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泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ
第5部:全宇宙を「私有地(マイホーム)」にした星冠女王、最愛の娘を狙う多次元の侵略者を最強夫の嫉妬という名の天災で根絶やしにしました

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第75話:中和剤ではなく、共鳴者として。エルシアの覚醒

視界のすべてが、沸騰する白銀の海に飲み込まれていきました。

 全宇宙初期化アポカリプス

 神々が数億年かけて積み上げた因果の記録が、砂の城のように崩れ、何もない真っ白な「キャンバス」へと戻っていく音。

 それは本来、あらゆる生命の絶叫さえもかき消す無慈悲な終焉の響きです。


 けれど、私の耳に届いていたのは、ただ一つ。

 私を抱きしめるギルバート様の、激しく、そして切ないほどに力強い鼓動だけ。


「……エルシア。怖いか」


 ギルバート様が、私の耳元で低く囁きました。

 彼の漆黒の礼装が、初期化の光に削られ、その下の「虚無」が露わになっていきます。

 彼は、自らの存在が消えることなど微塵も恐れていません。ただ、私の指先が光に溶けていくのを、この宇宙で最も理不尽な絶望を見るような瞳で眺めていました。


「……怖くなどありませんわ、陛下。……だって、わたくしたちがこれから描く世界には、涙も泥も、もう一滴も必要ありませんもの」


「……ああ。……お前が消えるというなら、私もこのまま無に還ろう。……管理者のゴミどもが願う『完璧な秩序』など、お前のいない世界には存在し得ない」


 ギルバート様の「虚無」が、私を包み込むように膨れ上がりました。

 それは、世界を消そうとする白光を、逆に食らい尽くさんとする破壊の闇。

 

 その時です。

 私の右目――『銀河の瞳』が、今までにないほど熱く、深く、拍動を始めました。

 管理者は言いましたわね。私は彼の毒を中和するための装置だと。

 

 ――いいえ。それは違いますわ。


「……陛下。わたくし、分かりましたの。……わたくしのこの瞳は、貴方の闇を消すためのものではありません。……貴方の闇を、宇宙で最も美しい『輝き』に変えるためのプリズムだったのですわ」


 私はギルバート様の頬に手を添え、彼の紅い瞳を真っ直ぐに見つめました。

 

 抑えるのではなく、重ねる。

 消すのではなく、響き合わせる。

 

 私がそう確信した瞬間、私の体から溢れ出した銀色の光が、ギルバート様の漆黒の虚無と、まるでダンスを踊るように複雑に絡み合い始めました。

 

 $1 + (-1) = 0$ ではありません。

 私たちが重ねたのは、無限と無限。

 

「――共鳴レゾナンス、開始。……女王の名において、全宇宙を『溺愛』の色に塗り替えますわ!」


 ドォォォォォォォォォォォォンッ!!


 初期化の白光を、私たちの「黒」と「銀」が、暴力的なまでの美しさで塗り潰していきました。

 闇は星々の母となり、銀の光は命の息吹となって、何もないキャンバスに新しい銀河を描いていく。

 

 その光の余波は、崩壊しつつあった下位階層――アステリア王国にも届いていました。

 

「……な、なんだ、あの空は……。……あんなに美しい輝き、見たことがない……」

 

 泥だらけの王都で、かつて私を捨てた実家の父と、私を無能と嘲笑った元婚約者の王子が、空を見上げて呆然と立ち尽くしていました。

 彼らがかつて愛でていた「偽物の聖女」の光など、今空で爆発しているエルシア様の輝きに比べれば、溝鼠の火にも劣る。

 

「あ、あれは……エルシア……なのか? ……馬鹿な、あんな……神々しいまでの存在を、俺たちは……」

 

 王子が膝をつき、嗚咽を漏らしました。

 彼らは今、ようやく理解したのです。

 自分たちが捨てたのは、ただの娘ではなく、宇宙を創り変える「愛の女神」そのものだったのだと。

 その光に、彼らの瞳は焼かれ、もはやエルシア様の姿を直視することさえ叶いません。

 ただ、一生届かない高みへと登り詰めた彼女の「残り香」を、地べたを這いながら一生後悔し続ける……。それが、彼らに与えられた最高の「慈悲」でした。

 

 光の渦の中心で。

 ギルバート様は、生まれ変わった宇宙の輝きなど一瞥もせず、私だけを狂おしいほどの情熱で抱きしめていました。


「……エルシア。……見たか。宇宙さえも、お前の笑顔に屈服した」


「ええ、陛下。……でも、わたくしが屈服してほしいのは、宇宙ではなく……貴方のその、少し不器用な心だけですわよ?」


「……フン。……とっくに、根源からお前に差し出している」


 漆黒と白銀の魔力が溶け合い、新しい宇宙の「最初の朝」が訪れます。

 

 中和剤としての私は死にました。

 今ここにいるのは、世界で一番強い男に、世界で一番甘く愛される、一人の幸せな女王。

 

 新しい世界の理は、ただ一つ。

 「エルシアが幸せであること」。

 それだけで、この宇宙のすべての星は、永遠に輝き続けることが許されるのです。

皆様、第75話……。お二人の愛が宇宙を塗り替える瞬間を、共に見届けてくださり、心より感謝申し上げますわ!

「中和剤ではなく共鳴者」。

設計された宿命を、自らの意志で「愛を増幅させるためのギフト」に書き換えたエルシア様のお姿……ミオ、執筆しながら涙が止まりませんでしたわ。

そして、どんなに世界が新しくなっても、陛下が見つめているのはエルシア様一人だけ。この「重すぎる一途さ」こそが、全宇宙を救ったバグなのですわね。


アステリア王国の元婚約者たちが、空の輝きを見て自分の愚かさを知るシーン……。

皆様、少しは溜飲を下げていただけましたかしら?

彼らには一生、その「失ったものの大きさ」に震えて眠っていただきましょう。


さて、宇宙の「リフォーム」は完了いたしました。

次話、第76話は『陛下、運命を捕食する』。

新しくなった宇宙の玉座で、陛下がこれまでのすべての苦労を労うような、とろけるほど甘い「戴冠式の夜」を予定しております。


もし「二人の共鳴に鳥肌が立った!」「元婚約者の絶望顔が最高!」と感じていただけましたら、

【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、二人の「永遠の初夜(?)」を応援してくださいませ。


皆様の応援という名の「銀河の煌めき」が、次話、陛下をさらに狂わせるエルシア様の極上の微笑みを支える魔力になりますの。


これからもどうぞよろしくお願いします!

それでは、愛に満ちた新世界の物語、次回をお楽しみに。

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