第13話 あるひとつの打開策
私は一つの解決策を思いついた。
思いついたのだが……
「これはかなり胡桃ちゃん次第になります」
「……」
胡桃ちゃんに思いついた作戦を話すと、黙り込んでしまった。
これが上手くいって嫌がらせが無くなるとしても、まあ嫌だよね。
「……舞衣ちゃん、そもそも私なんで嫌がらせ受けてるんだっけ?」
「え……?」
「たまたま湊くんの隣の席になった私が、たまたますご〜く可愛かったってだけだよね!?もう、いい加減にしてよねえっ!」
く、胡桃ちゃんがキレた……!!
怒ってる顔も可愛い。
「いいよ、いいわよやってやろうじゃないその作戦!そもそもどっちかといえば鷹司様の方が私タイプだし!もういいもんそれで!どうにでもなっちゃえ!」
半ばヤケクソみたいな感じで胡桃ちゃんは作戦を了承してくれた。
可愛い子って怒っても可愛いの羨ましいな……
そして放課後。
帰りのホームルームが終わり、皆が荷物を整理しながら帰り支度をしている時。
「た、鷹司くん!」
教室のど真ん中から胡桃ちゃんの声が響いた。
鷹司は無表情のまま胡桃ちゃんの方を振り返り、教室中の視線が一斉に二人に集まった。
「こ、これ受け取って!ら、ラララブレター!」
胡桃ちゃんが白い便箋を差し出した。
クラス中がどよめく。
「えーー!?胡桃ちゃんって、そうなの!?」
「う、うそだろ……!俺らのマドンナが……」
「わたくしはてっきり湊様派かと思っていましたわ」
当の本人である鷹司は相変わらずの無表情。
ちょっとくらい反応しなさいよ。
私の作戦的にはOKされたらそれはそれで困るんだけど、無反応だなんて面白くない男ね!
と心の中で悪態をつきながら群衆に紛れて二人を眺めていると、一瞬鷹司と目が合った。
なによ、まさか心の中を読めるわけじゃないよね?
酸っぱいファミリーじゃあるまいし。
私を一瞥したあと鷹司は小さくため息を吐き、ラブレターを受け取った。
「これは一応受け取っとく。返事はわざわざいらないよな」
「え、あ、はい!伝えられただけでも嬉しいです!」
鷹司はそれ以上なにか返すこともなく、ラブレターを鞄にしまい帰っていった。
ほかのクラスメイトも好き勝手言いたい放題しながら教室から出ていく。
「舞衣さん?帰らないんですの?」
飛鳥様が帰る様子のない私を不思議そうに見てくる。
「飛鳥様すみません、今日は先に帰っていただけますか?諸用ができましたので」
「まあ、そうなの?ではまた明日ですね、ごきげんよう舞衣さん」
飛鳥様はすこし残念そうに送迎の連絡をし、教室を出ていく。
気づけば教室に残っているのは私と湊くんの二人だけだった。
「まさかこう来るとはね、院瀬見さん」
「……」
「確かに桃原さんの件を自力で解決すれば、わざわざ僕の交換条件に乗る必要はない、か」
「……これで、交渉は決裂です」
そう、めちゃめちゃ遠回りでハイリスクな方法ではあったけど、湊くんが動かなくても解決できる方法はあったのだ。
「まさか昼休みから放課後までのたった2時間だけで覆すとは思わなかったよ」
「胡桃ちゃんが乗るかどうかは賭けでしたけどね」
「そうそれ、よく桃原さんを説得できたね。院瀬見さん、思ったより頭いいんだ?成績は目立つタイプじゃなかったはずだけど……あ、ごめんね?」
それ褒めてないよね?煽ってるよね?
私の成績はそれなりに良いよ!
「いえ、お気になさらず。学年トップ常連の湊くんに比べたら勝てませんわ」
「前回は一条さんだったけどね、暗記系が多かったから。それにしても院瀬見さんね……院瀬見さんかあ……全然計算外だったなあ」
「褒め言葉として受け取っておきます。さて、話は終わったようなのでそろそろ失礼してもよろしいでしょうか?」
「うん、バイバイ院瀬見さん。またお話しようね、僕まだ一条さん諦めてないし」
「えっ」
思わず素の声が漏れてしまった私を横目に、湊くんは天使みたいな笑顔を浮かべて帰っていった。
誰もいなくなった教室でやっと大きく息を吐くと、思考がクリアになっていく。
鷹司派閥については、あんなに盛大に振られてたし大丈夫でしょ。
むしろ胡桃ちゃんは玉砕覚悟の勇者として尊敬されるかもね。
運転手に連絡して駐車場に向かう道中、反対側の廊下で美結ちゃんと胡桃ちゃんが二人でいるのを見かけた。
何を話してるのかは聞こえないけど、慌てている様子の美結ちゃんを胡桃ちゃんがなだめてる。
……うん、これで大丈夫そうかな。
次の日、また重い体を引きずって日直の作業をしていると飛鳥様が教室に入ってきた。
湊くんと一緒に。
「へー!じゃあ一条さんは写真みたいに覚えてるってこと?」
「うーん上手く言えないですけど……あ!舞衣さん、ごきげんよう!」
ななな、なんで二人が!?
予想外すぎる展開に笑顔が間に合わない。
「ご、ごきげんよう。飛鳥様、湊くん」
「ぷっ……あはは!院瀬見さんって意外と顔に出やすいよね!安心してよ、昨日の僕らには誤解があったみたいなんだ」
誤解……?今更何をいってるんだ。
一体次はなにを企んでいるの?
「舞衣さん!湊くんから聞きましたわ!そんな気にすることないじゃないですか!」
まさか飛鳥様に全て話したの!?
そんなの、飛鳥様を傷つけるだけじゃない!
「そうだよ院瀬見さん、クラス内順位では5位なんでしょ?まさか成績の話をそんなに嫌がるとは思ってなかったんだ、ごめんね」
……ん?なんの話?
「湊くんから、昨日成績の話を舞衣さんにしたら怒らせてしまったかもしれないと、朝から相談を受けてましたの!なんだか可哀想ですし、もう許して差し上げて?」
こ、コイツーーーっ!?!?
そんっなちっぽけなことで私は怒りませんよ!
飛鳥様は私の事なんだと思ってるんですか?
でも本当のことを話したら飛鳥様はおそらく傷ついてしまう……はあ、ここは折れるしかないか。
「す、すみませんね湊くん、ちょうど最近両親とも成績の話をしていてピリピリしていましたの。もう気にしてませんわ」
「そうなんだ!全然大丈夫だよ!なんなら教えてあげようか?友達だし」
にっこりと天使スマイルを浮かべる湊くん。
むっっっかつくぅぅ!!
絶対昨日私に出し抜かれた腹いせをしてるでしょ、この腹黒王子め!!
「お気遣いありがとうございます。湊くんも次こそは一位でしょうか?応援しますわ、クラスメイトですし」
ピクっ
天使スマイルが一瞬だけ引き攣った。
撃っていいのは撃たれる覚悟のナントヤラって言葉を知ってますか?湊くん。
その後も湊くんは一日中なにかと私に突っかかってきて、正直かなりウザかった。
めちゃめちゃ昨日のこと根に持ってるじゃん、この子。
はあ、厄介な友人(?)ができてしまいました。




