聖女召喚と思い出す俺。
薬学に励んだ俺は、今では王宮一番の薬師に登り詰めていた。
そんな俺も十五歳。
成人しました。
自他共に認めるイケメンに育ちましたよっと。
婚約者候補も数人居て、モテまくってますよっと。
待ちに待った十五歳なのに魔王復活どうこのせいで、隣国に行けてないのだけが不満だか、それ以外は充実した毎日である。
兄上も、今は十七歳で勇者でもあるとされた事から、十五歳の時に立太子をして、婚約者もしっかり決まっている。
公爵家の娘で、この国一番の美女である、セシリア・ファレル嬢だ。
ぶっちゃけ羨ましい。
めちゃくちゃ可愛いんだよ。
黒髪、黒目で前世の記憶がある俺としては、安心感のある色だしな。
王宮内で会うと、柔らかな笑顔で話し掛けてくれるんだが、聖女召喚の準備や訓練で忙しい兄上の代わりに、たまにお茶にも付き合っている。
横恋慕?
そういうドロドロ展開は勘弁して欲しいからちゃんと弁えてはいるぞ。
俺の婚約者候補の相談にも乗って貰っているしな。
セシリア嬢の推しは、侯爵家のリリアム・ソルナーデ嬢か伯爵家のアイシャ・ソルバーグ嬢らしい。
なんでも、見目が良いだけでは無く、控えめながらに聡明であるとの事。
参考にさせていただこう。
ちなみに、本日は聖女召喚を行う為兄上の婚約者であるセシリア嬢と共に、準備が整うまで待機をしている時間だ。
「カイル殿下がお望みでしたら、どの家も喜んで婚約を結ぶと思われますよ」
「そうだろうか…セシリア嬢は手に入らなかったがな」
「お戯を。カイル殿下からはお声が掛からなかったと聞いておりますわ」
軽い冗談のつもりが顔を赤らめるセシリア嬢を見て、失敗したと内心焦る。
可愛すぎるだろ!
落ち着け俺。
彼女は、兄上の婚約者だ!
それに、声を掛けなかった訳じゃなく、兄上の婚約者として内定していたから声を掛けられなかったが正解だ。
そこでタイミング良く、聖女召喚の儀の準備が整ったと通達が入り、セシリア嬢をエスコートしつつ、儀式が行われる場所へと向かう事になった。
助かった。
「聖女様はどのような方なのでしょうね」
「聖女というからには、優しい女性なんじゃないだろうか?」
これ、日本から召喚されたりすんのかな?
だとしたら、誘拐だよな普通に。
それとも、また別の異世界から?
まぁ、兄上と世界を救ってくれるならなんでもOKではある。
すまんな聖女。
兄上を頼んだ。
儀式の間に入ると、煌びやかな正装で兄上が中央に立ち、その周りを父上を中心に貴族の当主達が座っていた。
俺と、セシリア嬢は父上の隣りの席へと向かい腰を下ろす。
「では、聖女召喚を始める。アーティア、しっかりな」
「はい」
父上の言葉に兄上が返事を返すと、兄上は古びた杖を持ち、何やら呪文のようなものを唱え始めた。
あの杖が媒体になるそうだ。
呪文が終わったのか、杖を祭壇のような場所に置き、兄上が最後の一言。
「聖女よ。今、この地に降り立て。我と共に世界を救いたまえ」
ビガーッと目が眩むような眩しい光が杖から発せられたと共に、杖は消え去り代わりに兄上と同じ年頃の少女が立っていた。




