それだけは僕は頷く訳にはいかない
「はい!」
イヴはしっかりと返事をする。
「まだ子供が出来ているかは分かりませんが、出来ていたら元気な赤ちゃんを産むつもりです」
「頼むよ」
「はい」
「兄上…その」
私はこれを言うべきか迷う。それを感じ取ったのか、兄は瞼を開き、しっかりとこちらを見る。
「王位継承の事かな?」
「はい…兄上、私が一生兄上のお世話しますので一緒に貴族落ちしてくださいませんか?」
これが最善なはずだ。王位継承戦に兄は耐えられない。王位継承権を放棄すれば戦わずに済むし、兄を危険な目にさらさずに済む。
「セティ」
「はい?」
兄は急に怖い顔になってこちらを睨む。
「それだけは僕は頷く訳にはいかない。王族として生まれた以上、責務を果たさねば。逃げるなんてゲホッ…ぁ…はぁ…逃げるなんて許されない」
「兄上?」
「でも、まだ出来たかは分からないし、もし出来ていたとしても生まれるまで時間はある。まだ今生を楽しむとしよう」
「兄上…」
「さぁ、もう行っていいよ。あまり僕ばかりに構っていられないだろう?メイホウ殿に挨拶に行かないと、だろう?」
なんでもお見通しの兄には頭が上がらない。
「はい、これから挨拶に伺う予定です」
「大変だとは思うけど、頑張って行っておいで」
「はい。それでは行ってまいります」
兄にベッドから見送られ、私はイヴと共にメイホウが部屋を取っているというホテルに向かった。




