38.一進一退
三歩進んで二歩下がるなんて唄が大昔にあったらしいけど、今の里美はそんな感じだった。
なんといっても続けて学習していくことの難しさ。週の半分は弟の宗太が邪魔をしてくれるわけで、そうなると課題を渡してその日は終わりとなる。
一日だけチカが面倒を見ておき、その間に取り組んでみようとしたがムリだった。
とにかく走る量が凄い。公演中を駆け回る、走る、走る、そして疲れてぐずりだすの繰り返しだ。見ているだけで疲れてくる。
それでも夏休みが終わりに近づくころには大分学力も向上し、平均40点まであと少しと行ったところ。数学と英語が何とかなれば十分志望校に届くだろう。
問題は晃だ。内申がおそらく悪いであろうから点数は余計にとらないとならないのだが、今のところは里美とどっこいどっこいである。
『だから教え方が悪いんじゃないのか? テストばっかりやってたってわからないもんはわからないままだぜ?』
「だけど今やってるのはテスト対策だからなあ。学校の勉強とは少し違うんだ。でも授業内容が多少わかるようにはなってきたんだろ?」
『うん、それはそう。じゃあテスト対策になってないってことじゃん?』
『アー言えばこう、こう言えばアー、アンタってホント何に関してもダメね。いくらレイバでガチギルドについていけてたってリアル負け組じゃ仕方ないじゃないの』
『べ、別にまだ負けって決まったわけじゃないだろ…… 確かに勝ってるとは言えないけどさ……』
「まあ勝ち負けはともかくやれるだけやるしかないだろ。せっかく一歩前進したんだから高校一緒に行きたいだろ?」
『そんなの当たり前じゃん。これで別の高校になったらそれっきりになりかねないもんなあ。実際のとこどう思う? 脈ある?』
『十分あると思うよ。サトは全くそう言うの興味なかったからとまどってるし、親しい男子はいなかったから余計だよ。その点ではダイターはウチと仲いいからすんなり友達になれたってこと。感謝しろー』
『いやマジでそれは感謝してる。だからもう一押しできるよう協力してくれよ』
「それは受験がうまくいって一緒の高校へ行けたら自然と距離も近くなるんじゃないかな。まあ高校まで追いかけてきたストーカーみたいに思われなければだけど……」
『おい! 不吉なこと言うな!』
『おいじゃないっての。アンタちょっとウチの旦那ちゃんに対して敬意がなくない?』
『だってさあ、レイバの中だとすげえへっぽこなんだもん。さっきから何回転がってるんだよ。いくらダルマだからってそりゃないぜ』
「そう言われても同時に二つのことは簡単にできないって」
今はレア鉱石掘りに久しぶりの深海エリアに来ていた。目的はレア素材の収集である。
こないだ使ったエレメンタルを湧かすための精霊のつるはしだが、火山エリアでは溶岩エレメンタルと溶岩結晶が手に入る。
そしてこの深海エリアではウォーターエレメンタル、通称水エレが湧き、倒すことで水晶が手に入るのだ。その水晶は特効武器や上級防具を作るための貴重な素材なのである。
そして例によってオレがつるはしを振るう。エレメンタルが湧く、倒すという流れの中で湧いてから倒すまでの間にオレは何度も行動不能に陥っていた。
幸い蘇生用の大ヒールはうなるほどあるのでいくら転がろうと問題はない。蘇生時にかかる保険金だけが次々に銀行から引き落とされていくだけだ。
ついこないだ炎系の特効素材を集めていたのに今度は逆の属性素材を集めるなんて非効率で行き当たりばったりなきもする。
しかし次のイベントであるハロウィンでの墓場討伐にグリムリーパーなるボスが出ると告知があったのだ。しかもそいつが炎属性であるとアナウンスされた。
そうなると一気に盛り上がるのがレイバである。特効武器を作るための素材集めで今水場は大混雑なのだ。
そうは言ってもオレら以外は専業の採掘戦士ばかりなので三人パーティーはちと目立つ。
さすがに廃人ばかりだと言われる|Reinbow Berthだな、変なところに感心するオレだった。




