34.へたれ男子
ツーハンデットアックス、つまり両手斧は刃物系武器の中で最高の攻撃力を持つ重量級の武器だ。その代りに振り速度がめっぽう遅いのだが、ガチ勢に好まれる武器であることは間違いない。
敏捷性のステータスが高くないとただのノロい攻撃を繰り出す一撃必殺系となってしまうが、アイテムや装備、巻物やポーション等々で底上げすることによって高速強打の凶悪武器となる、らしい。
「ホントにそんなこと出来るのか? 作り始めたら後には引けないぞ?」
『マジなんだって。ギルメンにいるんだよ。両手斧最速振りできる人がさ。その人に装備とか聞いてあるからそのうちできるようになるはず。オークションでその装備を狙ってるんだからな』
『それで金策がんばってるんだねえ。受験との優先順位がおかしくなるくらいに頑張っちゃってさ。んでどっちも逃したりして。あはははー』
「そうだぞ、全然笑い事じゃないけどチックの言うとおりだ。あんまり無理しないで素材のまま保管しておいたほうがいいんじゃないか?」
『そしたら決心が鈍るじゃん。二兎を追うもの二兎を得るってやつさ』
『難しいこと言ってやったみたいにドヤってるけど間違ってるからね? それを言うなら一兎をも得ずでしょ? ホントなんというかバカ? んでヘタレ』
『なんでヘタレなんだよ! おれってばどっちかというと勇敢なほうじゃね?』
『じゃあなんでサトの前ではそうやってペラペラしゃべれないわけ? これがヘタレじゃないからこの世にヘタレはいないっての』
「おいおい、ちょっと言い過ぎじゃないのか? 同じ男としてはオレにもグサグサ来るからほどほどにしておいてあげてほしいんだが……」
『だってこないだなんてサトったらさ、原口君てチカちゃんのこと好きなんじゃないかなあとか言いだしちゃったんだからね? うげえって感じ』
『マジかよ…… おれの態度ってそういう風に見えるわけ? 女子目線だとどうなんだよ』
『そりゃ嫌いな女子にやたら話しかけたりはしないでしょうからなにかしら感じるものはあるわよ。ウチの場合はレイバで繋がってるってわかってるけど、はたから見たらそんなのわからないってこと』
「じゃあなおさら同じ高校へ行かれるよう頑張らないとダメだろ。やっぱりこの素材はしばらく預かっておくよ。作るのはいつでもできるんだからな」
『じゃあオークションで暴風の籠手が手に入ったら作ってくれよ? それまで勉強も頑張るからさ。おれなりに』
『おれなりじゃなくてサトと同じ高校行かれるようにって宣言しないさいよ。だからヘタレって言われちゃうんでしょうに! むしろ告白してしまえ!』
『ええっ!? なんでそうなるんだよ。里美がおれのことどう思ってるかわからないじゃんか』
『それがわかれば告白するの? だったら教えてあげよっか?』
「そのへんでやめ――」
『サトは晃のこと何とも思ってないよ。そりゃそうでしょ。ほとんど話したことないんだもん。今はウチと仲いい男子の一人ってだけだよ? 今のままでいいわけ?』
「こらチカ、いやチック? ちょっと言い過ぎだぞ。こう見えてもダイターは繊細なのかもしれないじゃないか」
『何言ってんのよ。繊細なら好きな子が勝手になびいてくれるならいいよ? でも絶対にそんなはずないじゃん。言わないとわからない相手なんていくらだっているのよ!? ウチのよーく知ってる人もそうだからね』
『あ、わかっちゃった。おれもおまえの弱み握ったぞ! これでアイコだな』
『バッカじゃないの? 全然アイコじゃないってば。ウチはいくらでも言えるけど相手の立場を考えて黙ってるだけ。アンタはヘタレなだけ』
『くっ、あいかわらず口が悪いぜ…… ゼロはよくこんなのと普通に会話できるな』
「うーん、オレにはこんな突っかかってきたりしないし、オレもそんな目に合うようなことはしてないと思うよ? しょっちゅうからかわれてはいるけど、それもまた楽しいと思ってるしな」
『あ、だめだこりゃ。完全に毒されてる。チックにちょっとだけ同情するわ』
会話の流れが良くわからないほうへずれてしまったが、結局レア素材は保管しておいて、オークションの結果、もしくは成績次第で次の段階へ進むことなった。
それにしても中学生同士の色恋ネタは生々しくて青々しい。オレはちょっとだけそのころに戻りたくなった。




