15.感情の起伏
先ほどからメッセージが何度も送られてくる。しかしオレにもやることがある。
「これ電話番号教えてたら絶対にかかってきてただろうなあ」
オレははやる気持ちを押さえてこのところほうっぽりぱなしだった洗濯やら洗い物やらをやっていた。
もちろん先ほど採掘した『泥』は気になるに決まってるんだけど、期待しすぎてガッカリしないよう平常心を取り戻そうとしているのだ。
里美の勉強を見ている間は頭の片隅へ追いやることができていたものの、やはり今は鼓動が早くなり手に汗をかいている。
こうして帰宅後、小一時間ほどで家事をやり終えた。さてと大分気持ちも落ち着いてきてもしもの時に倒れたりしなくて済む。
満を持してチャットを開くと、予想通りチカからの個別チャットが大量に送られてきていた。
だが内容は少々想定外で、オレは思わずうろたえてしまった。
『もう帰りついたでしょ?』
『はやく鑑定行こうよ』
『なにしてるの?』
『ちょっと、無視しないでよ!』
『怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒』
『ねえ何かあった?』
『旦那ちゃん……』
『ウチのこと嫌いになったの?』
『………… 声が聴きたいな……』
『しつこくてごめんね……』
オレはあわててチャットを返した。
『ごめんごめん、家事がたまってたから先に済ませてた』
『良かったあ。何かあったのかと思って心配しちゃった』
『チカこそなにかあったのか?』
『ううん、なんでもないの。ちょっと声が聴きたくなっただけ』
『随分しおらしいじゃないか。何かあったなら正直に言ってくれよ?』
『んと、じゃあ通話しよ? サークルのID教えて?』
『―― わかった。zeroichinisanへ申請してくれ』
『ふふっ、なんか安直だねっ』
『ほっとけ』
すぐにサークルへ友達申請が届いた。こういったSNS的なアプリでのつながりだけで逮捕されることは無いだろうが、万一チカが補導でもされたら――
いやいや、チカがそんなおかしな真似をするはずがない。絶対に大丈夫。そう自分へ言い聞かせながら申請を受理する。
その瞬間、すぐに着信があってオレは飛び上るほどびっくりした。文章の入力も早いが、行動も早い。
「もしもし、なにかあったのか?」
『なんでこんなに待たせるのよ! ウチはもうワクワクして仕方なかったのに!』
「オレもドキドキしててさ、心を落ちつけたかったわけ。ごめんな?」
『うん…… そうやって素直に謝られると許すしかないじゃない、ズルいよ』
「な、なんでズルいになるんだ? まあでもこれから鑑定行こうと思うけど、一緒に行くか?」
『行くに決まってるでしょ! 通話したまま行けるよね?』
「試したことないけど平気だろ。じゃあウチで待ち合わせでいいか?」
『もういるもん…… ずっと待ってたから』
「ホントごめん、すぐ向うから待ってて」
オレは大急ぎで深海エリアの安全地帯から自宅へと飛んだ。




