17.来たるべき日に向けて
その日以来、オレとチカはサークルで通話をしながらプレイするようになった。なんといっても連携が楽すぎてチートみたいである。
『旦那ちゃん、ヒールちょうだい!』
「はいよ、ヒール! ついでにアジリティ!」
チックへ向けて魔法の巻物を使用すると、体力回復、そして敏捷性がアップした。これでだいぶ楽になるだろう。
深海エリアの大ボスには、雑魚を倒していくとだんだん強くなっていき、最後にボスが湧くというランクアップスポーンシステムが採用されている。
ボスが湧く前の三段階目までは爆弾もまあまあ有効なのでオレも出番がないわけじゃない。
しかしオレが死んでしまうと、蘇生役がモンスターを放置することになるため全滅の危険性がアップしてしまうのだ。
だからできるだけ危険な場所から離れて、指示があったときだけ回復なり支援なりをするようになった。
『もうここのダイオウイカにも飽きちゃったね。余裕でもないけど全滅はしなくなったし。これならサメボスも大丈夫だと思うよ?』
「ならいいけどイベントだからって運営が張り切りすぎないことを願うよ。いつだかの正月イベントで巨大獅子舞が出たときは阿鼻叫喚だったからなあ……
『あれはひどかったね。苦情もいっぱい出たらしいよ。よけられない即死攻撃とか許されないしょ!』
「ボスを倒してポイント集めて、景品と交換するってのはいいアイデアだと思ったけど、いくらなんでもボスが強すぎだったからな。今度はダイオウイカと同じくらいってアナウンスあったっけ?」
『ううん、ないけどスポーンシステムだってことだけはわかってるね。場所が深海エリアのどこかでランダムらしいのと、その場にいる全員が同じボスと戦う共闘ルールらしいよ』
「ああ、最後の最後にやってきてちょろっと攻撃してレアドロ狙うやつが出るルールじゃん…… あれやめてほしいけどなあ」
『ポイントが良かったけど仕方ないよ。回数こなすしかないね。だから今のうちに学校行ってるんだし』
「いやいや、学校はちゃんと行けってば。なんなら里美ちゃんと一緒に勉強見てやってもいいぞ?」
『これ以上成績良くなったら同じ高校行かれなくなっちゃうよ。里美は多分総合だと思うけど、ウチは今の成績でも余裕だもん』
「総合ってこないだまで工業だった都立か。この辺りじゃ最底辺だなあ。あんまりいい話聞かないけど平気か? もう少し頑張れば城址高校くらい行けそうだけど」
『城址高なら校風がいいって評判だしいいよね。二学期のどこかで体験入学あるからいくつか見に行ってくるよ』
「そうだな、オレもできる限りは協力するからさ。里美ちゃんにも頑張ろうって言っといて。あと弟君はオレを叩かないようにって」
『多分親にも叩かれてるんだろうねえ。妹もいるんだけどそっちはすごくかわいがってるんだよ? なのに宗太はサトに任せきりなの』
「家庭の問題には口出しできないけどあんまりいい環境ではないよな。だからこそなるべく校風のいいところへ行ってほしいね。これ以上ストレス抱えたら大変だろ?」
『家庭の問題、かあ。確かに他人が介入できないよね……』
「なんだ? チカもなにか悩みがあるのか? そう言えば中学受験失敗してから扱い悪いとか言ってたよな?」
『う、ううん、塾とか行かせてもらえないだけだから平気。別に叩かれたりご飯抜きにされたりしてるわけじゃないよ。期待されてないだけだから……』
オレはさみしそうにつぶやいたチカを見て、家庭の問題には口出しできないなんてわざわざ言ってしまったことを悔やんだ。




