44.とうとう
イベント開始から一週間ほど経つとあちらこちらからレアドロップの声が漏れ聞こえてくる。というか主にギルドチャットでだが。
『またかぼちゃランタンでした。ヘルメットはなかなか出ませんねえ』
『自分は死亡証明書でした…… 多分拾ったかぼちゃが少ないとコレになるっぽいですかね? ダルマさんも証明書ばかりなんですよね?』
「ですね、でもランタンは一つ出ました。それっきりですけど…… 証明書ってコレ、罰ゲーム的な感じに思えませんか?」
『わかる。サボった証みたいにわざわざ出てきてる気がしますね。しかも高確率でコインも出ないし』
そんな会話をしながらもそろそろかぼちゃヘルメットで戦闘に参加しているプレイヤーも出てきていた。
話によるとかぼちゃヘルメットをかぶっているとレアドロ率がいいとかなんとかいううわさが流れていた。
しかし晃はそれをバッサリと切り捨てる。
『いやあ、アレはオカルトでしょ。前のギルメンは誰も被ってないし。ヘルメット出すようなヤツは廃人プレイだから必然的にまた出てるってだけじゃないの?』
『なるほどねえ。さすが元ガチギルド。説得力があるよ。ウチもまだランタンしか出てないし、早くヘルメット欲しい! いらないけど出したい!』
「そうなんだよなあ。別に欲しいかどうかと聴かれるとそうでもないんだけど、やるからにはドロップしてくれるとうれしい。コレって運営の手のひらなのでは?」
『ネトゲなんてそんなもんでしょ。オレも今になって見れば学校サボってまでやることなかったと思うけど、その時は大マジでレイバにのめり込んでたもん』
『アンタは今でも十分のめり込んでるよ。運動部でもないのに早起きしすぎでしょ』
「ちゃんと学校行ってるんだろうな? 通学前に二、三回こなすとか尋常じゃないぞ?」
『行ってる行ってる、そのあと寝てるけど…… でも成績は良くなりそうな気がする。最近授業で言ってることがわかることあるんだぜ?』
『それ自慢するポイントずれてるよね。まあもうすぐ期末だしそこで多少はわかるでしょ。今の自分の現在地ってやつがさっ』
「できればなるべく高い現在地で頼む。里美ちゃんはまあまあ理解度上がってきたから間に合いそうだしな。どこぞの誰かと違って内申がイイらしいから助かるよ」
『ウチはどうだろ? こないだの練習テストはだいぶ自然だったでしょ?』
「まあほめたくはないがケアレスたっぷりって感じで違和感は少なかったか。でも本当にいいのか? かなり上のランク目指せるくらいの学力はありそうだぞ?」
『いいのいいのー ウチは楽しく通いたいの。それに城址高校って特進クラスあるから別に低いランクの学校とも言い切れないでしょ。特進からの大学進学率は高いんだってさ』
「そうか、目いっぱい上の学校でアップアップするよりもいいのかもな。あとはご両親がどう思うかくらいかあ」
『あの人たちはもう何とも思ってないよ。今は妹にお熱だしね』
「やっぱり中学受験するのか? よほど学歴に思い入れがあるんだな」
『二人とも私立エレベーターの優等生だからね。ウチは公立の中堅高校から国立大合格して驚かせてやるんだから! だから旦那ちゃんはずっと協力してよね?』
「ずっとかあ。オレもそろそろ仕事のこと考えないと休職は年内いっぱいなんだよ」
『じゃあ同じようなタイミングで進路考えないとだね。もっかい大学行けば? そしたらうちも追いつくしさ』
「追いつかれてどうするって…… でも勉強も悪くないかな。最近テスト作ったりしてるのが結構楽しくてさ。とりあえず年明けからは塾講師またやってみようかなと思ってる」
『そしたらウチらの面倒見てくれなくなるの!? それとも課金しろって言うこと!?』
「課金って…… ちょっとネトゲに毒され過ぎで人のこと言えないだろ。受け持ちや科目によるけど、最初から無理はしないから週何回か、コマ数も最低限のつもり。だから時間は十分に取れるようにするさ」
『まあいざって時は押しかければいいから構わないけどね。ヤサは割れているのだ』
「最近、刑事ドラマでも見たんだろ。すぐ影響されるんだからなあ」
『えへっ、愛されてるから以心伝心でバレバレだね』
「その以心伝心でオレにもレアドロ来てくれー」
『いやいや、ウチもまだヘルメット出てないっての。証明書が出てないだけマシ』
そんな会話をしながら今晩も夜は更けていく。そして今日最期の一回と言って臨んだグリムリーパーでとうとう――
「死亡証明書三十枚目……」




