もっちに薬を
「ではそのように手配しましょう。
皆さん、国王様の言う通りに運んでください」
もっちの指示で葬儀屋が棺を運び出していく。
「ではまず前国王の葬儀から執り行いましょう」
「もっち」
葬儀屋がいなくなった所でもっちに話しかける。
「なんでしょう?国王様」
「もうセティ様と呼んではくれないのか?」
「国王様は国王様ですからね…セティ様と呼ばれたいなら呼びますが?」
「名前で呼んでくれ。その方が慣れている」
急に呼び方を変えられるとまるで他人のようで少し寂しい。もっちとは長年の付き合いだ。もう家族と言っていいほどもっちと長い時を生きている。
「ではセティ様。参りましょう」
「その前にもっち。渡したい物がある」
私は持っていたジタンの薬の瓶をもっちに差し出す。それを見てもっちは真ん丸な目を更に真ん丸にして私と瓶を交互に見つめる。
「それはまさかジタンの薬では?!」
「分かるか。もっちに飲んでもらおうと思って」
「えっと…何故ですか?これはとても貴重なお薬です。僕のような身分の低い者がとても口に出来る物ではないのですが?」
「生きてほしいもっち。私にはこれから先ももっちが必要なのだ」
そう言うともっちは口に手を当て、プルプルと震え出した。
「…そういう事は奥様かハーレムの女性達に言うものでしょう」
「イヴには既に言った。父のおさがりのハーレムになど興味ない。既にあの者達は薬を飲んでいる。
もっち、もう一度言う。生きてほしい」
もっちは私よりも1つ年上。寿命の短い兎人のもっちはいつ死んでもおかしくない。




