第175話 勇者、新たな敵と出会う。 part2
「なんとかなりますかね? このスキル、姿は消しますけど人の持つ魔力は消せないんですよね······」
「どうなんだろうな、まぁ神黒さんのスキルの効力を信じるしかない······」
俺たちはピラミッド内部にある街の人気のない路地裏に身を隠していた。街の入り口には俺の使う大気一体の効果ですんなりと入れたんだが住民の多い、大通りなどには人目が多く中々足を踏み入れる勇気が出ないでいるのだ。
俺の手元には2つの物が握られている。右手には大気一体を発動するための刀〈影之一零式・改〉を握り、左手には近くの売店に売られていた串に刺された焼き魚を握っている。
断じて盗んだわけではない。その証拠に売店のテーブルの上にひっそりと焼き魚の値段ぴったりのお金が置かれている。
「誰かが俺たちを匿ってくれれば早いんだが······」
叶いもしない空想を浮かべていると街の入り口の方から強烈な爆発音が聴こえてきた。
ある人物は街中を走りながら後の内容のような話を叫んだ。
「誰か〜! 市長を呼んでくれ〜! 怪物が現れたぞ~!」
時間が経つにつれてその声は悲鳴へと変わり果てていく。
「何が起きているんだ······?」
「すまんがリクロス、我々の代わりに様子を見に行ってくれ!」
フローレンは真剣な表情を浮かべ、リクロスの肩に優しく右手をのせた。
「師匠!? 優しい顔で頼まれても無理ですぞ!」
「大丈夫だ、リクロスなら行ける!」
「ただフローレン殿が行きたくないだけではないですか! 隠密に優れているのは一殿とフローレン殿ですよ。我のような元が巨人の大木に何を考えておられるのですか!?」
リクロスの発言は図星だったようでフローレンは空かさず一の姿を視認した。
「これはやっぱりアサシンである一が偵察するのが一番安心だな!」
今度は一の肩に優しく右手をのせる。
「ごめんなさい。現時点でのアサシンスキルでは完全に気配を消すことが出来ないんです。お役に立てず······」
俺たちは最後に残った者の姿へ視線を向けた。
「我が行くしかないか······」
フローレンは渋々背中に生やした翼を広げ、2寸ほどの小柄な身体で爆発音のした地点へと向かった。
「気が進まぬなぁ······」
街の入り口では瓦礫に埋もれた住民や街の兵士と戦闘をしている魔物があちらこちらで発生していた。しかし、フローレンが一番驚いたのはその中にある人物がいたことだった。
「ゲッ!! やはりあやつも居ったか······」
溜め息交じりに発した言葉はフローレンの気の落ち込みようが露になるほどに深い溜め息だった。
フローレンは姿を草木に変え、バレないように入り口へ近づく。しかし、目の前で戦うある者には通用しないようだ。なんせ······。
「この臭いは······、クンカクンカ、クンカクンカ······!! あー!? イザナミ様~!!」
目の前にいた敵を薙ぎ払いフローレンの許へ全速力で走ってきた。
「イザナミ様、何故ここに? あっ!! 私のために来て下さったのですか! そんなにも私のことが忘れられないのならおっしゃってくれれば所構わず馳せ参じたというのに······」
この状況を観て分かる通り、こやつは異常とも言えるほどにフローレンに泥酔しているのだ。
「やぁ、久しいな有栖川。400年ぶりじゃのう。今はどんな状況なんじゃ?」
「私たちの愛を断ち切ろうとするゴブリン共を殲滅していた所でしたわ!」
「もうよい。お主に聴いた我が間違っておった······」
フローレンは有栖川の下を離れ、まだ生き残っている兵士たちの元へ向かった。
「どうなっているんだ?」
「分からない! 突然街の入り口から魔物たちが這い出て来たんだ! 早く市長に報せるんだ! 早く!!」
「はい、先輩!」
「神黒さん! フローレンさんが帰ってきましたよ~!」
「おぉ~フローレン! それであっちで何があったんだ?」
フローレンは先ほど兵士たちから盗み聞きした話を全て伝えた。
「うんうん、どんな状況なのかは分かった。······分かったのだが、その後ろにおる者は誰なのだ?」
フローレンの背後には紫色の衣を着て、桃色の髪に青の短冊を刺した美形の女性が立っていた。
「こやつは······」
フローレンは呆れた様子で溜め息を吐いたのだった。




