鍵のかけ忘れ
「そうなのか。
弟は元気にしているのか?」
「きっと元気にしてますよ。私は女の子なので売られてしまったので今はどうしているか分かりませんが…」
イヴは悲しそうな、寂しそうな表情を浮かべる。
「…すまなかった、イヴ。辛い事を思い出させてしまって…」
「いいえ。そのおかげでセティ様とラムセスと出会う事が出来た。だから大丈夫です」
「そう言ってくれると有り難い…」
本当にイヴは強い。そして素敵な妻だ。
「で…セティ様。本日はお兄様達の葬儀をするのですよね…?その、私赤ちゃんを産んだばっかりなので…」
「あぁ。ゆっくり休んでいてくれ。兄上達の葬儀は私がする。
本当にお疲れ様、イヴ。ラムセスを頼むぞ。
行ってくる」
イヴのおでこにキスをし、ラムセスの小さな耳にちょこんと触れてから私は二人に背を向け部屋から出る。
(さて……行かねば)
廊下に出た時、ふと思い出した事があった。
(父の部屋に鍵をかけただろうか?かけ忘れた気がする)
あの時は慌てていたから忘れてしまったかもしれない。
急いで父の部屋に向かうとやはりと言うべきか。ジタンの木の間の扉は開きっぱなしだし隠し本棚もそのままだった。
(危ない危ない)
誰も中にいなかったから誰も入っていないだろう。今度はきちんと鍵をかけ、本棚を戻そうとしてふと思いついた。
(こんなにあるのだからもっちに1つ渡しても問題ないだろう)
薬の瓶が並ぶ横には薬の作り方が書いてある。
滅多に実らない黄金のジタンの木の実をバケツ1杯の水に一週間漬けるとその水が薬になるのだと書かれていた。




