超ド級ブーメラン!
『……ハチ、このお飾りって何処に置けばいいんだっけ?』
『門松は玄関だろうが! ったく、買おうかって言ったの兄貴だろうがよ!』
『しょうがないじゃないか! お爺ちゃんとお母さんに置いて行かれちゃってもう日本で年末を過ごすしかなくなったんだから日本楽しみたいと思うでしょう!?』
『だったら日本の風習理解してからワッショイしろ! にわかワッショイすんな!』
えーっと、だがしまったコレしめ縄が……神棚無いと意味ないじゃないかっ! テンション上がって買っちゃったけど使えないぞどうするってんだ!
『ええい注連縄は……取り合えずキッチンの入り口でも飾っておくか?』
『あーなんかそれっぽい感じはする。よし、やるか!』
……自分で言っておいてなんだが、取り合えずで飾る物ではない気がする。物凄い罰当たりな事してる気すらする。けどしょうがない。もういっぺんテンションが上がってこうなったら止まれないのだ。
『そう言えば雑煮は?』
『モチは買い込んであるから、後はそれを煮込むだけだが……アレ案外喉に張り付くから気を付けておかないとマズいぞ』
『あ、やっぱそうなの? お爺ちゃんも去年結構ピンチだったし』
『いやそれは流石に嘘だろ。あの爺ちゃんがモチにとか……』
……いや、案外想像できてしまう自分が居る。なんでだろう。やっぱり雑だからかな。そういう所が油断しそうとか考えちゃう原因になるのかな。
『……どんな感じだった?』
『喉叩いて吐き出してたよ』
『うん、想像通りですっごい雑だったよ。フッ、笑うわ全然……』
あーダメだ。ちょっとこれダメだ。ツボに入りそう。落ち着けそうなったらもう作業進まなくなっちゃうぞ。良し、こういう時は。
『ニュース見よう』
『何急に』
『ゲラにならないように真面目な雰囲気に直すんだよ。もう明日には元旦なんだから準備できるの今日までなんだ、一回ゲラになるともう作業どころじゃなくなっちゃうから』
えぇっとリモコンリモコン……っとあったあった。スイッチオン。
【えー、速報です。――に置かれた○○社の本社が昨日未明に半壊したというニュースが入ってきました。犯人は突如として本社に押し入った、大斧を構えた大男が先頭だった、と関係者の証言が幾つか出て居ますが、詳細は分かっていません】
『えっ、何これは……?』
『怖いなマジで。あの辺りは絶対に近寄らんとこ』
何だよ大斧って。ウチの爺ちゃんじゃねぇんだぞ。そんな蛮族二人も要らんわ……全く会社の人も余程怖かったろうに……
【えっ? 追加のニュース? ……そ、その本社の下にどうやら人体実験用の物や法にふれる研究施設が多くあった模様です! 大ニュースです! この企業は世界的に有名な巨大企業ですが――】
『えっ、ちょ、待って』
『何この二重の恐怖……』
えっ、蛮族が犯罪組織に攻め込んだって事ですか? なにその世紀末みたいな地獄の様相は……うっわ年末にこんな事が起きるんだなぁ。日本で良かった。日本治安良いって良く分かったよ。
『そもそも犯罪組織なんて本当にあったんだね……』
『いや、それは実際あったよ。俺と喧嘩したのは……あーいや、アレ組織って言うほどの物じゃないかぁ。ゾンビとか持ってたけど』
『そもそもゾンビ持っていること自体が異常だけどもね』
それはそう。というか、完全に感覚がマヒしてんのよな。ゾンビくらいじゃちょっとまぁそこまで気にしない良いくらいの感覚になっちゃったと言うか。『はー……激動だった。マジで』
『まぁハチはねぇ。唯の森林官だったのが』
『山で問題が起き過ぎなんだよね……いや。別に俺の責任ではない、っていう結論は出てるから減給とかも無いけれども』
こういうのって現場に居る人が責任取らされそうなイメージあるけど。でも案外ちゃんと仕事にしてると早々は現場に責任取らせるって事は無いみたいなんだよなぁ。いや、それはどうでも良いか。
『でもまぁこのニュースに比べれば。やー日本良いよね。娯楽も充実してるし』
『そりゃあなぁ……って兄貴、何ケータイ見てるんだ?』
『やっぱ日本に居るなら日本の娯楽に慣れようと思って……ちょっと動画巡りなんてしてたんだけど。彼とか結構面白いよね』
どれどれ? って、なんだこりゃ。
『Vtuberって奴か?』
そこには……結構攻めた姿の3Dモデル。でこれは、ゲーム実況って奴だな。うん。
『そうそう。鮫頭の大男。名前はミノ・シャーク……だっけか。個人勢。心身深々っていう事務所所属らしいんだけど……彼一人しかいないから実質個人勢だよ』
『へー。めっちゃピーキーな設定だなぁ。鮫頭の大男なんて』
『ねー。本人は「世の中にはもっとぶっ飛んだ一族の方もいらっしゃるので誤差ですよ誤差」とか言ってるんだけど、誤差じゃ済まないよねぇ』
『鮫頭だもんなぁ!』
全く、普通にイケメン男子とかなら兎も角……兄貴みたいな感じなら、まぁバッチリ受けそうではあるけど。中身がどんな奴か気になるぜ。
『しっかし良く出来たモデルだな。まるでお手本があるみたいだ』
『俺も初めて見た時は驚いたよ……それに加えて昨日デビューなんだよね。マジでぴちぴちの新人』
『昨日って……すっげぇな。大物新人って奴? しかもこのニュースでやってたのも、昨日の事件じゃなかったっけ』
『そういえば。とんでもない日にデビューしたもんだね彼』
ホントになぁ……っと、メールか?
『んー……? おや』
『どしたの』
『有馬さんから。一緒に除夜の鐘聞きに行かねぇかって』
まぁ、モデルが居ますよ。メッチャリアルなモデルが。




