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異世界に猫はいない

よくよく考えると、コイツ何やってるんだ、迷惑な野郎だ、という事に気がつきました。そう、どこにでもそういう考えなしは、

いるものです。と言うかミーア様。あなた何がしたいんですか?

 冒険者の街、《アーク》は、一般にジ・アークと呼ばれ、この大陸の西部に位置し、大陸中部に広がる大森林と、それに連なる草原地帯に囲まれた、古くから栄えた神の街であり、街の中央には美しい装飾に象られた白亜の大聖堂が鎮座している。この街は、この大聖堂を中心に発展してきた。聖堂の巨大な扉は常時解放されていて、門番もいなければ、説教を行う神父すら存在しない。ただそれでも不埒な行いや神に対する不敬を行おうとするものは皆無である。まつられている神は、実は良く判っていない。ただ、時折天空から美しい声が聞こえると言うもの、大聖堂で祈りをささげると七色の光が差し病気が快癒したと言うもの、アーク内で商売を始めたら大成功を収めたと言うもの、それに近くの港湾都市の漁業ギルドが海中から引き揚げたと称する女神像があまりに神々しい見事な出来で、この街の評判は年を追うごとに高まって行き現在の隆盛につながっているという。この大陸を含む、要するに世界と呼称されるこの大地には、他にも宗教が存在するのだが、事この《アーク》のあるこの大陸においては人が崇めるのは、いつごろからか漁業ギルドが聖堂内に安置した女神像のお姿であると言われているミーアさまである.

そのお声を拝聴したことがあるととまことしやかに語る旅人曰く、「鈴を鳴らしたような美しい声である。」

そのお力で大陸中の医術しから匙を投げられたという老人が語るにいけんもは、

「何という事でしょう、目が霞み、歩くこともままならなかった私が、今は階段の上り下りもスムーズです。」

アーク内で最初に商売を始め、アークの商業ギルド長を務めるエヌ氏は、

「私はここに来て成功を収めました。もう手放せません。ここの商売は最高です。」

皆それぞれ、熱を入れて口角泡を飛ばして女神の秘跡をはやし立てる、これで買わねば大損ですよ的なノリである。何処まで信じてよいやら鼻白む者もいて

も当然だという、やっかみ半分の意見も出る始末。ともかく現在、ジ・アークは一獲千金を求める冒険者が、近郊の草原や森林に住み着いた魔獣類を狩るために集まる冒険の街にもなっており、さらにその賑わいを増してきていたのだ。それがゆえに、ここ最近の魔獣類の大量消失は大事件である。魔獣あってこその冒険者であるのだから。勿論魔獣討伐以外にも依頼仕事の種類は多岐にわたる。ただ、そのどれもが魔獣の脅威があることを前提にしている。この《アーク》の経済は、もちろん神殿、というか神「ミーア」への信仰によって成り立っているのだが、実利的なものは実は信仰(つまり、神ミーアへの祈りを捧げるに最も適している場所がここである事が重要である。)を行うためにこの地で生活する事が必要であるため、この幾多の、それも狂暴な魔獣類から己が身を守る必要があるため、冒険者の護衛その他が必要であり、人はそれに大金を払う。そのお金が循環してこの地の経済を支えているのだ。確かに近郊の漁港から上がる魚類の流通も金銭にはなるだろう。そう言った物流も経済を回す。でもその程度の資金のやり取りでは回っていかないほど経済の大本に魔獣がいた。人は訳も分からぬまま大量の魔獣が徘徊するこの地に信仰と称して自らの財貨を仮託していたのだ。良いも悪いも無く、仕方なく、と言いながら。異世界からやってきた俺はそんな事とは知らなかった。そもそも俺が来たこの地も、ここに来た意味も、授けられた力も、それが及ぼす効果も知らなかったのだから、どうしようもない。街に来る道すがら、普段と違いこの地で暮らす冒険者たちと語らいながら来れたから分かったことだ。でも俺も、可愛いモフモフになった奴らを戻す方法は解らないし、その原因も不明だ。いや、恐らく神の奇跡なのだろうが、では俺に何かできると言うのか。否である。そもそも俺にあの可愛い奴らを元の魔獣に戻すつもりなどさらさらない。だけど、出会ってしまったこの男女は決して悪人と言う訳ではない。宿まで紹介してくれた。何かあったら、手を貸すぜ、とも。俺はどうすれば良いのだろう。彼らと別れて、行き詰った俺は紹介された宿に向かう前に、女神像が安置されているという神殿に向かうにした。そう言えば、一度も来てなかったな。何度か森で取れた食材を買ってもらうために、そばを通ってはいたんだが神様なんて信じちゃいないし、まあその割には神様のご差配でここに来たわけだが。そいえば、アレ、何だったんだろう。深く考えたことなかったな。こんな素晴らしい櫛まで頂戴したのに。俺は懐にしまってある櫛を取り出してしげしげと眺めてみた・・・あれ、この紋章みたいなやつ・・・どこかで、ああ、あの夢の祭壇だ。あの跪いた固い感触。そういえばあの祭壇の縁取りにも、よく見ればこの頂いた櫛の持ち手部分にも、同じ様な文様がある。そうか、この像の神様、ミーアさまこそ俺に声を掛けてくださった女神、その方だったのか。

俺はその像の前に、また同じように跪き、また祈りを捧げた。

「女神よ、ありがとうございました。今日までの御恩寵、感謝こそあれ悔やむものではありません。これだけは事実でございます。ですが俺は、この地で温かい、人間の知人が出来ました。その者たちはしかし、俺と同じような恩寵は持たないようです。その者たちは困っております。期せずして俺があなた様にの御恩寵に浴して浮かれていた間にこの地の生業を奪ってしまっていたようです。この罪なる身、いかように処せばよろしいのでしょうか。」

すると、ややあって天啓が下りてきた。それは依然と同じような声で、首を垂れる俺を包み込むように優しく語りかけてくれたのだ。

「広げなさい、汝の思いを。そして伝えなさい。獣たちの声なき声を。彼らはもう、人を狩り、人に狩られる存在ではありません。人と同じ位置で、人と同じ愛情を分かち合える者たちです。ゆめゆめ忘れる事なきよう。」

含み利かせるような声は静かに去って行った。だが俺の心には新たな灯が点された。俺に出来ることは、わが手で作り、それを分かち合う事。同じ志を持った者を見つけ、それをあまねくこの世界に伝える事なのだ。

こうしてはいられない。俺は神の啓示の通り、刃物と木材を探しに、神殿の外に広がる街の商店街を散策することにしたのだった。



自分でもぶっ飛び過ぎた設定に唖然としています。でも猫と異世界は良く考えると長靴をはかせるしかなくなる世代でございます。年がバレるね。

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