吐いてしまうセルケト
食事が始まると急に1つ下の弟が話し始めた。
「聞いて下さいよ父上。最近セティ兄様ったら僕達と遊んでくれないんですよ」
「そうか」
一言だけ返すと父は何事もなかったかのように食事を続ける。
「セティ兄様ったら最近女を連れ込んで毎日よろしくやってるんですよ?」
「まぁ、いやらしい。これだから商人の子は」
援護のように1つ下の弟の母親もそう言いながら私の母上に向かって挑戦的な目を向ける。
「貧乏貴族の言う事など聞こえませんわ。セティ、好きにすればいいけど迷惑だけはかけないでちょうだいね」
「…はい、母上…」
母は私に無関心だ。世話も乳母と先代のもっちがしてくれたし、私にとって母とは産んでくださっただけの存在だ。
「ごほっ、ごほっ、ぐ…うぅ…」
その時…兄が酷く咳き込んでしまい、私はすぐに背中を摩り、吐くかどうか待ちながら洗面器を用意する。
「まぁ!大丈夫?セルケト」
「大丈夫かセルケト?!セティ、セルケトを頼むぞ」
震えながら嘔吐を堪える兄を連れて席を立ち、部屋の隅で洗面器を構えたまま背中を摩り続ける。
父とセルケトの母は口では心配はするが何もしない。小さい頃から私が兄の面倒を見て来た。
「ごめ…セティ…」
兄は泣きながら吐いてしまい、私は兄が吐き終わるまで背中を摩り続け「大丈夫ですよ」と声をかけ続けた。
吐き終わった洗面器を下に置き、水を取って来ると兄をうがいさせ、共に席に戻る。
「ごめんなさい…セティ、皆…」
謝る兄に向けられる視線は父以外皆冷たいものだった。
「大丈夫だ、セルケト。さぁ、まだ食べられるか?ちゃんと食べないと」




