28.時には自重
「ダメだダメだダメだダメだ! もうこれ以上は渡せない」
『あとちょっとでセットまで揃うのに? まあ普通に頑張ってればもう届くけど、だるまの代わりをゲットできるとこまではムリになっちゃうよ?』
「かくなる上は自分で…… 無理かあ。チカになんとか頑張ってもらうしかないな」
『そりゃダイターの学力見せつけられたらゲームのお願いなんてしてる場合じゃないって思うよねっ。ウチもあそこまでとは知らなかったよ』
「しかも内申まで悪くなりそうなんだぞ? 今からでも真面目に通えばそれなりにはなるだろ? だからせめてサボりはやめてほしいんだ。ちゃんと説得してくれよ」
『しては見るけど別に良くない? あいつだけ総合なり堤北なり行けばいいだけじゃん。なんで旦那ちゃんがそんなに気を使ってあげる必要があるわけ?』
「あれ? チカはそれでいいのか? どうせなら三人で同じ高校行きたいのかと思ったからできる限りのことはしようと思ったんだけど?」
『うーん、微妙かな。仲は良いけどサトほどじゃないし、本人がやる気ないならムリだしね。あいつ自体はサトと同じ高校行きたいだろうから頑張るんじゃない?』
「頑張って二人とも同じ学力になったとしても内申が悪かったら落ちるぞ?」
『その時はその時、でもせっかく心配してくれてるんだからそのことは伝えとくよ。まだ間に合うんだしってね』
「頼むよ。オレも後味が悪くなるのは嫌なんだ」
晃の学力があまりにも絶望的なため、オレはポイント増殖アイテムであるフカヒレを渡すことをためらってしまった。
すでに購入しているから手持ちはいくつかあるが、そのせいで行きたい高校に落ちたなんて聞かされたら、後々まで罪悪感をしょい込んでしまいそうである。
テストの点を急激にあげるのは難しい。だが学校へ行くこと自体は明日からでもすぐにできるのだ。
確かにダルマからの脱却はしておきたいが、この際そんなことは後回しである。オレはぶーぶー言うチカをなんとかなだめて残りを自分で頑張るよう説得した。
それから十日ほど経ってイベント期間が折り返しとなったころ、とうとうサメスーツの全五部位を交換するためのポイントがたまったようだ。
『じゃーん! 見て見てこのかわいさっ! 気分によってタヌキと切り替えて使うんだー』
「想像よりもいい感じだな。てっきりサメの顔が正面剥くんだと思ってたけど、まさか口の中から顔が出るなんて意外だったよ」
『これなら誰だかすぐわかっていい感じだねっ。ウチの顔が見えなかったら旦那ちゃんだってさみしいだろうしさっ』
「いや、頭上に名前とギルドタグが表示されるからわからなくは成らないぞ? でもまあ顔が見えるのは好材料だな。これからは冷めとしゃべるのかと微妙な気がしてたんだ」
『もう、そうやってロマンがないんだから。チカの顔がいつも見られてしあわせだよっとか言ってくれてもいいじゃないのさー』
「いやあ、恥ずかしいの前にそんなセリフ思い浮かばないっての。彼女いない大人だってことはだてじゃない。それを忘れてないか?」
『全然威張れることじゃないんだけど…… まあでもうちにとっては都合がいいけどねっ』
「そうだな、おかげで時間だけはふんだんに使えるからなあ……」
『そう言うことじゃないんだけど―― まあいいや、今日はこの辺で寝るね。まだお風呂入ってないし、お湯につかってゆっくり余韻にひたるんだー。それじゃおやすみなさいっ』
「はいよ、おやすみ。明日は土用だからテストやるぞ。里美ちゃんに伝えておいてくれな。一応晃君にも」
『りょうかいでーす! ねえおやすみのキスはないの?』
「あるわけないだろっ!」
『あははー』『プツッ』
まったくもう、再会してからチカにはすっかり振り回されっぱだしだ。でもそれが楽しいと感じているオレだった。




