21.攻略の前の対策
学校が終わる時間になると速攻でサークルが届き、興奮したままの状態でチカが公園までやってきた。だが里美は弟を小学校まで迎えに行って一緒ではない。
「さすがにこの短時間じゃ攻略なんてできないだろ? だから様子見だけ行ってみたらどうだ? 明らかに落ち着きがないじゃないか」
「ダメダメ、旦那ちゃんと一緒に行くって決めたんだから待ってるのっ! あー楽しみだなー」
「問題はスポーンとボスの強さだけど、攻略掲示板を覗いたかぎりそうでもないらしい。でもああいうところの人らは廃人が多いからなあ」
「そだ、ちょっと友達に聞いてみる。今日学校来てなかったから多分サボってスタダかましてるよ。ホント、ズルいんだからさー」
「それってチカを誘った同級生だっけ? えっと――」
「ダイターね。同じクラスの男子なんだけど多分サトのことが好きなんだよね。だから何かにつけてウチになにか言って来たり変に親切だったりするわけ。本人には話しかけられないんだから笑っちゃうよね」
「なるほど、中学生男子あるあるって感じでほほえましいじゃないか。オレは全くそんな気配なかったから経験ないけど、男子でそう言うやつ居たよ」
「そっか、結構普通って感じ? ちょっとだらしないなって思ってたのはかわいそうかもねっ! あ、サトが来たよ」
「一応さ、里美ちゃんには悪いけど、今月は一日おきにしてもらおうと思ってるんだよね。その代り毎日テストを持って帰ってもらって、全部のテストで40点取れるように解くべき問題を指定するんだ」
「ってことは? ウチも同じ問題を解けば同じ点数になるってこと? はあー、レイちゃんってあったまいいねっ!」
「まあ受験対策では一般的なんじゃないかな。解けない問題で詰まってしまうより確実に取れるところをしっかりやって、時間配分に注意するのと同じだし」
「なるほどねえ。ウチはあんまり考えたことなくて、問一から順番にやってくタイプかな。それで困ったことないし」
「それで点数取れるならいいんだよ。無理なやつむけの作戦だからな」
弟の宗太を連れてやってきた里美へもう一度同じ説明をし、ちゃんと理解してもらったうえで今日の勉強へ取り掛かる。
その間、宗太はチカが面倒を見ているのだが、とにかくずっと走り回っていて見ているほうがつかれてしまう。あれじゃチカも大変だろう。
そのことを考えると毎日夜遅くまでと言うわけにはいかない。せっかくまた学校へ行くようになったチカの生活リズムを壊してしまったら大変だからだ。
もちろんオレも普段から夜更かししているわけじゃない。遅くとも火を跨いだ辺りで寝ているし、朝も六時には起きている。
まだ転職先は見当すらつけていないけど今の職場に残るのは辛すぎてムリだろう。
「じゃあ里美ちゃん、今日は数学をやろう。いろいろやることが多くて大変だろうけど、チカと一緒の高校へ行けることを信じて取り組んでもらいたいんだ」
「はい、正直言って学校の授業よりもわかりやすいので助かります。さすがチカちゃんの―― 信頼している先生ですね」
「まあホントの先生ではないからこうやって個別に教えられるんだけどね。学校の先生だと少なくともクラス全員をいっぺんに見る必要があるからなかなか手が回らないだろうね」
「確かにそうですよね。うちんちだって親があたしたちまで手が回らなくて仕事と妹の世話で手いっぱいですもん。ありがとうございます!」
「礼ならチカに言ってくれ。オレはめいれ―― お願いされて言うこと聞いてるだけだからね。その代りゲームで助けてもらってるってわけ」
本当は押しかけ女房なのだがここではそう言うことにしておこう。事あるたびに防犯アプリで脅されてるなんて冗談でもいうもんじゃない。
少し離れたところでは、その脅し主が息を切らせて今にもひっくり返りそうにぜーぜーと激しい呼吸をしているのが見えた。




