36.アオハルダイター
『だからゴメンってば。悪気はなかったんだからさあ』
『悪気あってやられてたまるかっての…… もう恥ずかしくて顔出せねえよ』
「大丈夫だって。里美ちゃんはまんざらでもないと言うか、別に嫌がってはいなかったぞ?」
『でも絶対情けない奴だって思われただろ?』
『そりゃそうでしょうね。自分で言えないで他人にばらされちゃったんだもん』
「ちょっ、チック!? おまえがそう言っちゃうのか?」
『えっ、ゴメン? ほら、ウチって正直者だからさ。でもサトってそう言うの免疫ないだけでかわいいからほかにも狙ってる男子いるけどなあ』
『マジで!? まあそりゃそうか。オレだって最初は見た目からだし……』
『だからここでもう一押し、今度はちゃんと自分で言ってみなさいよ。そしたら案外あっさりとオッケーもらえるかもよ? それとも次もウチがサトに聞いてあげてもいいけどよりいっそう情けなくない?』
『それは勘弁してくれ…… それじゃ次に公園で待ち合わせる時教えてくれよ。今度は自分でこ、こ、こっくはくするから』
『こっこっこってニワトリかっての。あ、前にニワトリスーツもあったね。ダルマが嫌ならニワトリはどう? 確かそれほど人気でもなくて安かった気がするー』
「ニワトリかあ。なんかコンビニスナックのキャラクターみたいなやつじゃなかったか? パクリ疑惑あったやつ…… だったらまだダルマのままでいいかな……」
『じゃあウチのタヌキ貸してあげよっか? ぬくもりが残ってるんだからプレミアモノだよ?』
「いらねーよ! ぬくもりってなんだよ。オレがヘンタイみたいじゃないか」
『ヘンタイでもいいよ? 旦那ちゃんはウチが大切にしてあげるから他の女の目なんて気にしなくても平気なのー』
話がどんどん逸れていくことに嫌気がさしたのか、ダイターは戻ると言いだした。そもそもギルド活動中に抜け出してチャットへ割り込んでくるなんて、ガチギルドのメンバーとしてはあるまじき行為じゃないだろうか。
「あんまり気にしすぎないことだよ。振られたって人生終わるわけじゃない。出会いなんていくらでもあるからな?」
『いくらでもあるはずなのに彼女一人いないやつがそれ言うのか? きれいごとはやめてくれ。こっちは夏休み明けりゃあ実際に会うんだぞ? 気まずいに決まってる』
『気まずくなんてないってば。サトもそんなずっと気にしないだろうし、そもそも振られると決まったわけじゃないしね。応援だけはしてあげるから頑張りなってばっ』
『じゃあ次の時に絶対教えてくれよ? 勉強を続けるかどうかはその後決める、ってか振られたらもう続けられないけどな……』
『なっさけない。振られたって追いかけて高校でもう一回アタックするって言えないわけ? それじゃウチからずっとヘタレって呼ばれ続けるよ?』
『なんか自分でもヘタレなんじゃないかって思い始めてきた…… チクショウ』
「もうそのへんにしとけって。ダイターも一緒に勉強してたらもっと距離が縮まるだろうしさ、頑張って見ろ? どんなことでも原動力に変えるくらいの気概を見せたら里美ちゃんからの見る目も変わるぞ? 多分……」
『多分なあ。そうやって結局二人とも面白がってるだけだろ。他人事だと思って言いたい放題しやがってさあ』
『言われたくないならいろいろ頑張りなって。告白でも勉強でも結局やるのはアンタなんだから、ウチらにできるのは応援だけよ?』
『ホントに応援してくれてるのかわからないけど、まあ次は何とか告白してみるさ。もうさっきから呼び出しがうるさいから行くぜ、またな』
チャットルームにはオレとチカだけが残った。我らがKATはギルド活動らしきものがほとんどないのでもう片方のギルドチャットも二人だけで閑散としている。
「青春だなあ。チカはモテそうだから告白何回もされてそうだな」
『まあね、でも学校の子たちはみんなガキっぽいから断るばっかだよ。旦那ちゃんはしたりされたりしたことある?』
「その言い方だときっとないだろうなって思ってるんだろ……」
『あるの?』
「ご想像にお任せしておきますと言っておくか」
『あーずるーい、教えてよー』
「ダメダメ、じゃあ狩りにでも行くか」
『そうやってはぐらかすんだから。もうー』
こうして夏休みの夜は過ぎていくのだった。




