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雨宿りと三本の傘 (2)

 大学にはあまり行きたくなくて、短大を卒業すると、就職することも出来ずに病院に入った。

 お金がかかるからと母は入院を拒否しようとしたが、家に帰りたくなかったので、とにかく足を動かさなかった。

 その時の「いまからでも入院辞められないの?」という言葉は忘れられそうにない。ため息と舌打ちと…お前のために仕事休みにしたという怒りと、いろんな事を言われた。

 うるさい人がいなくなって、病室が少し暑かったので窓を開けて外を眺めていると、看護婦さんがすぐに飛んできて窓を閉められた。

 どうやら自殺すると思われたらしい。窓は開けないでくださいね。と念を押されてしまった。

 私の家族は、自殺で死んだお祖母様のせいで親戚中が自殺に対して過敏だった。

 だから、自殺という選択肢はいつも横に置いていてコレだ!と思ったことはなかったのだけれど、そうか普通の人にはそういう選択肢があるんだ。と思った。

 窓を開けることを禁止された私は屋上へ向かった。

 屋上には、フェンスがあった。みんなココから飛び降りるから、わざわざフェンスなんてあるんだ。と、思った。

 すごく晴れている日で、なぜかはわからないけれど今日じゃないなって私は思った。

 眠れない私にレンドルミンという薬が処方されてるんだけど、全然眠れたためしはなかった。

 外は、土砂降りの雨が降っていた。

 六階建ての病棟から飛び降りるのは今かもしれない。と、夜の屋上へ向かった。

 傘も持たずに向かった私は、ずぶ濡れになりながらフェンスの下を見つめていた。

 キィという古い錆びた扉が開く音がした。

「……まさか、同じ事考える人なんているんですね」

 同じ病院の寝間着を来た少年が皮肉に顔を歪めていた。

 病院のサンダルをペタンペタンとしながら、こちらに歩いてきた。

「一緒に飛び降りますか?」

「……………」

 差し出された手を握った時に思ったのは、向こうの手はまだ温かくて一緒がいいけれど今日じゃないような気がしてしまったんだ。

 私は、彼の病室にやってきた。病院のベットに二人して座ると、まだまだ止みそうにない雨を二人でただただ見つめた。

 その部屋の窓際には傘が置いてあって、なぜだか私は笑ってしまった。

「使えばいいのに…」

「落ちた後には、どうせ濡れるでしょ」

「そっか」

 彼は落ちた後の事まで考えていたみたいだ。私の自殺は、まだまだってことなのかな。

 私は、その傘を手に取るとボタンで一発で開く傘を開いた。

 真っ赤なおおきな1本の傘を二人でさした。すでに全身濡れてしまっている私達は、室内にいるのに傘に落ちる雨音が聞こえているような気がした。


 そこから、彼には何回か会ったけれど、向こうは何も言わずに退院してしまった。

『一緒に飛び降りますか?』

 それが約束のような気がしてしまって、私は1人で飛び降りることをやめてしまった。

 

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