25.朗報とともに
チカが戻ってきたのはタイミングよくボスが湧く直前だった。そのため何をしていたのか聞く前に忙しくなってしまい聞く暇がない。
なんせめちゃくちゃ集中していないとボスの攻撃が当たって即死なのだ。相変わらずレイバのイベントボスは理不尽極まりないが、上級者は余裕で避けている。
それはチックも例外ではなくボスが周囲へ発射しまくる水流攻撃をいとも関簡単に避け、そのまま走り寄って攻撃までしているくらいだ。
オレはと言えばよけるだけで精一杯。コインがどれくらい貯まったかを見る余裕すらない。しかもその合間には特攻しては死んで戻ってくる約一名を蘇生しなければいけないのだ。
だがここで蘇生した瞬間たまたま気が付いたのだが、ボスを直接攻撃しなくてもヒールや蘇生でも貢献していると見なされるらしく、コインがバッグに湧いた。
『すごい! 大ヒールでエゴマッチョさんを蘇生したらオレのバッグにコイン湧きました!』
『おおお、それは朗報、いい情報をありがとうございます』
『ってことは自分で回復するより他人を回復してあげたほうが貢献度稼げるってことになりそうですね。これならオレでもそこそこ稼げるかもし――――』
これはチャットを打つのに夢中になってボスの攻撃を見逃し昇天した……
『もう旦那ちゃんってばおっちょこちょいでかーわーいーいー』
「蘇生ありがとさん…… 失態だった。しかも死んでる間にボス終わったし。カッコ悪……」
『そんなことないよ。有用な情報が共有されたのはすごいことだもん。今までってあんまりバックヒールとかする人いなくてさ。全滅して帰ることもあったくらい』
「いやそれはどうなの? 大ヒールくらい持ち歩こうよ。必須だろ?」
『ギルドに生産職がいなかったから用意が面倒? ギルマスが効率無視な人だからあえてそうしてるのかもねっ』
「そっか、そんな効率無視の皆さまでも2、30枚は稼いでるのになあ。オレは今回5枚でさっきよりは増えたけどやっぱり少ないぜ」
『それでさ? さっき友達に相談してきたんだっ! ガチでどのくらい行くのかも聞いてきたけどずっとボスに張り付いてると50枚くらい獲れるって。でもレアドロップはまだないらしいよ』
「50枚!? オレの十倍じゃないか。さすがガチ勢は違うなあ。学校サボるのはどうかと思うけど」
『んでね、その子にフカヒレ預けて一割あげるのはダメ? 残りからウチも一割貰って残りを旦那ちゃんが受け取るって感じでさっ』
「いやいや、そんな甘やかされたらオレがボスやる意味無くなるだろ? 自分で稼ぐ分が誤差だよ誤差」
『そこはほら、愛する奥様のためにヒールするとか? そういう係ってことでいいじゃん。だめえ?』
「なんでネコナデ声だよ…… しかもどうせもう決めてきたんだろ?」
『そんなことないけど多分いいって言うよって言っちゃった、あはっ。でもなんだかんだ言ってその気でしょ?』
「ま、まあな? 二か月ずっと課金するかは別として、最初の目標が2000枚だっけ? そこまではやってみてもいいかもなあ。一日100枚もらえたら二十日で目標達成だろ?」
『それってもしかしてサメ頭をウチのために交換するから? 甘いなあ。全然人のこと言えないじゃないのさっ!』
「まあいいじゃないか。目標の無いオレのささやかな楽しみ方だとでも思ってくれ」
『それってレイバで? それともリアル込み?』
「ご想像にお任せしまーす」
商談成立と言うことで、オレはその場で課金しアイテムを購入した。とりあえず一週間分の七個を渡す。うまくすればチカが自分で稼いだ分を合わせてサメ頭が交換できるだろう。
こういうのは持ち逃げが怖いが、リア友と言うことなら信頼してもいい。しかも相手はチカをレイバへ誘った男子らしいからまず大丈夫、なはず。
オレは頭の中で電卓をたたき、取らぬ狸の皮算用を始めていた。




