10.ダルマさん
「ではこれでギルド加入が完了しました。それでは今日からよろしくお願いします、ダルマさん」
「ゼロだ」
「ダルマさんはチックさんとリア友なんですね。じゃあ中学生?」
「ゼロ、です……」
「それにしても良く似合ってる。それを選ぶなんてセンスがいいなあ。さすがチックが連れてきたダンナさんだ」
「ゼロなんだけど―― ああダンナはあってた……」
このままだとオレは本当の名前と言うかレイバネームのゼロではなくキグルミの名で呼ばれるようになってしまうだろう。それもこれもこのインパクトの強いダルマのせいだ。
今まで着ていた海賊服が普通のスーツに思えるくらいには差が激しい。しかも手足は素肌丸出しで靴すら履いていない。
「ところで旦那ちゃん、そのダルマって視界はどうなってるの? 目のところから除く感じになってるの?」
「いいや、普通になにも被ってないのと変わらないぞ。タヌキのキグルミは違うのか?」
「ううん、でも目元の下らへんには髭がプラプラしてるよ。かわいいでしょ?」
「かわいいのかは何とも言えないが、キャラ的にはあってる気がするな。動物シリーズは女性プレイヤーに人気だし、特にタヌキはアライグマ、レッサーパンダの次くらいには人気じゃないか」
「レッサーは最高ランクだもんなあ。億だよ億!とても買えないっての。あと超高額なのはカピバラとかアルパカ、イエローベアーとかかな。ちょっとやばそうなやつ」
「ああ、アレが実装されたときには絶対消されると思って手を出さなかったんだ。でもどうせ抽選当たるとは思えなかったからいいけどさ」
「ウチは外れたね、見事に外れた…… でも当たってもリアルマネー購入だから無理だったけどさ。なんかそういう大人の都合的な売り方っていくないと思う!」
「まあそう言う人たちがいるから基本無料で遊べるんだけどな。とはいってもオレは家が欲しかったからサブスク入ってるけど」
「そこはやっぱり社会人って感じよね。ねえねえ、これからはそこにウチも住んでいいの? 新婚だしさ?」
「新婚って…… でも好きに使って構わないぞ。レア素材以外なら何使ってもいいし、コレクションケースに入ってるもので欲しいのがあったら言ってくれ。なんでもあげられるわけじゃないけど検討はするから」
「ウチは自分で手に入れることにこだわってんの。今までずっとそうしてきたからさ。あっ! 今、だから受験失敗したんじゃ? って思ったでしょ! 違うからね? その直後に始めたの。リア友のダイターって子が誘って来てさ。あ、その子はKATじゃなくてほかのガチ系ギルドに入ってるよ。ウチとはプレイスタイルが違う感じかな。効率厨ってやつ? 戦闘系だけど旦那ちゃんに近いのかな」
とにかくチカはよくしゃべる。ボイスチャットでもないのによくもまあこれだけ話し続けられるものだと驚いてしまうが、普段からチャットの返事はめちゃくちゃ早いし、きっとスマホにキーボードを繋いでいるんだろう
「わかったわかった、そのあたりのことはおいおい聞かせてくれ。それよりギルメンが引いてないか? どっか行こうとしてたんだろ?」
「そうだった。来月のサメボスがね、深海エリアだから入場クエストやっておかないとなのよ」
「ちょっと面倒なやつだっけ? さすがにやってなかったのか?」
「もちろんウチはやってあるよ。こちらのカツノリベンさんとエゴマッチョさん、それと――」
チカは貯めるように言葉を止めると、腰に手を当てながらこちらを指さした。
「あ、ああ、そうだよな、もちろんオレも参加するんだもんな。ちゃんと爆弾を樽で用意してきたよ。あとパーフェクトヒールの巻物100本ほど」
「さすがウチの溺愛する旦那ちゃんだね。わかってるー」
「溺愛とかいって恥ずかしいだろ」
「ぜっんぜん! 楽しすぎー」
こうして初めてのギルド活動は、オレたち深海エリア入場クエスト未了三名のために、お助け役のチカことチック、ギルマスのカントク他数名で向かうことになった




