ジタンの木
父の部屋は宮殿の中央に近い場所にある。そしてジタンの木は宮殿の中央に。
「此処に来るのは誕生日以来だ」
正確には誕生日の次の日、夕食後だ。誕生日のあの日はイヴと……まぁ。
「お酒の匂いのする部屋ですね」
ベッドの横の窓の近くのテーブルには何本もワインのボトルが転がっていた。
「父は酒が好きだったからな」
棚には酒の瓶がずらっと並んでいる。
此処を自分の部屋にする気にはなれない。父の事は好きではなかったから…。いずれ片付けさせよう。
「ジタンの薬は此処にある」
父の部屋の本棚をずらすと金庫があり、ジタンの木の間に行く鍵と同じ物で開いた。
中にはぎっしり薬の瓶が詰まっている。
その中から2本取り出し、1本をイヴに渡す。
「さぁ、飲んでイヴ」
「は、はい……大丈夫なのかしら…」
私の方をじっと見るのでまず私が飲んで見せた。
「…苦い」
吐き出すほどではないが渋みがあって苦かった。
「……本当、苦いですわ」
イヴもそれを飲むと渋い顔をする。
「これから80数年よろしくな、イヴ」
「…はい。私でよければ…」
イヴから差し出された手を握り、私はジタンの木の間にイヴを導く。
「こっちだ」
鍵を開け、中に入ると冬の夜だと言うのに照明で明るかった。
そして真夏のように暑い。
「これがジタンの木……まるでカカオみたいですわね」
「カカオ?」
「お菓子の原料になる木の実があのようになっている木が私の生まれ故郷にあるのですよ。
でも葉は普通の色ですし、幹もあんなに白くありません」
ジタンの木は青い葉に白い幹と枝の不思議な木だ。




