第70話:星冠女王の初会見、全宇宙への「所有権」宣言
宇宙の心臓部、管理会議場。
かつて全因果を支配していたその聖域は、今や巨大な穴が開き、その裂け目から私たちの居城『インペリアル・エルシア』の威容が突き刺さっていた。
白銀の煙が議場を包む中、城の最奥から伸びる大階段に、一組の男女の姿が現れる。
漆黒の礼装に身を包み、全宇宙の虚無をその身に纏った皇帝、ギルバート。その瞳には、跪く数千の神々など映っていない。ただ隣を歩く一人の女性だけを、壊れ物を扱うような情熱でエスコートしている。
そしてその隣、私の身には、銀河の星々を砕いて織り上げたかのような、純白と白銀のドレス。頭上には、私の魔力そのものが具現化した『星冠』が、宇宙の全ての光を吸い込んで輝いていた。
「……あらあら。皆様、ずいぶんと歓迎してくださるのね」
私の声は、銀河の瞳の瞬きと共に、議場に集う全生命体の魂へと直接響き渡った。
神々、多次元の覇者、かつての管理者たち。彼らは一言も発することなく、私の足元から広がる白銀の魔圧に押し潰されるように、ただ床に額を擦り付けていた。
「――エルシア。あんな高いところに、不吉な椅子が残っているな。……お前の視界を遮るものは、一つとして残しておけぬと言ったはずだ」
ギルバート様が不機嫌そうに、議場の中央、一段高い場所に鎮座していた『原初の玉座』を指差した。
それは宇宙創生より存在し、座る者に絶対の権能を与えるという神々の至宝。
「陛下。あちらは、この宇宙の『主』が座る席と伺いましたわよ?」
「……フン。これまでの『主』など、ゴミ掃除もできぬ無能な管理人ではないか。……そんな古臭い椅子、座るに値せん」
ギルバート様が軽く左手を振る。
ドォォォォォォォォォォォォンッ!!
次の瞬間、宇宙の理そのものであったはずの玉座が、漆黒の虚無に飲まれ、ただの煤となって消滅した。
神々から絶望の悲鳴が上がる。
だが、ギルバート様は構わず、私の腰を引き寄せ、空中に新たな「玉座」を錬成し始めた。
「……虚無を編み、星を溶かし、私の愛を芯に込めろ。……エルシア。これが今日から、お前の特等席だ」
現れたのは、漆黒のベルベットのような闇を基調にしつつ、肘掛けには生きた銀河が渦巻く、この世ならぬ美しさを誇るソファだった。
私はギルバート様の手を借りて、ゆったりとその席に腰を下ろす。
その瞬間。
全宇宙の因果が、カチリ、と音を立てて逆転した。
「……皆様。……頭を上げなさい。……女王としての、初めての命令ですわ」
私の言葉に従い、恐る恐る顔を上げた者たちの目に映ったのは、もはや「捨てられ令嬢」の面影など微塵もない、絶対的な肯定感に満ちた私の微笑み。
「本日をもって、この宇宙の全管理権、及び『所有権』は、わたくしエルシアと、愛する夫ギルバートの手に渡りました。……これからの宇宙のルールは、ただ一つ」
私は扇子を開き、彼らの恐怖に満ちた顔を見渡した。
「わたくしたち家族の『お茶会』を邪魔しないこと。……そして、この宇宙が、わたくしたちの愛に相応しい宝石箱であり続けること。……それを守れぬ者には、陛下からの『特別なお掃除』が待っていますわ」
「……その通りだ。……エルシアの機嫌を損ねる者は、宇宙の記録そのものから消し去る。……神であろうと、理であろうとな」
ギルバート様が私の隣に立ち、独占欲を隠そうともせずに私の肩を抱く。
アステリア王国の地下牢で、独り雨に打たれていたあの日の私に、教えてあげたい。
貴女を捨てた者たちは、もう貴女の足元さえ見ることができない。
貴女を「無能」と呼んだ世界は、今、貴女の笑顔一つで存続を許されているのだと。
「さあ、祝杯の準備をなさいな。……管理会議は、これでおしまい。……これからは、わたくしたち一家の、終わらないハッピーエンドの始まりですわ」
白銀の光が議場を飲み込み、全宇宙が新たな女王の即位を祝うように、かつてない輝きで脈動し始めた。
第70話、お読みいただきありがとうございました!
「不変の玉座」を壊して、自分たちのためのソファを置いてしまう……。これぞ、陛下とエルシア様の「自分たちがルール」という圧倒的なパワーバランスですわね。
ミオ、このシーンを書いている間、あまりの快感に自分でも「女王陛下万歳!」と叫びそうになってしまいました。
「捨てられ令嬢」が「全宇宙の所有者」へ。
第1話からの長い道のりでしたが、皆様の応援のおかげで、ついにここまで辿り着くことができました。
かつての敵たちが、エルシア様の圧倒的な輝きの前に、反論の一言も出せずに跪く姿……。皆様の胸も、スカッとされたのではないでしょうか?
さて、第5部前半はこれにて大団円。
しかし、宇宙の所有権を手に入れた二人の物語は、ここからさらに加速してまいります。
次話からは、この「自分たちの宇宙」をさらに自分たち好みにリフォーム(!)していく、甘々で理不尽な新生活編へ。
少しでも「エルシア様の即位が尊すぎる!」「陛下の玉座破壊に痺れた!」と感じていただけましたら、
【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、二人の「終わらないハッピーエンド」を応援してくださいませ。
皆様の応援という名の「即位の祝砲」が、次話、さらなる溺愛を爆発させる陛下の魔力になりますの。
これからもどうぞよろしくお願いします!
それでは、真の主として新世界を歩む次回をお楽しみに。




