48.祭りで高揚
収穫祭は六日間、その前半で公式オークションが行われた。やはり今年もメインは通常素材山盛りだったので、オレは予定通り暴落気味の鉱石と高騰気味のなめし皮を購入した。
そしてもちろん秘薬三万個の束である一年分というセットを五つ購入。これは魔法スキル上げに必要な量が各種約十万個らしく、そのあと実際に使用するであろう量を考えてのことだ。
もちろん自宅にもストックはあって、それは薬学でポーションや巻物を作るためのものである。
これだけあれば数年は困らないだろう。まあ今後大ヒールや爆弾を使う回数がめちゃくちゃ増えない限りは…… だが。
『きゃあ旦那ちゃーん、愛してるー ウチのためにこんなにいっぱい買ってくれるなんて嬉しい! 指輪よりもよっぽどうれしいよ』
「指輪なあ。結局結婚式を挙げた記念の品だから買うものじゃないって言われちゃったし、かといって大々的にイベント起こすのは恥ずかしいもんなあ」
『まあ無理はしないでいいんだよ。そういうのはリアルの時まで取っておくって考えたらどうしてもなんて思わなくなるでしょ?』
「り、りあ、リアルうう!?」
『もしかして旦那ちゃんって結婚願望ないタイプ? ウチはいつになるかわからないけどやっぱウエディングドレス着てみたいけどなー』
「ああ、一般的な、ね…… 願望がどうとかの前に彼女がいないからな。そんなこと考えたこともなかったよ」
『そこは女とは違うのかもね。ま、どうしても相手がいなかったらウチが結婚してあげるから心配しないでいいよっ』
「………… そんなことにならないよう頑張ってみるさ」
『ぶー、プロポーズしたのに断られたー』
「そうやってすぐからなうなよ。これでもそう言う話は苦手なんだ。あー、顔が火照る……」
これは本当のことだった。田舎育ちで女子に免疫がなかったオレは、大学進学で上京したときには東京のファッションに度肝を抜かれたもんだ
ただし高校生のスカートは田舎のほうが短かったかもしれない。ほぼ全員下にはジャージを履いていたところが、しょせんは地方の女子高生って感じではあるが。
そんなところから出てきたわけだから大学でもロクに女子と話すこともなく、もちろん一緒に飲みに行くなんて皆無だった。
大体が一人黙々と取り組むことの多い経済学部であることも拍車をかけ、結局卒業までに浮いた話は一度もなかったのである。
そう言えば唯一普通に会話をしていたのは塾で相手にしていた小学生だった。今思い返すと情けなくなってくるが、今もそれが変わらないとは……
だがチカのおかげで人と話すこと自体は抵抗がなくなってきた。給食してからしばらくはコンビニの店員も怖かったくらいだ。
そう言う面では感謝するしかない。だからこそゲーム内でできる程度であれば何でもしてあげようと言う気になるのだが、それは口に出すことのできないオレの秘密であり自己満足だった。
「そういやどのスキルを削るのか決めたのか? 戦士としての立ち回りを考えると基本スキルは残すだろ? そうなると忍術か魔法抵抗のどちらかかな」
『まだ決めてはいないんだけど、上げるのが楽だったし魔法で補助できるからレジを下げようかなって思ってる。忍術は分身とか影移動とか結構使うもん』
「やっぱそうなるか。チックの戦い方はまさに忍者って感じだもんなあ。あんな素早い操作良くできると思って感心してるよ。てっきり家ではPCプレイなのかと思ったけど違うんだろ?」
『うん、パソコン持ってないし。そういえば目の前でメール打ってた時もびっくりしてたもんねえ。ウチが特別早いわけじゃないんだけどさっ』
「あれで普通とかビビるよ。オレなんて送る前に返事が返ってきたと思うことあるくらいだからな」
『いやいや、さすがに送られてきてないメッセージに返信はできないってのっ』
「比喩だよ比喩、たとえ話としてそのくらい早いってこと」
『なんだインテリギャグかと思ったら違ったか、あははははー』
こうして準備はOKだろう。あとは公認オークションでスペルブックの出物が見つかればいいなと考えながら、布団の中でいつまでも話をする二人だった。




