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泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ
第5部:全宇宙を「私有地(マイホーム)」にした星冠女王、最愛の娘を狙う多次元の侵略者を最強夫の嫉妬という名の天災で根絶やしにしました

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第72話:不速の客と「完成品」の傲慢

「――陛下。パンに塗るクロテッドクリームを、ロザリアが持ってまいりましたわ。……あら?」


 私が銀のスプーンを手に取った瞬間、宮殿の空間が不自然に歪みました。

 封鎖されたはずの宇宙の境界を、まるでバターを焼いたナイフで切るように、強引にこじ開けて現れた影。

 

 純白の法衣に身を包み、背中には幾何学的な光の輪を背負った男が、宙に浮いたまま私たちのダイニングへと降り立ちました。

 彼の周囲には、この宇宙の構成物質とは明らかに異なる、不気味なほど「無機質な静謐」が漂っています。


「不適切な個体、ギルバート。そして欠陥品の安定装置、エルシア。……命じたはずだ。速やかにその偽りの玉座を捨て、回収に応じよと」


 男の言葉は、感情を排した鐘の音のように響きました。

 彼は、私たちが楽しんでいた朝食のテーブルを、汚物でも見るような冷徹な眼差しで見下ろしたのです。


「この廃棄区画(宇宙)で家族の真似事か。……救いようのないバグだな。……我が名は『調整者』。完成された虚無の意思を継ぐ、お前たちの真の主である」


「……陛下。あの方、わたくしたちの朝食を『バグ』と仰いましたわ」


 私は、静かにティーカップを置きました。

 隣に座るギルバート様からは、既に一切の気配が消えています。……いえ、気配が消えたのではありません。

 彼を中心に、周囲の光も、音も、そして次元そのものが、底なしの「怒り」という名の虚無に飲み込まれ、ブラックホールのような重圧となって凝縮されているのです。


「……お前の名は、どうでもいい」


 ギルバート様が、椅子に深く腰掛けたまま、男を射抜くような紅い瞳で見据えました。

 その声は、深淵の底から響く地鳴りのよう。


「……私の妻が、今まさにパンにクリームを塗ろうとしていた。……その一秒を、お前は奪った。……その罪が、全次元を跨いでも償い切れぬほど重いことを、今すぐその薄汚れた魂に刻んでやろう」


「……ハハッ! 壊れた影が、完成品である私に吠えるか! ……消えよ、初期化リブートの光に呑まれてな!」


 調整者が右手を掲げ、まばゆいばかりの白光を放ちました。

 それは「外側」の神々が使う、存在の定義を抹消する究極の権限魔法。

 直撃すれば、神であろうと理であろうと、白紙のデータへと戻されるはずの暴力。


 ――けれど。


 ギルバート様は、指一本動かしませんでした。

 彼はただ、目の前に迫る絶滅の光を、面倒そうに「睨みつけた」だけ。


 バギィィィィィィィィンッ!!


 ダイニングを白く染めようとした光が、ギルバート様の視線に触れた瞬間、悲鳴を上げるようにして砕け散りました。

 砕かれた光の粒子は、彼の漆黒の魔力に絡め取られ、ただの「光る砂」となって足元へ無造作に捨てられます。


「……な、何だと!? ……完成品の理が、……なぜ、……失敗作の眼力だけで……!?」


「……完成、だと? ……お前たちのような、感情も、愛も、飢えも知らぬ薄っぺらな存在を『完成』と呼ぶのなら……。……ああ、確かに私は失敗作だな」


 ギルバート様がゆっくりと立ち上がりました。

 彼が一歩踏み出すたびに、宮殿の重力が狂い、調整者の光の輪がミシミシとひび割れていきます。


「……私は、エルシアという最高の美しさを知ってしまった。……彼女を独占するためなら、全宇宙を飲み干しても足りないという飢えを知ってしまった。……その渇きを知らぬお前など、私にとってはただの、栄養価の低いカスに過ぎない」


 ギルバート様の影が、壁を伝って巨大な「顎」へと姿を変えました。

 調整者は、自分が「上位」であるという確信が、一瞬にして「捕食対象」としての恐怖に塗り替えられるのを、その黄金の仮面の下で味わったことでしょう。


「待て! ……私は外側の特使だ! 私を殺せば、真の軍勢が――」


「……うるさい。朝食の時間は静かにしろと言ったはずだ」


 ギルバート様が、無造作に右手を伸ばしました。

 バシィィィィッ!!

 調整者の首を掴み上げたその手からは、もはや魔力ではなく「純粋な虚無」が溢れ出し、男の存在定義を根源から食らい始めます。


「あ、ガ……ッ!? 魂が……溶ける……!? 私の理が……奪われ……!!」


「……エルシア、お茶が冷めてしまったな。……ロザリア、このゴミの魂を精製して、ティーポットを温めるための『薪』にしろ。……少しは役に立つだろう」


「――御意。最高品質の『魔力燃料』として抽出いたします」


 ロザリアが影から現れ、ギルバート様が投げ出した調整者の残骸(もはや意識のないエネルギーの塊)を、淡々と回収していきました。

 かつての神々さえ震え上がらせた「外側の使者」が、文字通り、お茶を温めるための「燃料」へと成り下がった瞬間でした。


「陛下、そんなに不機嫌にならなくても。……温め直した紅茶も、きっと美味しいですわ」


 私は、彼の荒れ狂う虚無を鎮めるように、その逞しい腕にそっと触れました。

 ギルバート様は、私の手を感じた瞬間に殺気を霧散させ、困ったような、けれど愛おしさに満ちた瞳で私を抱き寄せました。


「……エルシア。……せっかくの朝食を汚された。……詫びと言っては何だが、あいつらが威張っている『外側』とやらを、お前の新しい『お散歩コース』に作り替えてやろう」


「あらあら。……それは随分と、大きなリフォームになりそうですわね」


 宇宙の主の朝食は、終わりました。

 

 ここからは、邪魔者を排除するための、全宇宙を挙げた「お出かけ」の始まり。

 

「……ロザリア、要塞の全エンジンを回せ。……目的地は『外側』の総本山。……私たちの朝食を邪魔した不敬、その次元ごと噛み砕いて分からせてやる」


 大陸要塞『インペリアル・エルシア』が、かつてない咆哮を上げ、未知の領域へと舵を切りました。

第72話、お読みいただきありがとうございました!

「完成品」と威張っていた調整者が、陛下の前では「お茶を温めるための薪」にされてしまう……。

これぞ、わたくしたちが愛してやまない「圧倒的な格差によるざまぁ」の極致ですわね。

ミオ、書いていて陛下の「不機嫌な強さ」に、改めて惚れ直してしまいましたわ。


「自分たちは失敗作(感情があるから)で結構」と言い切る陛下。

エルシア様への愛という名の「バグ」が、既存の理をすべて凌駕する瞬間……。

愛は、宇宙で最も理不尽で、最強の力なのです。


さて、いよいよ舞台は「この宇宙」を飛び出し、「外側」の本拠地へ。

そこには一体、どれほど「お掃除しがいのあるゴミ」たちが待っているのかしら?


少しでも「陛下の薪への加工にスカッとした!」「エルシア様への全肯定が尊すぎる!」と感じていただけましたら、

【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、一家の「外側リフォーム計画」を応援してくださいませ。


皆様の応援という名の「高火力な薪」が、次話、外側の軍勢を焼き尽くす陛下の魔力になりますの。


これからもどうぞよろしくお願いします!

それでは、お散歩が戦争に変わる(一方的な蹂躙)次回をお楽しみに。

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