みを作った人間は――」


アルトは最後の指示書を指差した。


「今も王家の中にいる」


ローディンはゆっくり目を閉じた。


「……その通りです」


エリシアが立ち上がる。


「では、その人物を知っているの?」


ローディンは答えなかった。


代わりに。


黒帳の帳簿を指差した。


「そこに、もう一つ証拠があります」


アルトが帳簿を開く。


最後のページ。


そこには十年前の記録とは別に、最近の日付が記されていた。


そして。


その横には一つの言葉。


『次期承認予定』


アルトの表情が変わった。


「……これ」


ローディンが呟く。


「十年前で終わった話ではありません」


アルトは帳簿を見つめる。


「現在も続いている」


「はい」


「そして次に、誰かが承認する予定だった」


「その通りです」


アルトはゆっくり立ち上がった。


「なら、次はその承認を止める」


ローディンを見る。


「そして、その人物を引きずり出す」


十年前から続く黒帳の計画。


その証拠は。


一つの場所にあったわけではない。


旧水路。


旧王家倉庫。


王家記録庫。


そして黒帳の帳簿。


それぞれに残された証拠をつなぎ合わせることで。


ようやく一本の線になった。


━━━━━━━━━━━━━━


営業メモ①⑤⑤


「証拠は、一つだけでは弱い。


でも、別々の場所から集めた情報が同じ結論を示したとき、信頼性は大きく上がる。


営業でも同じ。


お客様の言葉だけを見るのではなく、数字、記録、現場の状況を照らし合わせる。


一つの情報を信じるのではなく、複数の情報をつなげる。


そこから、本当の問題が見えてくる。」


━━━━━━━━━━━━━━


次回予告


第百五十七話「営業課長、現在も動く黒帳を追う」


十年前の事件。


レオンに罪を着せるために作られた偽の物流記録。


そして、それを裏付ける黒帳の帳簿。


証拠はすべて繋がった。


しかし。


帳簿に残されていた『次期承認予定』という言葉。


黒帳は今も動いている。


そして――。


次に承認されようとしているものとは?

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