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死んでるはずの令嬢に転生したので、悪役令嬢として生贄になります  作者: 椿 柚柑
第二章 広がる

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25 ヒロインに会いたい

ここからアリア視点に戻ります。

前話よりも少しだけ前の時間から始まります。



 八歳になった。

 今年やることはもう決めてある。




 おそらく、というよりは間違いなく確実にヒロインに転生している来栖に会って協力関係を築くこと。



 転生してるって確信は魔を受け取った時に得た情報によるもの。

 魔って言うのは魔王の魔力。それってものすごく万能。そこから生まれた使い魔のデューがなんでもできるのと同じようにね。

 だから魔を一瞬だけど受け取って、すぐにデューに作り替えて手放しちゃった私でもいろんなことが分かったの。

 思い出した、って部分も大きいかな。約束のこととか、自分のこととか。




 で、それによってここが虹シュバをベースに作られた世界ってことが分かった。来栖が協力してできたってことも。

 来栖自身が理想としたものをヒロインに詰め込んでいたてってことはきっと自分が生まれ変わるためだったんじゃなかなと。


小説通りならソフィア・リーヴァーとしてこの世界を生きていることも分かった。




 色々と小説と違うところがいっぱいあるけど、でも基本ベースがあの虹シュバなら、いろんな対策をたてられると思う。

 来栖が転生し続けていることも大体わかったし、書いてないけど知ってる情報が沢山あるはず。



 これから起こる可能性の高い出来事を一番知ってるのは来栖。

 それに、世界を救う役割を持っているのも、来栖が生まれ変わっているはずのヒロイン。





 私はまぁ・・・うん、生贄だからね。

 その瞬間が最後だから。泣いても笑っても。

 その後のこの国を守って救っていくのって、その後もここで生き続ける人にしかできないから。



 だからこそ、ヒロインである来栖と早めに連携を取っておきたい。私が生贄として一番友好的に捧げられるように、協力してほしいことがいっぱいある。


 世界救って国が消滅なんてことになったら嫌だからね。





 というわけで、五歳を過ぎて城に行かなくてよくなった時間を使って、ヒロインのことを調べ始めたんだけど、これが想像以上に難航した。


 そもそも、平民を探すってどうしたらいいのかさっぱりわからなかった。しかも子供だし余計に難しい。

 家名がある時点でそこそこ裕福か元貴族である可能性が高いんだけど、そんな人ってごろごろいる。

 ヒロインの物語開始前って、何をしていたかわからない。孤児ってことくらいしか書かれていなかった。優しいと評判の子だった、くらい。これじゃどこの誰だか全然わからない。


 ヒロインが救世の乙女だ!って発覚した魔力覚醒の出来事が起こる領地の名前を調べても、孤児として保護されていた教会を探しても、どこにもない。その名前の貴族も領地もない。貴族名鑑を調べたんだけどね、無かった。


 雪が降る地域って言う大体の情報しがわからず、領地の名前を地図で調べるしかなくて。だけどどこを探してもそんな名前はなくって。



「アリアは何を探してるの?」


 地図を見るのが苦手だと判明し、必死に領地の名前を探すように見ていたんだけどちょうど遊びに来ていたシトラインが図書室に来て見つかった。

 私とサフィリスが五歳を過ぎてから、つまりシトラインは六歳くらいのころから三年間、しょっちゅう遊びに来ている。客間に泊まってくこともよくあるし屋敷の許された範囲なら自由に歩き回ってるからこうやって一人で図書室に来ることも誰も気に留めない。

 使用人の誰かが目の届く範囲にいるようにしてるけどね。



 シトラインは最初のうちは魔力が強い子と知り合いになりたい、と言ってきていた。そうやってよその家に遊びに行けるのは、資料を見て思った通り使い魔をどう扱うかっていう研究を父であるギルベルトさんとしたことで、魔力暴走を起こすことがなかったから。


 大量に魔力を消費して使い魔を作り、それを契約でコントロールしたりしなかったり、というのを繰り返していたら、魔力暴走を起こしやすい幼少期をとっくに過ぎていて、暴走はほんの数回、小規模なものを起こしただけ。

 母親の手をほんの少し傷つけてしまって落ち込んではいたけれど、引きこもったり家族仲が悪くなったりもしなかったみたい。


 魔力生産過多による暴走って、三歳~五歳くらいがピークらしく、その間作っては試し作っては試し、としていたことが魔力のコントロール力を高めるし生産に消費が追いついて余剰魔力も生まれないし、いいことづくめだったみたい。


 シトラインも小さい光の球のような使い魔を従えているけど、デューのように自発行動もしないしテレパシーも使えない。伝えられていた通りのごく一般的な使い魔。

 危険察知や魔法を使うときの補助の役割や、万が一魔力暴走が起こったらバリアを展開して自分も周りも守るように契約しているみたい。 


 で、その契約をしている使い魔もいるし外に出ても誰かに会っても大丈夫ってなった時に、会いたいと思ったのは暴走を防ぐきっかけとなった私だった。ギルベルトさんとも何度も顔を合わせていたから会わせやすかったのもあると思う。

 そうしてうちに遊びに来るようになったシトラインは、私とサフィリスと三人で魔力のコントロールの練習をしてたんだけど、最近はサフィリスと実戦形式の練習をしてる。



 実践と言っても敵と戦うことを目的にしてはいなくて、実戦形式の演武の練習。

 宝剣士はそういう演目を祭事などで行うことが結構ある。

 子供だからって免除されることはないし、まあ今みんな子供だしね。


 魔法を吸収するシールド状の薄い膜が半円状に張られた舞台の上でがちがちにやりあう。防具やシールド、バリア魔法もつけてるから怪我はしない。

 派手にやりあうお祭り的イベントだから、見栄えのいい魔法の練習をしたり、どう見せるかを研究する必要があるみたい。


 サフィリスとシトラインは魔力の量がかなり多くて、目玉になる可能性が高い。あとはエレスチャルかな。彼もまた魔力量が多いけれど、攻撃魔法はあまり得意じゃないみたいで、おそらく花を降らせたりする演出系の魔法を披露すると思う。



 あ、ちょっと脱線したけど、そんなわけでロバイト家の魔法練習用の建物でよく二人はやりあっている。立ち会は実弟のお昼寝中にママがみていたり魔法省の人が来てくれてる。


 私も見てたんだけど、かなり長時間に及ぶ練習になるからいつも最初だけ見て途中で図書室に来て調べものをしてたんだけど。



「もう終わったの?今日は早かったのね。」


 いつもなら後数時間は練習してるはず。



「大公がまたこっそり遊びに来たの。表向きは僕らの練習を指導しに来たみたいなんだけどアリアを呼んで来いって。」


 大公・・・また来たのか・・・。


 大公はめちゃくちゃ頻繁にうちに来る。半分以上は指導目的って言うけど、どう見てもどっからみても私に会いに来てると思う。



 ものすごく優しい目で微笑みかけられるとドキドキする。怖いくらい整っている美しい人に微笑みかけられたら誰でもだと思うけどね。


 そうするとパパとか、サフィリスとかがイライラするし・・・最近シトラインもカリカリしてる。


 シトラインはいつもはにこにこ可愛くて、虹シュバでも可愛かったんだけど、今は幼いこともあってもっともっと可愛い。中性的な格好をしてると女の子が男装してるみたいなの。最近はリボンをつけるのにはまってるみたい。


 オネエ系というわけではなくフェミニン。そんなイメージ。


「そっかぁ。」


「で、何を探してるの?ものすごく眉間にシワよってたよ?」


「ええとね・・・雪の降る観光地ってどこが有名?」


「アリアは雪が見たいの?それならね、高山地帯に近いところよりも、こっちの・・・」


 サフィリスの両親、叔父様夫婦が今も働いている高山地帯はその高度もあって雪が降り積もる。私もそのあたりを探してたんだけど、シトラインが指をさしたあたりはそこから少し離れた場所で。


 そこを見て私は息をのんだ。


「ここのね、リーヴァー領って場所が良いって従兄に聞いたんだ。そこまで高級宿とかはないけど、平地に雪が積もるから一面銀世界できれいだって富裕層の平民や商人たちに有名なんだよ。」


 シトラインの指さした場所には、確かに”リーヴァー領”と書かれてた。







「姉上はどうしてお忍びで出かけたいんです?」


 リーヴァー領のことを知った後、とにかくその領地のことを徹底的に調べた。と言っても屋敷から出来ることは限られてる。

 ソフィアは領地を出ないし、今のままだと知り合うことも難しいというのもわかった。


 だからパパにリーヴァー領に遊びに行きたいな~~、と言ったけれど却下された。あれから数日毎日お願いしているけど、全然ダメ。

 三歳になった弟・・・サフィリスではなくてパパとママの子供であるフィガロにも協力をお願いしてパパを篭絡しようとしたんだけどダメだった。


 リーヴァー領ってちょっと遠いのよね。馬車で三日。わかってはいたんだけど・・・。陛下の許可も難しいとは思うんだけれど、パパさえ攻略できればと後押しになってくれるかな?って思ったの。


 最近ほんの少しだけ陛下が優しいしね。宝剣をベリルに渡して少し余裕ができたのかもしれない。

 宝剣を持ってると、持っているだけでかなり体に負担がかかるみたい。大きな魔力の塊を抱えているみたいなもので、疲れやすかったり魔力のコントロールが難しくなったりするみたい。


 だから早め早めに世代交代をしてるんだと聞いた。その交代のおかげで陛下に余裕が生まれたんだとしたら、許可を取るなら今だ、って思ったのよね。



 陛下と決めたルールについてもちゃんと守った案を出した。


 最近はギルベルトさんではなく、シトラインが魔力チェックをしてくれる。だからシトラインも一緒に行けば宝剣士二人いることにもなる。シトラインは良いよって許可してくれてるから、そのあたりも伝えたんだけどダメだった。


 生贄がどうのこうのよりも、パパが嫌っていう理由が大きかった気はする。




「雪と、それに訓練施設というのをのぞいてみたかったのよ。」


 一応雪がみたい~って意外に目的を一つ用意していた。

 リーヴァー領は魔法訓練施設がある。それを見学したいって。

 


 シトラインに教えてもらうまでリーヴァー領のことを知らなかったんだけど、その後調べたらいろんなことが分かって、その中の一つがその魔法訓練施設。


 魔法学園に入る前の子供から、卒業後もっと勉強したい人、あとは魔法省に入った人で実戦形式の訓練をするための宿泊施設付き研修所の役割をしている。



 そこがどれくらい機能していて、どれくらい能力があるのかを知っておきたい。

 私は魔力量が多いだけで練習はほとんどしてないし、その施設は女性も少しずつだけど増えてきてるらしいから、同じように魔力の多い女性がどう訓練しているのか気になる~っていう感じにしたんだけど・・・ダメだった。



 とりあえずこっそりデューに調べさせてはいて、ヒロインと思われる私と同じ歳の女の子が領主家にいるのはわかってる。名前はソフィア・リーヴァー。間違いなはず。


 侯爵家の生まれになっているあたりがストーリーと違うから気づかなったし、気にはなる。



 あともう一つ、こっそり調べた結果誰かがその領地に行かないといけなくなるようなネタはつかんでるんだけど・・・どうやってそれを調べたのかを明かせない以上切り札としても使い辛い。



「姉上は魔法をたくさん使うことはしても、攻撃的なものは使えないでしょう?そこに行っても学ぶことは少ないように思うのですが」


 そう、危ないから、という理由で攻撃に関する魔法はあまり使わせてもらっていない。

 基本的に生活魔法とくくられるものや植物の生長を促すようなものを多く使ってる。

 使わなくても私の回路がいっぱいになってしまうことはないから、魔法世界を楽しむ程度にちょこっと使ってるのを見せてる程度。


 本当のところは内緒だけどね。


「学びたいだけじゃないの。同じ女性の方々がどのように研鑽を積んでいるのか興味があって。だから身分を隠して体験入学のような形が出来たらいいなと思ったの。」




「へえ~アリアはそんなところに興味を持つようになったのか」


「大公!?いついらしたんですか?」


「今だよ。多分ここだろうと思って案内される前に来ちゃった。」



 パパにダメだしされた後、温室でサフィリスとお茶を楽しんでた。

 今日はシトラインは来ていなくて、実技練習はお休み。時々シトライン以外の宝剣士の人もこっそり来るけどなぜみんなこっそり来るんだろう。


 どうせこうやって頻繁に来る大公に見つかるんだから堂々と来たらいいのに。そんなに陛下の出した宝剣士同士の付き合いを禁じるって命令って重いのかな。

 (デュー視点で)見ている限りサフィリスとシトラインやエレスチャルが仲良くしてることに気づいていても、咎めることも止めることもしていないんだけどね。



「ジュピウム大公、執事が困ってますわ。お忍びならお忍びらしく大人しくしてくださいませ」


 最近私も言うようになった。余りにも頻繁にくる上にあまりにも我が家を自由に闊歩するので、ちょっと注意することにしてる。

 今も後ろからスヴェンが渋い顔してついてきてた。止められなかったらしい。まあもう顔パス状態だもんね。



「ははは、アリアは厳しくなったなぁ。私が遊びに来ても嬉しくない?」


 ちょっと寂しそうな笑顔でそう言われる。う・・・その顔に弱い。


「いえ、そういう訳では・・・」


「大公、姉上にそのようなことを言って困らせるのはやめてください」


 サフィリスがピリピリし始めた。最近多いなぁこういうの。

 まるで娘に悪い虫がたかっている、とかいう父親みたいな顔してる。



 大公ってもう三十歳くらいのはず。お父様より少し年上だから。そんな年の離れた人に何かされることもないでしょう。


「姉上も笑ってないで、ちゃんと言わないと。」


「ふふ、私が言いたいことはサフィリスが全部言っちゃうもの。」


「姉上~・・・はぁ。」



「で、ちょっと話が聞こえたんだけど、リーヴァー領の魔法訓練施設行きたいのかい?」


「はい。でもちょっと遠いからお父様にダメだと言われて。」


「確かに王都からだと三日くらいかかるか・・・エンジークは忙しいし、付き添えないから不安もあるだろうね。」


 パパは今とても忙しい。最近頻繁に鎖国政策を終了してほしいという他国からの打診が相次いでいて、外交復興希望の謁見希望や入国許可申請が大量に届いている。


 そろそろ宰相補佐から宰相に、と言われているけれど今国の中枢部分はかなり大忙しで、密入国者も増えつつあることから今代替わりするとその弱点を責められるんじゃないかという不安からお祖父様はまだ現役でお仕事されている。



 そういう状況で娘のわがままで往復六日もかかる場所に遊びに行くのについていけないし、だからといってその距離の子供たちだけでの(もちろんそれなりの強さのある大人に護衛や保護者役を頼むけれど)移動を許可できないだろうな~とは思ってたけど、思ってた以上に取り付く島もない状態だった。


 サフィリス、シトライン、それに大人の魔法に詳しい人として魔法省の訓練所に行く人についてきてもらったりしたら大丈夫かなっておもったんだけどね。

 私が生贄だということはあまり知られていないから、難しいかなぁやっぱり。




 こっそり遠方に行く魔法、転移術も作ってはあるんだけど、それを使うとなるとその存在を明らかにしないといけなくなるし・・・うーん、困った。



「ああ、じゃあ私がついていこうか。そしたら陛下も首を縦に振ってくれるだろう。」


「!!!ぜひ、ぜひお願いします!!」


 思わぬ言葉につい大公の手を取って喜んでしまった。


「姉上!」

 

 ごめんごめん、はしたなかったね。

 うう、でもそんなに怒らなくてもいいでしょう?



 サフィリスの気持ちはなんとなくわかるけど、これってサフィリスにとっても悪い話じゃないのよ。




 あなたが最も信頼する相手になるだろうヒロインとの出会いにも繋がるんだから。 





少々ストックが切れてきたので明日一回お休みして続きは15日の昼アップします

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