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「カイル殿下?いかがなされました?」
「いや…」
黙り込んだ俺をまた、心配そうに見つめるマルス。
カイルとしての記憶を辿り、十分に信用出来る人物だと判断して、さっきの現象について話してみる事にした。
「亡くなられた王妃陛下は隣国の第一王女様でしたので、カイル殿下が女性であれば奇跡的に、聖魔属をお持ちになる可能性も…そもそも、それを期待して隣国の王女殿下と婚姻されたとも聞いた事がありますが…」
「女性?え、男じゃ駄目なのか?」
「聖女と言う名称があるように、聖魔法は女性に現れるものだと伝えられておりますので…しかし、男性に聖魔法が現れないのか?と、聞かれたらしっかりした理由は分かり兼ねます。」
えー
日本では、普通に男性でも癒しの魔法とか使うアニメやラノベ、ゲームも見た事あったのに。
男女差別良くないぞ!
「ならば、俺…いや、私の見間違いか」
あぶねぇ!
口調が前世に引っ張られそうになる。
マルスは、なんか考え込んでて気付いてなさそうで助かった。
「カイル殿下、少々無礼をお許し下さい」
「どうした?」
マルスが、胸ポケットからハンカチを取り出すと右手で口元に当てつつ、左手の親指をハンカチと口の間に入れたのを見て、これからの行動を察知して止めに入ったものの少し遅かった。
「バッ…馬鹿者!何をしている!!」
掴んだマルスの左手親指からツーッと流れた血が、俺の手に付かないように慌ててハンカチでマルスが抑えるが、付く付かないはどうでもいい。
想像出来たのに、自分で親指の腹を噛み切ったマルスの行動を止める事が出来なかった自分に腹が立った。
大方、俺の言った現象を確かめようとしたんだろうが、自分をワザと傷付けるなんてやめて欲しい。
前世の記憶に引っ張られているのか、もう少し考えて行動しなければ、と反省をした。
俺はこの国の第二王子で王族だ。
マルスはそんな俺の忠実な従事。
俺が言った、癒しの魔法を使えたかもしれない。と言う疑問を確認して本当に使えた場合、どのように対処すべきか考えたんだろう。
護衛も兼ねているマルスは暗器を隠し持っているにも関わらず、俺と対面している状態では暗器を出せず自らの歯で傷付けてみせたのだ。
本当は血を流す事も良くないので、無礼を許せと言うのは、傷付ける事に対してだった。
「カイル殿下、そのお力を私などに試して頂くのは勿体無いですが確認の為にどうぞお願い致します。」
それでも、マルスが真剣なので俺も向き合うしかない。
…治らなかったどうしよう。
激痛のせいで見た幻覚だったりして。
不安に思いながらも、治れーと願ってみると、淡い光が俺の手からマルスの親指へと移動して傷があったとは思えない程一瞬で治った。
マルスの親指を二人して無言で眺める。
数秒、いや、数十秒はそのままだったように思うが
「……治ったな」
「……治りましたね」
俺の言葉に茫然としつつもそう答えたマルスは、俺の部屋に響いたノックの音に我に返り、とりあえずマルス以外誰にも言わず、そして使わないように念を押してから扉を開けた。
「カイル!大丈夫かい?!私の技術が足らないせいで、剣を止められず痛い思いをさせてしまった。ごめんよ。」




