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泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ
第5部:全宇宙を「私有地(マイホーム)」にした星冠女王、最愛の娘を狙う多次元の侵略者を最強夫の嫉妬という名の天災で根絶やしにしました

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第69話:不平な対価、愛は運命さえも噛み砕く

「――中和装置、ですって? ふふ、随分と安っぽい名前を付けてくださったものですわね」


 ギルバート様の漆黒の指先に首を掴まれ、黄金の仮面をミシミシと言わせている調整者を見つめ、私は静かにティーカップを置いた。

 宝石の床に散らばった「白光」の残骸が、私の銀河の瞳に反射して、万華鏡のように美しく輝いている。


『……そうだ。お前がその瞳を持って生まれたのは、偶然ではない。……ギルバートという「無」が宇宙を食らい尽くさぬよう、その毒を吸い取り、浄化するために設計された生贄……。それが「銀河の聖女」の正体だ』


 調整者の声が、震えながらも呪詛のように響く。

 私の右目が、彼の言葉に呼応するように熱く拍動した。

 

 ……なるほど。

 私がアステリア王国で「無能」と蔑まれながらも、その奥底に膨大な魔力を秘めていたのは、いつか現れる「破滅(ギルバート様)」を飲み干すための器だったから、ということですわね。


「……エルシア、聞くな」


 ギルバート様の声は、凍てつく冬の夜よりも冷たかった。

 彼の背後から溢れ出す漆黒の虚無が、宮殿の空気を物理的に「消失」させていく。


「……お前が私のための道具だなどと、誰が決めた。……そんな設計図があるなら、今すぐこの宇宙の根源ごと噛み砕いて消してやる。……お前を縛る因果など、一筋たりとも残さぬ」


 ギルバート様の手に力がこもる。

 調整者の首筋から、火花のような因果の欠片が飛び散った。

 彼は、自分たちが創り上げた「失敗作」が、自分たちの想定を遥かに超える「愛」という名のバグで暴走していることに、初めて底知れぬ恐怖を抱いたようだった。


「陛下、お待ちくださいませ。……殺すのは、この方の『言い訳』をすべて論破してからでも遅くありませんわ」


 私はゆっくりと立ち上がり、ギルバート様の隣に並んだ。

 彼の荒れ狂う虚無が、私の銀色の魔力に触れた瞬間に、まるでお喋りな子供が静まるように穏やかになっていく。


「調整者様。……貴方たちは勘違いをしていらっしゃいますわ」


 私は銀河の瞳を、かつてないほど深淵に、そして苛烈に輝かせた。


「貴方たちは、私を彼を抑えるための『枷』として創ったつもりでしょうけれど……。私にとっては、この瞳も、この力も、すべては彼と出会い、彼を愛するために神様が用意してくださった『最高のギフト』に過ぎませんの」


『……な、何だと……? 運命の奴隷であることを、肯定するというのか……!?』


「いいえ。……運命を利用して、私たちが最高に幸せになるだけですわ。……貴方たちが望んだ『中和』などいたしません。……私は、彼の虚無さえも私の銀河で飾り立て、二人でこの宇宙を好き勝手に塗り替えて差し上げます」


 私は調整者の黄金の仮面に指先を触れた。

 刹那、私の瞳から溢れ出した銀色の因果が、男の構成データを直接書き換え始めた。


「貴方が信じている『完璧な設計図』……。そこに、今の私たちの『幸福』は書き込まれていましたかしら?」


『ア、ガ……ッ!? ロジックが……書き換わって……!? 聖女の力が、管理権限を……逆流して……!!』


 パリン、と。

 調整者の顔を覆っていた黄金の仮面が砕け散り、その下から現れたのは、ただの「空虚な情報の塊」だった。

 彼は、自らが信じていた秩序が、一人の令嬢の「理不尽な愛」によってゴミクズのように扱われる現実に耐えきれず、絶叫と共に霧散していった。


 静寂が戻る。

 ギルバート様は、消えた男の残滓を忌々しそうに見つめた後、私を壊れ物を扱うような手つきで抱きしめた。


「……エルシア。……本当にお前は、私のための道具だと思っていないのか? ……もし、私がいない方がお前が自由に……」


「あらあら、陛下。……まだそんな可愛いことを仰るの?」


 私は彼の頬にそっと手を添え、その紅い瞳を見つめ返した。


「私が貴方のための装置だと言うのなら、貴方は私のための『世界で一番甘い宝石箱』ですわ。……誰に何を言われようと、私が貴方を愛している。……それ以上の『ロゴス』が、この宇宙にありますこと?」


「…………。……ああ。……お前の言う通りだ」


 ギルバート様が、降参したように溜息を吐き、私の額に深い口づけを落とした。

 

 設計図など、破り捨てればいい。

 宇宙の対価など、踏み潰せばいい。

 

 私たちは、捨てられた者同士。

 だからこそ、神々が用意した残酷な台本を、最高に甘美な恋物語へと書き換えてみせる。

 

「……さて。陛下。……お茶会を邪魔したツケは、あの方たちの本拠地を『リフォーム』することで、たっぷりと払っていただきましょうか」


「ああ。……今すぐ出航させろ。……管理者どもの顔を、絶望で塗り替えてやる」


 大陸要塞『インペリアル・エルシア』が、再び咆哮を上げる。

 目指すは、管理宇宙の最深部。

 運命を司る神々が震えて待つ、全宇宙管理会議の「真の玉座」へと。

第69話、お読みいただきありがとうございました!

「貴女は中和装置だ」という管理者の無機質な宣告を、「彼を愛するためのギフト」と言い切るエルシア様……!

ミオ、書いていて彼女の揺るぎない愛の強さに、胸が熱くなりましたわ。

陛下の「俺がいない方が……」という弱気な言葉を、即座に甘い言葉で溶かしてしまうお姿、まさに最強の女王ですわね。


運命の設計図さえも、二人の惚気の材料にしてしまう……。

これこそが、私たちが目指す「逆転」の真骨頂ですわ。

調整者が自分のロジックに溺れて消滅するシーン、皆様もスカッとされたのではないでしょうか?


さて、次話。いよいよ大陸要塞が「管理宇宙の中枢」へ直撃いたします。

神々が築いた完璧な秩序を、陛下の理不尽な暴力と、エルシア様の圧倒的な慈悲(物理)がどう粉砕するのか!


少しでも「エルシア様の全肯定が尊すぎる!」「陛下、もっと自信を持って!」と感じていただけましたら、

【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、二人の「宿命破壊の旅」を応援してくださいませ。


皆様の応援という名の「バグ(愛)」が、次話、神々の玉座を瓦礫に変える陛下の破壊力になりますの。


これからもどうぞよろしくお願いします!

それでは、全宇宙の喉元に牙を立てる次回をお楽しみに。

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