12.これでも中ボス
それはもう、とにかく走った。ゲーム内なので全員足の速さは同じなので足並みそろえて列をなして走っている。
「ムリムリムリ、あんなタコのバケモノみたいなの倒せないってば」
「ダイジョブだってば。大ヒールがまだ50本は残ってるでしょ? 爆弾だってまだちょっとしか投げてないじゃないの」
「でもすでにエゴマッチョさんは20回以上死んでるぞ? オレはまだ3回だけどあらかじめヒール渡しておかなかったらヤバかった」
「だけど最低限のダメージを与えないとクリアにならないんだもん。パーティー組んだだけでいいなら楽なのにね」
本来はタンクとして前衛にいるはずのエゴマッチョさんは、あまりの猛攻に心が折れて逃げ出してしまった。これがまだ中ボスなのだから心も折れよう。
本当はタンクが受け止めて足止めをしながら戦士が削っていく手はずだったが、ボスの体力ゲージはわずかしか減っていない。かれこれ三十分は経っているのに、だ。
「じゃあ作戦を変更しましょう。はい、みんな止まって。ボスエリアから出たからひとまずは安全だしね」
「前は戦闘職だけでやったから楽だったんだけどね。時間はかかったけどさ」
「それを楽と言うならそうなんだろうけどなあ…… ボスのバー、数ミリしか減ってなかったぞ?」
「あれはね、しばらくするとバリアが壊れるのよ。そうするとガシガシ減らせるようになるの」
「本当だろうな? あれ見てたら心が折れるのもわかるってもんだぞ?」
「チックさんの言ってるのは本当ですよ。次は私たちが思いっきり減らすので、最後のほうに一緒に攻撃してください。ボスの体力がブレスの威力に直結してるので即死は無くなる、はずかなあ……」
「じゃあそれまではどうすれば?」
「周囲の雑魚に注意しながら眺めててください。余裕があれば爆弾をと言いたいですが、近寄るだけでも危ないし、合図をするまで離れていていいです」
どうやら完全におみそ扱いとなってしまった我々三名である。
ちなみにオレはビルドマスターという生産職でカツノリベンさんにいたってはコックである。
一番マシなのがタンクのエゴマッチョさんだったのだが、レベルも経験も足りておらず戦力外通告されてしまった。
一応オレが事故死してもいいように全員へ大ヒールの巻物を配っておいて第二ラウンドの開始となった。
さすがにギルマスは手馴れていて、ボスがブレスを吐くタイミングで背後へ回り、避けながらメンバーが被害をこうむらないような位置取り、チックはスピードタイプらしくヒットアンドアウェイで攻撃を食らう気配すらない。
他のメンバーもアーチャーとハンマー遣いという戦闘職で慣れたもんだ。始めからこうしたほうが良かったんじゃないかと思わなくもないが、それではおんぶにだっこで情けないと手を挙げたのだ。エゴマッチョさんが……
やがて本当にバリアが破壊され、ボスの体力が見る見るうちに減っていく。そのタイミングでギルドチャットへ指示が入った。
「そろそろ適当に攻撃を始めてくださいね。カツノリベンさんは毒が二回も入ったら十分なんで退避オッケーです。ダルマさんは爆弾二十回は当ててくださいね」
「ゼロです……」
「あの―― 拙者は?」
「えっとエゴマッチョさんはさっきやられまくったのでもう十分だと思いますが、不安ならシールドガードやバッシュを使っておいてください」
「わ、わかったでござる」
やがてボスは断末魔を上げながら消え去っていき、多大な犠牲と長い時間をかけて深海入場クエストをクリアしたのであった。




