↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んでるはずの令嬢に転生したので、悪役令嬢として生贄になります  作者: 椿 柚柑
第二章 広がる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/33

23 疑惑

引き続きヒロイン視点となります。


「え?また?」


「はい。こちらの領を大変気に入っていらっしゃるとかで。お嬢様がいらっしゃらない間も何度か足を運ばれていますよ。」



 そんなこと、あるかな・・・。



 数か月前、まだ季節がぎりぎり秋だったころ、お忍びでどこかの貴族の人が領地に遊びに来て、教会に顔を見せていた。

 そんなこともあるんだなぁ、くらいしか思わなかったけど、冬も終わりが近づいてきた今でも、その人たちが教会に来ている。


 シスターが言うには、私がいない時もここに来るらしいけど、でも、私が顔を見せる時は必ずその人たちもいる。今日も訪問する予定だと教会に連絡があったみたい。

 


 そこまで頻繁に足を運んでいて、なんで領主の我が家に連絡がないんだろう?観光ならまああり得るけど、お忍びで教会に来るくらいなのに。

 お父様たちは知らないって言ってた。同時にあまり気にしなくていいよって。なんでなのかな。



 ここの領地は冬は雪が積もる。一部だけれど。

 比較的どこも暖かい気候の国だから、雪の降る場所はそこそこあっても、毎年必ず積もる場所って珍しい。

 ここは積もりすぎないから交通の便も悪くなりすぎないし、一面銀世界の風景を楽しんだりして観光するのにちょうどいい。


 だから、冬に貴族の人たちが遊びに来るってのはよくあるんだけどね。



 子供たちだけで毎月何度も、ってのはあんまりない気がするの。




 それに、もっと気になることがあるの。

 最近のお父様の行動。なんか怪しいの。



 ・・・以前よりもっともっと、お金の巡りがいいの。


 もちろん、うちは侯爵家だし、領地も広くて観光業もそこそこ盛んで、魔法の知識や技術、能力をかわれているしお父様は魔法省でも上位の役職についている。領地で生活しながら魔法の研究をして、数か月に一度魔法省に行って結果を報告したり、魔法使い専用の訓練施設があったりもする。

 だからそれなりにお金があっても別におかしくないんだけど、最近急に領地内の教会や孤児院、病院なんかを新設したり、建て替えたりしている。訓練施設も妙に大きく改築しているし。



 それらって結構お金がかかるのね、全部。


 あるにしたって、一度に大々的にやりすぎじゃないかなぁって不安。





 汚職、とか、やばい何かに手を出してるとか、じゃないと良いけど・・・。

 冤罪で汚名を着せられ消し去られたリーヴァー家、その歴史は消え去ったはずなのに、どうしても脳裏によぎる。



 ボロボロになって死んでいった両親の言葉。悪しき血などという汚名を雪ぎ家を復興させてほしい。そう言ってた。



 冤罪だとも言っていた。つまり濡れ衣を着せられたってこと。

 もしかしてそういうことが今起こっていたりするんじゃないかって。




 でもそんなこと、誰にも相談できない。

 だから私はいつも通り毎日勉強し魔法を訓練し、月に一回教会に来てボランティアをしてる。




 今日は春のバザーに向けての品物づくりのお手伝い。


 ここで保護されている女の子たちはお菓子作りや小物づくりをしてバザーに出品し、お金を稼いでる。それらは生活費なんかに充てられてる。

 男の子たちは木工品を作ってる。どっちもやる女の子もいれば、刺繍が好きな男の子もいる。この辺りは自由参加。


 私は貴族子女の嗜みとして刺繍をずっとやってて、まだうまくないけど簡単なモチーフなら刺せる。

 だからバザーに並べる品として刺繍入りハンカチを作るのを手伝っている。



 ちくちくしながら、時々来るそのお忍び一行の話を子供たちから聞くと、何だかものすごく受け入れられてるみたい。


「リーちゃんって女の子が、お人形さんみたいだった!」


 女の子がいたのね。リーちゃん・・・まあ偽名だろうなぁ。お忍びだしね。


「ライ君に文字を教えてもらったの!だからイニシャル入りの刺繍をさせるようになったの!」


 文字を教えられるくらいの教育を受けている子なのね。


「男の子たちがフィー君に木工細工を教えてもらったんだって!」


 木工細工ができるの?貴族の趣味でしてる人もいるけど・・・珍しいわ。



 男の子二人に、女の子一人で来ているってことはわかったし、口々にカッコいいとか可愛いって言ってる。そして博識だってこともわかった。




 ライはもしかして、シトライン・・・いや、でもまさか。


 彼は今九歳のはず。以前エジョン家で働いた生の時と同じなら、家で軟禁状態になっている。

 別に虐待でもなんでもなくて、魔力暴走を抑えられず自分も周りの人も傷つけてしまうから、魔法が使えない部屋から出ずに生活している。


 こんな外に出られるはずがない。エジョン領からここは遠いし。

 魔法暴走で家族を傷つけたことで見放されたと思い、一人じっとしているだけだったはず。



 ほかの二人は・・・わからない。もしかしたらフィーはサフィリスかもしれない。

 でも彼は今頃ロバイトの家に認めらえるために必死に鍛錬を積んでいるはず・・・十歳を超えたくらいでグレだして、王都の屋敷や領地を抜け出し遊び始めるけど。


 もしかしたら物事の流れが早まってる?


 でもそれだとしても、サフィリスとシトラインは交流なんてないはず。気も合わなさそうな二人だった。ヒロインの私がいれば別だけど・・・。

 二人とももうすでに宝剣士だから顔見知りではあるだろうけど、一緒に行動するはずがない。


 

 それに、リーちゃんって呼ばれるような女の子、いたかな。

 小説に書かなっただけじゃなくて、宝剣士たちの周りにはあまり女がいなかった。

 婚約者がいる人もいたけど、でもそれでも親しく付き合ってはいなかったし。


 女の子としょっちゅう出かけていた、なんて話も聞かなかった。書いてもないしね。



 まあ私の知ってることなんて、屋敷で洗濯メイドしていた時に聞いたくらいのもので、大した情報じゃないと思うんだけど、出かけたかどうかはわかる仕事だったから、あの二人が頻繁に出かけていた事実はない・・・はず。






 別人かもしれない、って可能性のが高そうだけど。


 なんで、なんで今なんだろう?


 お父様も何か怪しいし、汚職してるんじゃないかと心配で気になるときに、よくわからないお忍び三人組。

 いったい何しに来てるのかな・・・。





「お嬢様?先ほどお話ししたお忍び一行の方々なのですが」


「え、もう来たの?」


 来ると連絡があった時間はもうあと一時間ほど後だと聞いてた。


「いえ、雪道でこちらに来るのが難航しているみたいで、隣の宿場町から連絡便が。今日はうかがえないとのことです。」



 連絡便ってのは魔法で届く郵便。どの家にでも送れるわけではなくって、いくつかの決まった場所の郵便受けに送られる。役場や領主屋敷なんかに置いてあることが多いかな。ちょっと高級品。

 動かすのに魔力がそこそこ必要なのもあって、平民同士で使うってことはあんまりない。



 それを使ってわざわざ送ってくるなんて、よっぽどここに来たかったのかな・・・。


「それほど積もっているの?この辺りで道が通れなくなるほどって珍しいわよね?」


「いつもならそうなのですけど、今年は予想以上に積もっているみたいです。特に隣町はこの辺りでは一番雪が積もりやすい場所ですから・・・今日は夜にかけてたくさん雪が降るみたいですので、お嬢様もそろそろお帰りになったほうがいいかもしれません。」


 そう言われて外を見ると、雲は厚く薄暗くどんよりした空が広がっている。

 ここから屋敷まで馬車で20分くらいだけれど、降ってくると大変かもしれない。

 この辺りは雪かきしているし道路は積もっていないけれど、降り始めって走りにくく滑りやすいみたいだから。



「そうね・・・せっかく来たので心残りですけどそうさせていただくわ。」


「えー、お姉ちゃん帰っちゃうの?」


「ソフィアお姉ちゃんもうちょっとここで刺繍しようよ~」


 懐いてくれている女の子たちがそう言ってくれて、私は自然とにっこりした。


 最初はストーリー通りこの教会に接点があったほうがいいから、くらいで続けていたけど段々ここに来るのも楽しくなってきてはいる。

 慕ってくれる子もいっぱいいるし。勉強を教えたりするのはめんどくさいけど、刺繍を一緒にするのは一人でやるより楽しめる。



 でも、万が一雪で足止めになって一晩ここに泊まるってなると・・・今世はお嬢様育ちの私にはちょっと厳しいものがある。



「みんなありがとう。でも雪の中馬車を走らせるのは難しいから、そろそろ帰るわ。次は早めに来るからね」


 え~、と抗議の声がいくつか上がったけど、一人一人に挨拶して早々に教会をあとにした。






 屋敷に帰ると、いつもあるはずのお父様専用の馬車がなかった。


「お父様どちらかにお出かけされてるの?」


 執事に声をかけると、いつもの無表情を少しも崩さずに答えた。


「お仕事でございます。訓練所のほうに急ぎ行かねばならぬ用が出来たとのことで、夕食は奥様とお嬢様と二人でとられるようにとのことです。」


「まぁ・・・こんな雪が降りそうな時に、大変ですわ」


「お嬢様はお優しくていらっしゃいますね。」


 私が産まれる前からずっと我が家に務めている執事は、無表情ながら少しだけ優しそうな眼をした。


「お疲れでございましょうし、今日はお早めにお休みされたほうがよろしいかもしれませんね。」


 今思えば、なんであんなことを執事は言ったんだろう?ってすぐに気づけばよかった。







 言われる通り今日はいつもよりもかなり早くベッドに入った。夕食後ものすごく眠くって、起きていられなかったのもあるし、雪が降ってきた夜は音がなくて静かで、寂しい気持ちがして・・・前のクルスの生を思い出して辛くなるから、そうじゃなくても早く寝ることが多かったの。



 だけど今日は、夜中に大きな音と人の騒ぎ声で目が覚めた。



 ドン、ドン!と何かを打ち付けるような音が響いて目を開けると、外はまだ真っ暗。時計を見ると午前二時過ぎだった。

 こんな時間にどうしてこんな大きな音がしてるんだろ。人の叫び声みたいなのがいくつも聞こえる。



 怖くなってベッドからそっと出てショールを羽織る。調温魔法がかかってるから部屋も廊下も暖かくはあるけど、なんだか上に羽織ったほうが落ち着く気がして。

 歩きやすい靴を履いて持ち歩ける小さな魔法ランプを持ってドアに近づき耳を当てる。


 と、同時くらいに私の部屋のドアが開けられようとした。乱暴にドアノブがガチャガチャと回され音が出た。


 でも鍵はしっかりかけてある。ただ物理的な鍵しかかかってないからバレないようにそっと魔法をかける。

 そうやって開かないようにしてからノブに触れないように扉に耳を近づける。



「おい、そこはいい。薬で寝かせてある」


「いや、起きてるかもしれねぇ。全員ふんじばったほうが後腐れなくていいだろ。」


「どうせ燃やすんだ、わざわざ起こして痛い目見せなくてもいい。どうせ逃げられないんだから寝たままあの世に送ってやりたい」


「はっ・・・ほだされたのかよ。詐欺師の割にツメが甘いな。」


「子供が泣き喚く声が嫌いなだけだ。母親のほうも眠らせてあって起きてはない、娘も同じだ。証拠は回収したし、見たやつは殺した。もうそろそろ引き上げよう。」




 ・・・執事の、声がした。


 二人話している男がいて、一人は確実にあの無表情の執事。

 もう一人は知らないおじさんの声。


(薬で・・・夕食に入ってたのね。毒見役もグルだったのかも。お母様も眠っていらっしゃるのね・・・このままじゃ死んでしまうわ)



 私の部屋の真上がお母様の部屋。上に行くには廊下に出ないと・・・少しなら風魔法で浮かべるから外からいけるかも・・・だめ、見つかる確率が高すぎる。

 お部屋のドアのカギは寂しくなったらいつでも入っていいわよって言われて渡してもらってるからドアは開けられるとおもうけど、窓はそのカギじゃ開かない。部屋に入るには廊下から行くしかない。



 証拠隠滅・・・あいつらが何かしてたのね。お父様の腹心の部下ともいえる執事が。ってことはお父様も?

 わからない、けど燃やされる前に逃げないと・・・お母様を連れて。 



 できれば使用人のみんなも助けたいけど、誰が悪いのかとか全然予想がつかない。

 お母様も私と一緒で眠らされてるなら、きっとお母様は関係ないんだと思う。




 足音が離れていく。

 叫び声がいくつか聞こえる。何人が殺されてしまったんだろう。

 以前の生で自分が殺されたときのことを思い出して鳥肌が立った。



 見よう見まねで覚えた姿をくらませる魔法を自分にかける。


 足音などを立てなければ意識されないこの魔法は魔法使い同士のかくれんぼなんかで使われる。見破る魔法を練習する人と隠れる魔法を練習する人に分けて。

 訓練所でよくやる遊びながら鍛える方法の一つ。お父様に見せてもらって何となく覚えたけど、多分完璧じゃない。



 できるだけ早くお母様の部屋まで行かないと、ばれたら殺されるかも。




 緊張しながらドアを開けようとしたその時。


(・・・あれ、なんでお母様を助けたいのかしら、私。ここで私が死ぬことはきっとない、ヒロインだもの。神様は私が書いた物語を基準にして世界を構築し直したって言ってた。ということは私が死ぬことはないはず。



 ・・・でもお母様を助けに行って無事に済むとは思えないわ。)



 そんな思いが巡って手が止まった。




 鍵を開け、そっとノブを回せば、すぐに廊下にでられる。

 階段は近いし、声ももうしない。


 


 この人生、八年間、もうすぐ九年になる。

 その間ずっとお母様として慕ってきた相手は確かに以前も私の母だった。



 でも母が私にしてくれたのは呪いのように家を復興させろと、リーヴァー家の汚名を雪ぐようにと、それが悲願だと言い続けてきただけ。


 実際私はその通り、この世界でリーヴァー家を復興させている。悪しき血という名前で呼ばれることもない。




 元々想定していたヒロイン、ソフィアの人生において母親はいない。父もだけど。

 いなくても十分、問題がない。侯爵でなく平民の生まれでもいいはず、シナリオ通りなら。


 救世の乙女として活躍することに、意味があるのかしら。




 助ける必要って、あるのかな・・・



続きは明日のお昼になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。