32.雑魚狩りも楽じゃない
『へったくそだなあ。まず掘るだろ? 溶岩エレメンタルが湧くだろ? 10歩以上離れるだけだろ? なんでボッ立ちして溶岩に焼かれるんだよ』
「そう言われてもエレメンタルが湧く瞬間に反応なんてできないよ。オレはアクションとか苦手なんだ」
『それで良くレイバやってるな。アクション要素が楽しみのほとんどじゃね?』
『旦那ちゃんの悪口言うならもう手伝わないから! ちゃんと相場でめちゃくちゃ稼いでるんだからいいのー!』
『ようは転バイヤーだろ? そんなに褒められることか?』
これは痛いところをつかれた。転バイヤーはリアルでめちゃくちゃ嫌われる職業? の一つだし、それと一緒にされるのは嫌なもんだ。
しかし先物相場師もはたから見たら同じに見えるのかもしれない。
「そりゃオレも転バイヤーは悪だと思うぞ? でもそれはリアルの話だろ? ゲームでは誰かの欲しいものをかすめ取ってるわけじゃないから許せよ」
『でも素材の値段が上がったり下がったりして迷惑かかるじゃん? それを言い風に受け取るのは無理があるわ』
「じゃあギルドで狩場を独占したり、BOT紛いに居座り続けるのはどうなんだ? そっちのほうがプレイヤーには直接害があるんじゃないか?」
『それは確かになあ。でも競争だから仕方なくね? システム的にも許されてるしそれができないボスシステムもあるじゃん』
「うん、だから先物相場もシステム的に導入されてるわけで、しかもそれはリアルと同じ仕組みなんだよ。相場師が相場を作るんじゃなくて需要と供給で成り立っているわけだ。そこで差益を出すのがオレの楽しみ方ってことだな」
『わかったようなわからないような…… もしかしておれがバカだからって言いくるめようとしてないか?』
「それは勘ぐりすぎだろ。オレは相場師も面白いからレイバで十分楽しんでると伝えたかっただけさ。だから溶岩に焼かれてることも気にしないでくれ……」
『そりゃいくら転がろうとおれは痛くもかゆくもないからいいけどさ。保険金だけでも相当の出費にならないか?』
「その分は炎鉱石の売却益でまかなえるさ。それよりこれで結晶はいくつ集まったんだ?」
オレとチカはダイターに言われて、溶岩エレメンタルの固有素材である溶岩結晶集めに駆り出されている。
本来は採掘戦士という特殊職が向いているエリアだが、ダイターは純粋な戦士のためパーティーメンバー必須なのだ。
そんなわけでオレが採掘をして溶岩エレメンタルを呼び出す。ダイターが倒す。チカが応援している…… という分業制で狩りをしていた。
『えっと、今はようやく200を超えたところだな。先は長いぜ……』
『特効一本作るのに500だっけ? 一回で成功するの?』
「いや、成功確率が50%で好みのプロパティがつくかどうかも考えると10本分は用意したほうがいいだろうな」
『一日500集めれば十日で終わるってことだな。よし張り切って頼むよ。ゼロの兄貴~』
「ちぇ、さっきまで散々バカにしてたくせに…… よし掘るぞ!」
オレは再び溶岩に包まれた。




