22.聞いてないよー
突如深海エリアに現れたサメの一族、その親玉であるシャーキングが子分を次々に送り出して荒らしはじめた。
当然、元からいる海の住民が困っていて、サメ一族を倒してくれたらお礼に特別なコインをくれる。
イベントストーリーはザックリこんな感じらしい。まあベタな設定ではあるけど別にストーリーは重要ではないからいいのだ。
ようは自分の欲しいアイテムが手に入るかどうかが問題なだけである。しかも今回はポイント交換なので確実に入手できる―― はずだった。
『ちょっと? 聞いてないんだけどどゆこと!?』
「いやあ、そう言われてもオレも知らなかったしなあ。それにしてもあれだな、さすがガチギルド所属、初日からもうそこまでわかってるとは驚きだよ」
『そうだね…… 問題はレアドロが何パーくらいなのかとポイントがどれくらい稼げるのかってことだし』
今はあんなに楽しみにしていたイベントへインする直前、チカの友達から連絡があったらしく、その情報がオレたちの出鼻をくじいたところだ。
なんと、今回のサメスーツには従来のセパレート同様、胴体と頭がわかれているのは当然のこと、さらに腕装備である前ビレ、脚装備の尻ビレ、そしてマント部位に装備できる背びれまであるというのだ。
これらがすべて数千ポイントでの引き換えなのだが、一回のスポーンで稼げるのはガチギルドの連中で数十ポイントなのだから、ガチではないKATでは十も取れればいいとこかもしれない。
「でも期間が二か月あるし何とかなるさ。いざとなったら買えばいい」
『でも多分一つで数千万は行くよ? 絶対人気になるもん』
「でも今回の|コントリビューション《Contribution》|アキュームレイション《Accumulation》ギャランティーシステムがちゃんと機能すればポイント稼ぎは安定間違いなしだよ」
『でもちょっと名前長くない?』
でもでもとお互いにお互いを否定しながらも楽しい会話だ。それこそが|大規模大人数オンラインゲーム《MMO》の醍醐味の一つであることを思い出させてくれる。
「すでにCAGって略称で呼ばれてるし、名称はどうでもいいんじゃないか?」
『なんかギャグみたいな呼び方で気になる…… こういうのってセンスないなあって思うことが多いのは、主導しているのがオジサンばっかだからなのかな』
「それってオレにも当てはまるって言いたい?」
『ううんっ! 旦那ちゃんはカッコいいお兄さんだからダイジョブ!』
「ありがとよ、オレの財布がカッコいいってことじゃないと信じておく」
『もう、ホント自虐的なんだからさあ。もっと自信持ってほしいな』
「ま、半分冗談だから気にしないでくれ。それよりも次の湧きから参加するだろ?」
『もっちろん! このために学校でちゃんと寝てきたんだからねっ!』
「いやいや…… 授業中に寝るなよ……」
『寝てたのは休み時間だってばっ! ホント、だよ?』
そんな見え透いた嘘を信じるオレじゃない。でもとりあえず夕飯を終わらせてレイバへインしたら驚きの情報が入ってくるわ、ボス湧きのタイミングが終盤で今から参加してもポイントは稼げなそうだわで足踏みしている。
しかしその分準備はしっかりできそうだし、ギルメンも何人かはインしてきたのでワイワイと楽しくできそうだ。
こうしてオレたちはひとまずギルドハウスであるギルマスの家へと集まるのだった。




