27.厳しい現実
現在の学力を測るには予備校、中学生の場合は塾になると思うが、そう言うところがやっている全国模試を受けるのが手っ取り早い。
しかし里美の家は教育に力を入れることがなく、何なら中速で働いてもらっても構わん、くらいらしく模試代なんてとても出してもらえない。
となると必要となるのがテスト問題になるのだが、過去問は普段の勉強でも使用しているので使えない。
と言うわけで、オレは一週間ほどかけてそれっぽいテストを作り上げていた。配置や配点も実際の受験問題に沿っているはずなので実力がわかるだろう。
問題はコレをどこでやるのかと言うことなんだが、さすがに公演だと集中できないので、チカの家のマンションエントランスを勝手に使わせてもらうことにする。
そして邪魔と言うとかわいそうだが、宗太の横やりが入らないよう、土曜の午後にやってみることにした。
「それでえっと…… キミは? もしかしてダイター君?」
「ちょ、ネットの名前をリアルで呼ぶのは禁忌だろ!? まったくそのくらい守ってくれよな。おれは原口晃って言うんだからそっちで呼んでくれ」
「ちょっと晃? 目上の先生に向かって生意気過ぎない? そりゃアンタは教わってないかもしれないけど、サトがウチらと同じ高校行けるかどうかはレイちゃん先生にかかってるんだからね?」
「レイちゃんってこのオジサンの名前? あー、だからゼロなのか。なるほどね」
「自分だってリアルで名前だしたじゃん! 禁忌だって自分で言ったくせに!」
「おっと…… つい、ね。ごめん、なさい」
「いや、そんなにかしこまらなくていいよ。そう言ってる当人がオレにはため口だし、なんなら防犯ブザーの脅しまでかけてくるからなあ」
「だからそれはただの冗談、茶目っ気じゃないのさー」
「でもホント、原口君はなんで来たの? あたしがこうやって習ってるの知られるのなんかみっともないし恥ずかしいよ」
「いや、レイバのことで話してたときに進学の話題になったからさ」
「晃ってばウチらがどこの高校行くのか気になってるんだってさ。なんつーかストーカー的な?」
「またそうやってひどいこと言って。チカちゃんと原口君って仲いいんだもん。そりゃ一緒のとこ行きたいよねえ」
一瞬微妙な空気が流れたが、オレは全く知らないふりをしてやり過ごす。どうやら里美はダイター、じゃなくて晃がチカのことを好きなのではと考えているのだろう。
そんなチカは晃が里美が好きなことを知ってるわけで、ぽろっと言ってしまうんじゃないかとハラハラする。だがさすがにそこはちゃんと言わないよう心掛けているようだ。
いやあ中学生の恋愛なんて目の当たりにする機会がないから新鮮だし、こういうのを尊いと言うのだろうか。
だがいつまでも脱線はしていられない。
「よし、じゃあそろそろはじめようか。せっかくだから晃君もやってみるかい? 一緒の高校怒れるかどうかの目安になるかもしれないよ?」
「えー、おれは勉強好きじゃないしなあ。でもまあ仕方ない、付き合ってみるか」
「ちなみにこの問題は都立の共通問題に沿ってるからまあまあ目安になると思う。目標は45点から55点くらいかな。あとは内申次第ってとこか。里美ちゃん以外は悪そうだからなあ……」
「内申ってそんなに重要なのか? おまけみたいなもんだろ?」
「いやいや、そんなことないぞ? 内申含めた点数で合否が決まるんだから学校は行かないとマズいよ?」
「そうだよ、だからウチも最近はちゃんと行ってるんだからさ。確かにレイバは楽しいけど高校行けなかったら働く気でもあるわけ?」
「それは困る。まだ遊び足りないからな」
勉強のためじゃないところがダイターらしいが、今はまだそれでいいんだろう。どうあがいたっていずれは社会へ出る時が来る。
オレみたいに脱落寸前のやつもまあいるけど…… それはまた別の話だ。
「よし、じゃあ始めようか。ぺちゃくちゃしゃべったりせず本番だと思って真剣にやるんだぞ?」
そして結果は―― チカは平均80点以上、里美と晃は30点そこそこだった……




