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泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ
第5部:全宇宙を「私有地(マイホーム)」にした星冠女王、最愛の娘を狙う多次元の侵略者を最強夫の嫉妬という名の天災で根絶やしにしました

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第71話:新秩序の朝、女王の最初の公務は「朝食の献立」でした

カーテンの隙間から差し込む光は、もはやただの太陽光ではありませんでした。

 それは、私の魔力と共鳴し、宝石を砕いたような粒子を孕んで踊る、祝福の輝き。

 かつてアステリア王国の地下牢で、冷たい石床を這う湿った光に怯えていた日々が、遠い前世のことのように感じられます。


「……ん、……エルシア。どこへ行くつもりだ」


 私が微かに身を動かした瞬間、背後から鉄柵よりも強固な、けれど羽毛よりも優しい腕が私の腰を抱き寄せました。

 首筋に押し当てられた熱い吐息と、漆黒の髪の感触。

 ギルバート様は、目覚めたばかりの掠れた声で、私の存在を確かめるように深く、深くその鼻腔に私の香りを吸い込みます。


「陛下、おはようございます。……もう朝ですわ。女王としての公務が待っておりますの」


「公務だと? ……全宇宙の時間は、私が止めておいた。……お前が望まぬ限り、この寝室に夜明けは来ん。……もっと私の腕の中にいろ。これは皇帝としての、いえ、夫としての命令だ」


 彼はそう言って、私の肩口に独占欲の滲む甘い痕を刻みつけました。

 あらあら、まあまあ。……宇宙の主になっても、この方の「重すぎる愛」だけは、一向に管理のしようがありませんわね。


 結局、私たちが「朝食の献立を決める」という重大な最初の公務のために、寝室の扉を開けたのは、太陽が中天を過ぎた頃のことでした。


 白銀と漆黒の宝石宮殿の回廊を、ギルバート様にエスコートされて歩きます。

 窓の外に広がる広大な「星冠庭園」。そこでは、かつて全宇宙の運命を司っていた最高管理者たちが、汗を流して(といっても神に汗などありませんが)泥まみれになりながら雑草を毟っていました。


「……あら、最高管理者様。本日の進捗はいかがかしら?」


 私がバルコニーから声をかけると、最高位の管理官――今は「筆頭庭師」に降格された彼が、ガタガタと震えながら平伏しました。


『は、はい……エルシア女王陛下……! 宇宙の負債である雑草は、すべて私の手で……この通りに! ど、どうか本日の食卓に、私が精魂込めて育てた「因果の苺」を添えていただければ幸いです……!』


 かつての冷徹な威厳はどこへやら。彼は今や、私の食卓を彩ることだけを生きがいにしている、哀れな下働きです。


「フン。ゴミの育てた果実など、エルシアの口に入れる価値はない。……ロザリア、それをセレスの遊び相手(魔獣)の餌にしておけ」


 ギルバート様は一瞥もくれず、私をダイニングの特等席――銀河を編み込んだ特注のソファへと座らせました。


「さて、エルシア。本日の献立だが。……隣国の王が献上してきたという、千年に一度しか咲かぬ花の蜜を使ったオムレツはどうだ? ……あるいは、私が直接、銀河の果てまで行って『時を止める魚』を捕らえてきてもいいが」


「陛下、そんな大掛かりなことは必要ありませんわ。……わたくしは、陛下と一緒に温かいパンを食べられれば、それだけで幸せですの」


 私が微笑むと、ギルバート様は苦虫を噛み潰したような、けれど最高に幸せそうな顔で私の手を握り締めました。


「……お前という女は。……宇宙を手に入れてもなお、私という男だけを欲しがる。……その無欲さが、私をどれほど狂わせるか分かっているのか?」


 宇宙の王座をソファに変え、神々を庭師に変えた。

 けれど、私たちが欲しかったのは、そんな権威ではありません。

 ただ、誰にも邪魔されず、こうして穏やかに朝の光を浴びながら、愛する人と食卓を囲む時間。……それだけだったのです。


 しかし、その宝石のような静寂を破るように、宮殿の執事長となったロザリアが、銀のトレイに載った一通の「手紙」を携えて現れました。


「――陛下、女王陛下。……全宇宙を閉鎖したはずの『外壁』に、穴が開きました。……そこから、このようなものが」


 手紙は、この宇宙の構成物質ではない、透き通った未知の結晶体で作られていました。

 表面に刻まれているのは、黄金の紋章。


『――不適切なデータと、その中和剤へ。……偽物の玉座での「ごっこ遊び」は楽しいか? ……真の頂点より、帰還を命ずる』


 手紙を読んだ瞬間、ギルバート様の瞳から光が消え、漆黒の虚無がダイニングを飲み込もうと膨れ上がりました。


「……誰だ、私のエルシアの朝食を邪魔する不届き者は。……全宇宙の掃除は終わったと思っていたが……。……どうやら、掃除機をかけるべき場所が、もう一つ残っていたようだな」


 穏やかな朝食の時間は、一瞬にして「新たな侵略」の予感に染まりました。

 けれど、私は恐れません。

 ギルバート様の隣で、私は女王として優雅に紅茶を啜り、微笑みました。


「……陛下。お出かけの前に、まずはこの美味しいパンをいただいてしまいましょう? ……腹が減っては、宇宙の掃除も捗りませんもの」

第71話、お読みいただきありがとうございました!

「宇宙を寝室にする」という前回の暴挙を経て、ようやく迎えた新世界の朝。

陛下との甘いイチャつきから始まり、最高管理者が庭師として必死に苺を差し出す「格の違いすぎるざまぁ」……。

ミオ、書いていてこれほど心が満たされる光景はございませんわ!


宇宙の主になっても、エルシア様の望みは「温かいパンを一緒に食べること」。

この謙虚さと、それを見つめる陛下の「狂愛」のコントラストこそが、本作の真骨頂ですわね。


しかし、現れた謎の結晶の手紙。

「ごっこ遊び」と二人の関係を嘲笑う不届きな『真の頂点』。

せっかくの蜜月を邪魔された陛下の不機嫌は、今や宇宙の枠組みさえも食らい尽くさんばかりですわ!


少しでも「朝の陛下の甘えっぷりにキュンとした!」「管理者の苺が餌になるシーンにスカッとした!」と感じていただけましたら、

【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、一家の「最終決戦」を応援してくださいませ。


皆様の応援という名の「朝食のバター」が、次話、不届きな使者を物理的に握りつぶす陛下の破壊力になりますの。


これからもどうぞよろしくお願いします!

それでは、お散歩の続きを始める次回をお楽しみに。

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