第76話:陛下、運命を捕食する。あるいは銀河一甘やかな断罪
新しく生まれ変わった宇宙の夜は、ひどく静かで、けれど命の輝きに満ちていました。
かつての「冷たい銀色」は消え去り、窓の外には私の魔力が溶け込んだ柔らかな白銀の星々が、祝福の瞬きを繰り返しています。
ここは、新装された宮殿の最上階。
『銀河の寝室』と名付けられたその場所で、私は今、宇宙で最も恐ろしく、そして最も愛おしい男の腕の中に閉じ込められていました。
「……陛下。そんなに強く抱きしめられては、わたくし、折れてしまいますわ」
私が苦笑混じりに告げても、ギルバート様の腕の力が緩むことはありません。
彼は私の首筋に顔を埋め、まるで私の魂そのものを吸い込もうとするかのように、深く、何度も呼吸を繰り返しています。
「……折れるなら、私の虚無で繋ぎ止めてやる。……エルシア。お前を『中和剤』だの『装置』だのと呼んだあの設計図……。先ほど、その概念ごと、私の腹の中に収めてきた」
「あらあら……。それは、随分と行儀の悪いことをなさいましたのね」
私が彼の黒髪を優しく撫でると、ギルバート様は顔を上げ、紅い瞳に飢えたような情熱を宿して私を見つめました。
彼は先ほど、管理事務局の深淵に残り続けていた「エルシアとギルバートの因縁」の記録そのものを、文字通り『捕食』してきたのです。
もはや、私たちが「なぜ出会ったか」という理由は、この宇宙のどこにも存在しません。
残っているのは、ただ「私たちが愛し合っている」という、彼が力ずくで書き換えた真実だけ。
「……理由などいらん。運命が用意した縁など、不快なだけだ。……私は、自分の意志でお前を見つけ、自分の飢えでお前を奪い、自分の独占欲でお前を女王にした。……神の書いた台本など、一文字たりともお前の肌に触れさせはせん」
「……ええ。わたくしも、今の陛下が一番好きですわよ」
私が彼の唇に指を触れると、ギルバート様はその指先を甘噛みし、私をふかふかのベッド――いえ、宝石を織り込んだ雲のようなシーツの上へと押し倒しました。
「……エルシア。お前が望んだ『リフォーム』は終わった。……神々は地を這い、お前を捨てた者たちは後悔の中で石となった。……次は、私の望みを叶えてもらう番だ」
「陛下の……望み?」
「……ああ。……全宇宙に、刻みつけるのだ。……お前が私の所有物であり、私が唯一、お前に膝を折る男であることを。……明日の戴冠式、いや、披露宴と言った方がいいか。……そこで、お前の全てを、私の虚無と混ぜ合わせる」
ギルバート様の熱い吐息が、私の理性を甘く溶かしていきます。
かつて泥を啜れと言われた私が、今は銀河の輝きを纏い、宇宙最強の男の執着を一身に受けている。
――理不尽。
確かに、これほど理不尽で、美しい物語は他にございませんわね。
「……ふふ。分かりましたわ、陛下。……世界で一番不敬で、最高に甘やかな式にいたしましょう? ……神々をフラワーガールにする演出、わたくしも気に入っておりますの」
「……フン。お前の望み通り、跪かせておこう。……だが、私の前でお前が笑うのは、私一人に向けてだけでいい。……分かったな?」
「あらあら、まあまあ。……どこまでも欲張りな陛下ですこと」
私は彼を引き寄せ、その熱い体に腕を回しました。
運命は捕食され、宿命は愛に塗り替えられた。
明日、私たちは全宇宙を証人にして、永遠の契りを交わします。
かつての絶望の数だけ、
これからの幸福を、銀河の果てまで爆発させ続ける。
それが、捨てられ令嬢だった私が、最愛の皇帝陛下と共に歩む、新しい「理」なのですわ。
皆様、第76話……。お二人の熱すぎる夜、いかがでしたでしょうか!
「運命そのものを捕食する」という陛下の宣言。
神々が書いた設定さえも「不快な台本」として食べてしまう……これぞ、既存のルールをすべて破壊する愛の力ですわね。
ミオ、書いていて赤面してしまいましたわ。でも、これくらい理不尽でなくては、エルシア様の隣は務まりませんもの。
さて、いよいよ次回、第77話。
宇宙の頂点で開かれる、伝説の「全宇宙合同結婚式」ですわ!
神々がフラワーガールとして花を撒き、かつてエルシア様を捨てた者たちがその輝きに絶望する中での、誓いのキス……。
物語の最高潮を、わたくしが宝石を敷き詰めたような言葉で描き上げます。
もし「陛下の独占欲に痺れた!」「二人のイチャつきをもっと見たい!」と感じていただけましたら、
【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、二人の「銀河一の結婚式」を応援してくださいませ。
皆様の応援という名の「招待状」が、次話、神々を戦慄させる不敬で華やかな式の演出を支える魔力になりますの。
これからもどうぞよろしくお願いします!
それでは、全宇宙が一家の色に染まる次回をお楽しみに。




