13.修行あるのみ?
イベントのためにはレベルアップと練習が必要との意見が、ギルド定例会ではもっぱら主題となった。
確かにこないだの醜態晒しに言い訳はしないが、そもそもオレは生産職である。それにコックまでもが戦闘に参加するとか何の冗談なのか。
「あ、あのお、拙者は?」
普段はカッパの格好をしているのがエゴマッチョさんだ。マッチョなのは名前だけだと自虐的なことを言うくらいにはとにかくネタにされたいらしい。
カンガルーのギルマスがしばらく考え込んでいたが、結局はみんなと一緒に戦闘へ行き経験を積むしかないとの結論だ。
オレはどちらかと言うと昼間アクティブなので、チックが面倒を見てサメボス対策をすることになった。というよりチカがそう仕向けたのだが……
「でもまだ半月あるじゃないか。きっとみんなもっと強くなってて楽に倒せるんじゃないか?」
「それならいいけど、ギルドで行ったらドロップ品は分配だからね。自分用は自分で確保したいじゃない?」
「まさか二人で行くとか言いださないよな? オレが戦力になると思うのか!?」
「ダイジョブダイジョブ、ウチがソロで倒すからもしもの時に蘇生してくれたらいいのよ、ダ・ン・ナ・サ・マ」
すっかり慣れたと思ったがやっぱり言われるとむずがゆくなってくる。しかも今はレイバ内ではなくいつもの公園だ。オレは周囲を用心深く見渡した。
「もう、心配しすぎだってば。もともと知り合いなんだからもっと堂々としてて平気だよ。ウチが通報するとでも思ってる?」
「いや、そうじゃないけど勝手に誰かがへんなストーリー考えたりするかもしれないだろ? 最近警察の広報メール見るようにしているんだけど、変質者情報でこれもか? って思うようなのが混じってるぞ?」
「そうだねえ、こないだも小太りの中年が小学生の女の子を自転車で抜いて行ったなんてのも回ってたね。あれはちょっと警戒し過ぎかなと思わなくもないかな」
「そりゃなにかあってからじゃ遅いけど、いくらなんでもひどいよな。それも時代だと言えばそうなのかもしれないけど」
「でもレイちゃんはカッコいいからダイジョブだよ。不審者には見えないもん。ウチが保証するから心配しないでね」
「その保証がものすごい効力を持ってることに期待するよ。それでもう一人の子はまだなのか?」
「多分保育園に行ってからだからもう少しかな。ほら、レイちゃんは無職でウチはサボりだから時間間隔が違うって言うか?」
「一応まだ無職じゃないんだけど…… まあでもそうだな。世間はまだ学校終わったってくらいだし、少しインして稼いでくるか」
「なんだかんだいって深海エリアへ行けるようになって良かったでしょ?」
「うん、ありがとな。普通の採掘でも割りがいいとは知らなかったよ。色鉱石の割合が違うとかおいしすぎるだろ」
「それもウチがボディーガードでついて行ってるからでしょ? それともたまには一人で行く?」
「ううん、ムリ。チックさまにお願いするでござる」
「アハハ、なにそれ、エゴマッチョさんのマネじゃないのー」
あの日以来、オレたちは修行と称して深海エリアへと入り浸り、チカは雑魚退治、オレは採掘に励んでいた。
もちろん一番はレアアースだけどそれはまず出ないだろう。だからアンコモンである色鉱石を掘るのがメインである。
この鉱石掘りはボス狩りとは違って少しの時間でも成立するのがいい。やめたいときにやめればいいし、隙間時間にちょっとひと掘りなんてやり方もできる。
今はチカの友達を待っているところで時間はあるが、いつ中断しなければならないかわからないところだ。
『カキーン、カキーン』<鉱石><鉱石><鉱石><緑鉱石><鉱石><金鉱石>
順調につるはしを振るっていると見慣れないものがドロップした。
『カキーン、カキーン』<泥><鉱石><鉱石><鉱石>
「なんだこれ『泥』なんて初めて見たな」
「たまには鉱石が掘れなくて大外れがあるんじゃないの?」
「でも詳細がでなくて特性欄がハテナマークになってるぞ? 鑑定スキルも働かないし…… もしかしてコレって――」
「レ、レアアース!? 超レアドロップのレアアースってこと!?」
オレとチカは顔を見合わせて胸を高鳴らせた。すぐに持って帰って街の道具屋で鑑定してもらえるか確かめたい。
だがその時――
「なんだこのおっさんは。きーっく!」
「いてっ、な、なんだなんだ!? この子供どっから出てきた!?」
「チカちゃーん、遅くなってごめんねー」
どうやら待ち人が来たようで、オレたちの冒険はひとまず中断となった。




