30.イベント追込み
現在進行中の深海エリアイベントも残り半月ほど。ただし、もう夢中になってやっているプレイヤーは少なくなっている。
ガチ勢はあらかた目標まで稼ぎ終わっているし、初めから諦めている者たちは今さら追込みをかけたりしない。
つまり今一生懸命に通っているのは余剰を集めて金稼ぎ、もしくはフレンドのためにとかそう言う目的意識のあるやつらだけである。
オレとチカはすでに目標達成しているが、収穫祭のオークションに使う資金集めのために深海エリアへと毎日来ていた。とはいってもガツガツではなくまったりプレイの暇つぶしに近い。
「今日順調ならあと二日で切りのいいとこまで集まるかなあ。そしたらもう切り上げていいかもかも」
「そっか、意外と楽なイベントだったかもしれん。まあ三人力で集めてたからそりゃそうだろうけどな」
「なんか課金させちゃって悪かったと思ってるんだけど、ホントにダイジョブ? 無理はダメだからね」
「実際には課金してないから気にしなくていいさ。ゲーム内ゴールドでプレイヤーから買ったからタダみたいなもんだ。最初だけ勢いで買ったけど数百円だし」
「そっか、やっぱお金持ちは違うねえ。相場? っていうのも悪くないのかも?」
「それがさ…… 深海エリアでアンコモン鉱石が良く採れるから値崩れすると思って空売りしてたんだ。そしたら思ってたよりも相場が動かなくて当てが外れちまった」
「もしかして大損しちゃったとか!?」
「いや、得しなかったってくらい。損失はわずかだから心配しなくていいぞ。ちゃんと結婚指輪が買えるくらいの額は余裕で残ってるさ」
「えー、ホントに結婚式あげる気でいるの? もしかしてコレってガチ恋!? いやーん、恥ずかしー」
「違うから…… 一応結婚式をあげなくても指輪は買えるらしい。ただ式をあげるとご祝儀がもらえたりするからそれがないと全部自腹ってだけさ」
「ちなみにおいくら万円?」
「思ってたよりも大分安くて1000万だって。これなら現金一括で余裕だよ」
「これで1320万円も使わせることになっちゃったね。なのに全然返せてないじゃん。ちゃんと体で払うって言ってるのにー」
「ちょっ、こんなところでそんな危ない発言しないでくれ! 里美ちゃんに聞こえたらどうするんだよ!」
「えへっ。既成事実ってやつ? その時はちゃんとお嫁にもらってね?」
「まったく…… そうやってゲームと現実をごっちゃに話されるとわけわからなくなってくるよ。今どきの中学生は大人の扱いがうますぎる……」
「ぷぷぷ、それはレイちゃん先生がモテないからじゃないの? 免疫がないから攻められる一方なんだよー」
オレは言い返せなくなって頭をかいた。先にテストを終えてしまったチカは暇を持て余し過ぎて仕方ないのだ。
里美と晃はうんうんとうなりながらテストとにらめっこしている。しかしチカは同じ問題を二十分ほどで解き終わっていた。
点数をつけてみると九十点を超えているのだから文句のつけようもない。元がいいのか今までの努力が積み重なっているのか、きっとその両方だろう。
かといってレイバをやるわけではなく邪魔しないように離れたところで雑談タイムである。そのあたりがチカの偉いところだ。
オレはこの分なら受験までには何とかなるだろうと安心しつつ、あとはどれだけチカの点数を自然に下げられるのかを真剣に考えていた。




