2.美人局の疑い
真昼間に普段着で公園にいる大人へ声をかけるなんて、どう考えてもまともな少女のやることではない。
でも今目の前にいる女の子は悪びれるところはなく、服装が乱れていていかにもそれっぽい雰囲気でもないごく普通の高校生、いや中学生くらいか。
少々観察気味に見てしまったが、そんなオレをチラ見してから少女は自分のスマホを取り出して準備をはじめた。
どれくらいせっぱつまっているのかは知らないが、学校はどうしたのか気にならなくもない。
だがそんなオレの考えを気にするそぶりを見せず、準備ができたらさっそくスマホをかざしながら何度か上下に振った。
すると当たり前のようにフレンド申請されたらしく、オレのスマホアプリ上には承認を求めるダイアログが表示されている。
「これでOKを押せばいいのか? 実はフレンドができるのは初めてなんだよ。だから詳しいことはわからん。頼むからだましたりしないでくれよ?」
「ダイジョブだよ。ウチを見たらマジメそうだって一目でわかるっしょ? ちょっとそのまま待っててね。今すぐそっちへ行くからっ」
待つも何もここ何日かこの場から動いていない。行くあてもないし目的もないからずっと飲んだくれているのだ。
なんといってもリアルと違ってゲームの中でいくら酔っぱらっても実害がないのが気楽でいい。
そうこうしているうちに二足歩行するタヌキがやってきた。
「おいおい、まさかこのタヌキがキミ? すごい趣味してるなあ」
「お兄さんの海賊コスは定番だけどありふれててつまんないね。せっかくなんだからもっと思い切った格好すればいいのに。まあでも今の服装見る限りファッションには興味なさそうだもんね」
あまりにはっきりと言われてぐうの音も出ない。確かにあまり気を使うほうでもないし、会社へ行くときはスーツなんだから必要ないと言えばそうだ。
だけどジーンズにTシャツでも清潔感には気を付けてるのに、こんな年下の女の子に見下されるとは思わなかった。
「自分だって制服なんだからおしゃれでもないだろ。どうせ中学生なんて家ではジャージとかじゃないのか?」
「なにそれ、田舎の中学生じゃないんだからそんなわけナイじゃん。なに? もしかしてウチの普段着に興味があるとか言っちゃうわけ?」
「いや待て、待ってくれ、誤解を招くようなことを言われたらまずいだろ。キミがオレの格好をバカにするから言い返したかっただけで他意はないよ」
「今ってすごく便利でさ? このスマホからアプリですぐに不審者通報できちゃうんだよねぇ。そっちなら興味ある?」
「マジで勘弁してくれ…… オレが悪かったよ。だから脅さないでくれ」
「あははっ、冗談に決まってんじゃん? その代わりにお金貰ったらゆすりみたいになってウチが悪人になっちゃうよ。でも家でジャージなんて着てないのはホントだからねっ。ってゆーかさ?」
「なんだよ、まだ続きがあるのか? 金は払うから勘弁してくれよ……」
「違う違う、ちゃんと借りるだけで返すってばっ。そじゃなくて、お兄さんウチのこと全く見覚えないわけ? ウチは前から知ってたんだけどなっ」
「ええっ!? それってマジかい? オレに中学生の知り合いはいないけどな。いつも行くコンビニでバイト――ってまだできないだろうし、駅へ行く途中に中学校があることは知ってるけどそれくらいだよ」
「まあそうだよね。通学している中学生なんてお兄さんにとってはその他大勢だろうしさっ。でも最近見かけなくなってたから引っ越したのかなって思ってたっ」
「オレってそんなに目立つほうじゃないと思うんだけど…… それこそ通勤してる大人だってキミたち中学生にしてみればその他大勢だろ?」
当然のように同じことを言い返したが、なんだか少女は少し不機嫌そうに頬を膨らませた。




