19.攻略と対策
『グウウウ、グウウウウ』
自分の腹の虫で目を覚ましたのかと思ったら、枕の下へ入れていたスマホにサークルが入っていただけだった。差出人はもちろんチカである。
『まだ始まってない? メンテ早く終わったりしてないよね?』
それくらいは自分で確認できているはずだと思ったのだが、確か月初はまだギガが戻ってないとかで厳しいらしいようなことを言っていた。
『パッチもまだ当たってないから予定通りか伸びる可能性もあるかもな』
『なーんだ、つまんないの。これから給食でーす』
『オレも腹ごしらえしてスタートダッシュに備えておくかな』
『あー、そんなのズルだ!』
『ええ、えええええええ!?』
『ウチはどんなルールなのかとか、ドロップかポイントかとか調べて教えてって言ってるの! 先に遊んでたら許さないからね! 離婚問題!』
『サイコパス……』
『違いますー』
『わかったよ、オレも一人で抜け駆けしてもつまらないしな』
『んふふ、旦那ちゃんってばやーさーしーいー』
そんなパカップルのようなやり取りをしていると返事が返ってこなくなった。きっと給食が始まって注意されたのだろう。
オレもゴロゴロしてる場合じゃない。とっくに役目を終えている洗濯機から引っ張り出した洗濯物を干していく。途中でレンジが終わりを告げるが全部終わらせるのが先だ。
「さてこっちも昼飯にしますかね」
アツアツの冷凍グラタンを食べながら攻略について考えをまとめ始めた。とはいっても今取りかかるのは|Reinbow Berthの攻略ではない。
里美の成績アップのため、そしてチカの希望を叶えるための対策と攻略である。そのためにわざわざ図書館で過去問を集めてきたんだからきちんと活かすのだ。
それにしても成績を下げる必要がある、テストで悪い点が取りたいなんておかしな悩みである。里美へ点数を分けてあげられれば一番だが、そんな仕組みがあるはずもない。
とにかく二人を同じ高校へ送り出すのが今のオレの目標だ。そのために集めてきた過去問から配点の傾向を絞り込んでいく作業は思いのほか楽しかった。
「あんまり極端にやりすぎてチカのほうが落ちたりしたら大ごとだからな」
独り言を言いながらふと考える。別に本番では満点だろうと構わないのだ。合格すればいいのだからトップでもビリでもおなじこと。
問題は校内や県統一学力テストで近い成績を取る必要があるってことなのだ。どこを受けるのかは生徒の自由であるものの、親もあんまり学力とかけ離れたところへ行かせてくれるはずがないだろう。
もう期待されていないとか言っていたが、いざとなれば学力に見合ったところを受けろと言いだすのは目に見えていた。
それが親の愛ゆえならいいのだが、どうやら世間体だったり親御さんたちのプライドの問題に思えてくるのがチカのかわいそうなところである。
ウチみたいに安パイな高校に受かっただけで赤飯を炊き、Fラン大学への進学が決まったら尾頭付きを食卓へ並べてしまう能天気な親に感謝してしまう。
生活レベルが高いから幸せだと言うことはないと改めて感じるし、賢い人たちにはそれなりの悩みや葛藤、世間体みたいなしがらみも多いのだろう。
できればチカの両親が再び彼女を正面から見据えてくれるようになってもらいたい。そう考えながら、過去問のコピーに書き込みを続けるのだった。




