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聖女召喚した聖女がやる気がないので、俺が聖女になるしかない  作者: しののめ あき


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3


マルスが扉を開けると同時に入ってきたのは、この国の第一王子。

アーティア・フォン・アルバトロス。

今の俺の兄になる。

輝くような金髪に、青空のような瞳。

記憶にある父親によく似た顔立ちで、男らしいイケメンだ。

反対に俺は母親似らしい。

輝くような金髪は父親譲りなんだろうが、瞳の色は深海のような碧だ。

母親は俺が三歳の時に流行り病で亡くなっているが、肖像画や朧げな記憶の中で柔らかく微笑む彼女は絶世の美女と言われていた。

うん。確かに。俺、中性的なイケメンだわ。


この国の陛下、つまり父親は俺達二人の母親を心から愛していたようで、王族にありがちな側室、後妻などは迎えておらず、一人で政務をこなしている。

孤独の賢王と言われているらしい。


で、この兄とは同母の兄弟であり勉強、訓練、茶会のようなイベント事は全て一緒に行っており仲は良好だ。


母親が違うと、派閥だの政敵だので王位争いなんてパターンは、前世で山程読んだが俺達の場合は、兄がよっぽどやらかすか俺の能力が抜きに出てる場合以外にこの兄の王座は揺るがない。

…あれ?ヤバくないか?

癒しの魔法使えたぞ?

激痛時とは別の意味で汗が止まらなくなってきた。


だから、マルスが即時に確かめようとしたのか。

王位に関わるかもしれないから。

今後絶対にマルス以外に口外できないわ。

マジでやべえもん。


「兄上、もう痛みも無いですし大丈夫ですよ。私が受け止められなかったのが悪いのです。兄上にそんな顔をさせて申し訳ありません。」


「カイル、悪いのは私だ!訓練なのに体勢を崩した相手に思い切り打ち込むなど…」


「騎士団長もいつも言ってるじゃないですか。実戦では相手はまってくれないと。訓練だと思わず毎回実戦のつもりで挑めと。ならば、悪いのは鍛錬が足らない私の方です。」


「しかし…」


「兄上、私ももう大丈夫ですので一緒にお茶でも如何です?小腹が空きました。」


納得してないようだけど、第二王子にいつまでも謝ろうとする第一王子は良くないと思い、お茶に誘う。

俺の言葉にマルスが部屋のベルを鳴らすと直ぐに部屋付きメイドがやって来て、軽食と飲み物の用意を指示していた。


渋々ではあるが、部屋のソファに腰をおろした兄上とテーブルを挟んで対面に座った。


「…ならばこれで最後にしよう。やはり私が悪い、カイルすまなかった。自分の罪を他人に謝らせているようでは、立派な王になどなれない。私からの謝罪を受け取ってくれ。それと、何かあれば直ぐに宮廷医師を呼ぶように。」


「承知しました。兄上、ありがとうございます。」


「痛い思いをさせられて礼を言うなんてお前くらいだぞ」


「兄上の優しさにですよ」


ふふっと笑い合って、メイドが運び込んでくる軽食に二人して目を奪われる


バターたっぷりに焼き上げたパンに厚めのソテーされた肉が挟まったロールサンド。


これは、兄上と俺の大好物だ。

さっきまで、大人顔負けの対応をしていた兄上も、大好物を前に口元を緩め、ソワソワと十歳らしい態度を見せている


前世の記憶が戻った俺はさておき、十歳だぞ。

前世の俺なんて十歳位の時、カブトムシを捕まえに山へ行き、蚊に刺されまくって顔面がボコボコになった年頃だ。

それなにこんなしっかりして、国を背負う為努力を惜しまないなんて…


俺は兄上を守る!癒しの魔法なんて秘密にして兄上の地位を揺るがさない!

庇護欲を感じて、そう心に決めたのだった。

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