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泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ
第5部:全宇宙を「私有地(マイホーム)」にした星冠女王、最愛の娘を狙う多次元の侵略者を最強夫の嫉妬という名の天災で根絶やしにしました

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第68話:静寂を破るノックの音。陛下の「不機嫌」は全次元を震わせる

カツン、カツン、と。

 全宇宙を漆黒の虚無で塗りつぶし、光子一つの侵入さえ許さないはずの「愛の檻」に、その音は確かに響き渡った。


 私はギルバート様の胸の中で、銀河の瞳を微かに開く。

 そこには、次元の壁を透過するようにして歩いてくる、一人の「男」の姿があった。

 彼は白銀の長衣を纏い、顔には感情を削ぎ落としたような黄金の仮面を付けている。その周囲には、この宇宙の理とは根本的に異なる、透き通るような不気味な「静謐」が漂っていた。


「……あらあら。陛下、お客様が玄関を通らずにいらっしゃいましたわよ」


 私はあえて穏やかな声を出す。

 けれど、私を抱きしめるギルバート様の腕には、岩盤を砕くほどの力がこもっていた。

 彼の背後から立ち昇る漆黒の魔力は、もはや殺意という言葉では生ぬるい。それは、自分たちの聖域を汚されたことへの、絶対的な「拒絶」の具現。


「……不快だ。耳障りな音を立てるなと言ったはずだ、ロザリア」


「――申し訳ございません、陛下。私の結界を、あの者は『存在しないもの』として通り抜けました。……今すぐ、魂ごと噛み砕いて参ります」


 影の中からロザリアが姿を現し、短剣を構える。

 だが、黄金の仮面の男は、止まることなく玉座の間へと足を踏み入れた。


『――止まれ、亡霊の末裔よ。私は「外側」の調整者。……この廃棄区画の掃除が終わったと聞き、データの最終回収に赴いた』


 男の声は、感情を排した鐘の音のように議場に響く。

 彼は私を、そして私を抱くギルバート様を、まるで試験管の中の虫でも見るような冷徹な眼差しで見下ろした。


『不適切なデータ、ギルバート。……お前がこの泥溜めで「王」の真似事をしているとはな。……お前はかつて、我ら「真なる理」が造り出し、制御不能として虚無に捨てた、ただの「壊れた影」に過ぎぬというのに』


「……壊れた影、ですって?」


 私はギルバート様の胸から顔を上げ、男を真っ直ぐに見据えた。

 銀河の瞳が、男の構成要素を解析する。

 ……ああ、分かりましたわ。

 この方は、ギルバート様と同じ「虚無」を基盤にしながら、それを「秩序」という鎖で無理やり縛り付けた、ひどく窮屈で退屈な存在。


「陛下。……この方、陛下のことを『失敗作』だなんて仰っていますわよ。……ふふ、なんて審美眼のない方かしら」


「……エルシア。お前が気にする必要はない。……ゴミが何を喚こうが、ゴミの言葉に価値はないからな」


 ギルバート様がゆっくりと立ち上がる。

 彼が動くだけで、宮殿の重力が悲鳴を上げ、宝石の床が粉々に砕け散った。

 彼は私を玉座のソファに優しく座らせると、一歩、侵入者へと歩み寄る。


『――無駄な抵抗だ。お前の「虚無」は、我らが与えた欠陥品。……今こそ、その力を回収し、この宇宙ごと初期化リブートしてやろう』


 仮面の男が右手を掲げると、そこから「白の虚無」が放たれた。

 それは物質も魂も、すべてを白紙に戻す究極の消去プログラム。

 だが。


 ギルバート様は、その光を避けることさえしなかった。

 彼はただ、迫り来る白光を、煩わしい虫でも払うように素手で掴み取った。


 バギィィィィィィィィンッ!!


 次元を初期化するはずの力が、彼の拳の中で、まるでもろい粘土細工のように粉砕される。

 砕け散った白光の破片が、ギルバート様の足元で黒い炎に飲み込まれ、エネルギーへと変換されていく。


『……なっ!? 我らの理を、物理的に……噛み砕いたというのか!?』


「……お茶会の最中だと言ったはずだ。……お前のその汚い『白』は、エルシアの銀髪に似合わない」


 ギルバート様が男の首を、音速を超えた速度で掴み上げた。

 黄金の仮面が、彼の殺気だけでミシミシとひび割れていく。


「お前たちが私を捨てたのか、それとも私が飽きて出てきたのかなど、どうでもいい。……ただ一つ確かなのは、今の私は、エルシアという女王の所有物だということだ」


 ギルバート様は、恐怖に震え始めた「外側の使者」の耳元で、死神よりも冷たい声で囁いた。


「……私の愛する女が、お前を『審美眼がない』と言った。……その罪、全次元を跨いでも償い切れぬ絶望と共に、私の腹の中で永遠に味わうがいい」


 ギルバート様の影が、巨大な顎となって男を飲み込もうとした――その瞬間。


『――待て! ……お前は、自分がなぜ「虚無」として生まれたか、その対となる「対価」が何であったかを知らぬのか!? ……エルシアという娘が、なぜ「銀河の瞳」を持って生まれたか……その理由を!』


 男の叫びと共に、私の右目が熱く拍動する。

 宇宙の「外側」からもたらされた、不吉な真実の予感。

 最強の皇帝と、星を束ねる女王。二人の「完璧な世界」に、ついに逃れられぬ根源の因縁が牙を剥こうとしていた。

第68話、お読みいただきありがとうございました!

陛下の完璧な「入室禁止」を突破してきた黄金の仮面の男。

「外側」の調整者と名乗る彼が放った衝撃の言葉……陛下は「制御不能な失敗作として捨てられた虚無」だった!?

ミオ、書いていて陛下の「不機嫌な迎撃」の格好良さに、自分でお茶をこぼしてしまいましたわ!


「調整」だの「初期化」だのと高尚な言葉を並べる敵を、「お茶会の邪魔だ」と物理的に握りつぶす陛下の理不尽な愛。

これぞ、私たちが愛してやまない「なろうの金字塔」の姿ですわね。


しかし、ラストに放たれた「エルシア様が銀河の瞳を持って生まれた理由」。

二人の出会いは、偶然ではなく、遥か「外側」で仕組まれた壮大な対価だったのでしょうか……?


少しでも「陛下の不機嫌な強さが最高!」「エルシア様の『陛下は最高傑作』という全肯定に痺れる!」と感じていただけましたら、

【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、二人の「宿命への反逆」を応援してくださいませ。


皆様の応援という名の「真実の灯火」が、次話、外側の神々さえも戦慄させる陛下のさらなる暴走(溺愛)を引き出す魔力になりますの。


これからもどうぞよろしくお願いします!

それでは、二人の存在の根源に迫る次回をお楽しみに。

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