第二話 魔物襲来
ルミナスとミラベルが街に着いて二日が経とうとしていた。久々の暖かい食事にふかふかのベッドに大満足だった。お昼を回った頃、ミラベルが出かける支度をしながら言う
「じゃあ、ちょっと私は魔法具店に面白い物でもないか見に行ってくるから」と言い、ルミナスは下着姿のままベッドの上から手を振るのだった。
ミラベルが宿を出て街を歩くと、最近の治安の悪さからか冒険者が多いのが目に付く。野盗退治や、魔物を狩ったり各地にあるダンジョン攻略等様々な理由で集まってきているのだろう。目的の魔法具店は大通りから少し入った路地の中にあった。古びた扉を開くと、多少の埃っぽさと本の匂いがする。ミラベルは目を輝かせ、店の中に消えていった。その頃ルミナスは着替えを済ませ、冒険者ギルドへと行こうとしていた。冒険者ギルドには様々なクエストや情報があり、ルミナスは何か依頼でも受けようかと思案しながら部屋を出る。途中、屋台で軽くつまめる物を買いギルドまで歩いている。ギルドに着くと早速荒くれ冒険者に絡まれる。
「おいおい、こんな美女が来るような所だっけかなぁギルドはよぉ!」っと笑いながらルミナスの前に足を投げ出す。別の冒険者もケタケタと笑いながら
「どうせD級辺りの貴族様の趣味冒険者なんだろう?帰ったほうが身の為だぜ!」と煽り立てる。ルミナスは足を跨ぐと気にせずカウンターに行く。冒険者もこんなのばっかりかと辟易すると受付嬢に問う
「何か良いクエストは無いかな?ランクは問わないのだが」と言うと受付嬢はクスクスと笑い
「まずは冒険者様のランクを教えていただきますか?それからでないと何も勧められませんよ。鼠に虎を狩れと言っても無理でしょう?」と馬鹿にしたように言う。ルミナスは無言で冒険者証を差し出す。そこにはS級の文字が刻まれていた。受付嬢は一瞬引き攣ると、急いで体制を正すと
「失礼いたしました。まさかこのような町にS級冒険者様がいらっしゃるとは思いもせずにご無礼を」
と言うと、ギルド内が騒ぎになる。
「S級だって!そんなのお目にかかった事ないぞ」
「本物なのか?国内に数人だろう」
だからランク証を出すのは嫌なんだとルミナスはうんざりしながら、受付嬢に再び問う
「で、何かいい感じのクエストは無いかな?」と言った時にギルドの扉が勢い良く開く。衛兵が飛び込んできたのだ。
「ま、魔物の群れが出た!西からまっすぐ街に向かってる。冒険者は助けてくれ!」という衛兵に受付嬢が
「数と魔物のランクは!」と青ざめた顔で聞く。衛兵は
「数は分からない。多分200か300くらいだと思う。ランクはC級多数に所々にB級やA級もいると思われる」と言うと疲れて座り込む。
冒険者たちは
「そんなの軍隊が出るレベルじゃないか!」
「無理に決まってる。今すぐ逃げたほうが良いぞ」
とパニック状態である。受付嬢はルミナスを見ると助けを求めるような目で
「S級冒険者様!お願いします。ギルドからの報酬も掛け合ってみますので何とかして頂けませんか!」と懇願する。ルミナスは一瞬考えた後で
「魔物襲来はどこまで情報が回っているんだ?」と衛兵に聞く。衛兵は
「もう町中がパニックになってる。魔物到着まで数十分と掛からないだろう」それを聞いたルミナスが
「ならもう大丈夫だな。この件は私の旅の連れが何とかしてくれるだろう。安心すると良い!」と言う。
冒険者たちはざわつくと
「お前は行かないのかよ!S級なんだろう!」
「連れって強いのか?」
「もうおしまいだ!!S級が諦めた」等と好き勝手言い出した。ルミナスは一際大きな声で言う
「大丈夫だ!私の連れが全て片付けてくれる。だから無闇に近づくな」
そう言い一瞬の間を置き
「でなければ死ぬぞ」と言い放つ。ギルド内は一瞬で静かになった。
少し時間は遡る。魔法具店でお目当ての物は見つけられなかったミラベルは、意気消沈と町を歩いていた。その時、衛兵が叫びながら走って来た
「町の西に魔物の群れが出たぞ!!今すぐ逃げるんだ!!」と叫び、息を切らせて走っていった。
(魔物の群れかぁ。まぁルミナスが出るまでもないから私がやっちゃおう)と魔法具店で何も得られなかった鬱憤を晴らすのに丁度いいやとミラベルは町の門へと向かった。
ミラベルが町の門に着くと衛兵が
「おい!死にたいのか!早く逆側の門から逃げるんだ!」と言うと
「俺は最後までここを死守するが一瞬でももてば良い方だ。だからお嬢ちゃんは逃げるんだ!」と言う衛兵にミラベルはニコニコとしながら
「あいつら私が貰うから。手出しはしないでね。」といい、杖を握り町の外へと歩いて行った
「おい!行くんじゃない!」だがミラベルはお構いなしに進んでゆく。
町から伸びる道を進んでいると前方に大きな砂埃が見えた。魔物の群れが向かってきているのだ。
ミラベルは杖を構え魔物の群れに向かって
「凍てつけ。アイシクルレイン」と唱えた。刹那、上空に厚い雲が広がり魔物の群れに雨が降ってくる。
雨はだんだんと大降りになっていき次第に雹になり、ついには大きな氷柱となって魔物の群れに降り注ぐ。轟音と共に霧が魔物の群れを包み込む。数分後、動ける魔物はいなかった。ミラベルの魔法で殆どの魔物は体を貫かれ原型を留めていなかった。残ったものも完全に氷漬けになっていた。
「まぁ、満足かな」とミラベルは言うと町へと踵を返した。
それから、町はお祭り騒ぎになった。ミラベルとギルドで合流したルミナスは受付嬢に
「じゃあ、報酬の方よろしくね」と言った。受付嬢は、涙を浮かべ喜び早速ギルドマスターに話を付けに行った。他の冒険者も
「町の英雄だ!今日は酒盛りだ!」
「連れもS級なのか?これは最強パーティーだな」
と大盛り上がりだった。その夜はギルドで大宴会が開かれ、二人が宿に帰る頃にはもう朝方だった。
「本当にお疲れ様。ミラベル」と言うとルミナスはミラベルに口付けをする。
「私がやるって信じていたのでしょ?期待に応えたまでよ」とニコリとミラベルは笑うとベッドに飛び込んだ。
「じゃあ、寝ましょうか。明日には、ってもう今日か。町を出て次の町を目指しましょう」とミラベルが言いルミナスは頷くとベッドへと潜り込んだのだった。




