第63話:不法占拠者の逆襲、会議場へは「城ごと」乗り込む
「――陛下。見えてまいりましたわ。あちらが、この宇宙の『頭脳』とされる場所ですのね」
大陸要塞『インペリアル・エルシア』の玉座の間。私は、ギルバート様の逞しい膝の上に座り、展望クリスタルの向こうに浮かぶ巨大な建造物を見据えた。
それは、幾千もの銀河を繋ぎ合わせたような、目も眩むほど巨大な白銀の円環。全宇宙の運命を司る『管理会議場』。
その周囲には、他宇宙の覇者たちが誇る数兆の艦隊が、蟻の這い出る隙もないほどに展開し、幾重もの次元障壁を張り巡らせていた。
「フン。ゴミの分際で、随分と立派な巣を作ったものだ。……エルシア、あそこがお前の新しい『別荘』として相応しいか、今から検分してやろう」
ギルバート様は私の腰を抱き寄せ、その独占欲に満ちた熱い吐息を耳元に落とした。
彼の指先が私の銀色の髪を愛おしげに梳く。外界では全宇宙を滅ぼしかねない軍勢が待ち構えているというのに、この方の瞳には、私という存在しか映っていない。
『――警告! 不法占拠要塞に告ぐ! 直ちに停止せよ! これ以上の侵入は、全宇宙への宣戦布告と見な――』
虚空から響く管理官たちの悲鳴じみた通信。
だが、ギルバート様はそれを「蝿の羽音」とさえ見なさなかった。
「……陛下。あの方たち、止まれと仰っていますわ。……どういたしましょう?」
「止まる? 冗談を。……エルシア、お前のお茶が冷める前に、入り口を作ってやる。……ロザリア、全速だ。ブレーキなど、次元のゴミ箱に捨てておけ」
ドォォォォォォォォォォォォンッ!!
ギルバート様の意志を受け、要塞が咆哮を上げた。
加速。物理法則を無視したその突進は、衝突した敵艦隊を「破壊」するのではなく、その存在そのものを「虚無」へと変換し、ただの背景へと塗り替えていく。
「あら、綺麗ですわ! パパ、お空がキラキラしています!」
セレスが私の足元で、窓の外に弾ける次元の火花を見て手を叩いた。
数兆の艦隊が放つ一斉射撃。けれど、そのすべては私の『星冠女王』としての権能に触れた瞬間、色とりどりの星屑へと変わり、要塞を彩る華やかなパレードの演出へと書き換えられた。
『――バカな! 第零階層の防衛線が……一瞬で、ただのイルミネーションに……!?』
絶望に染まる通信を背に、私たちは会議場の中心部へと迫る。
白銀の円環――その中心にある『聖域の門』。神々が数億年をかけて築いた、絶対に破れぬはずの扉。
「……入り口が狭いな。私のエルシアが通るには、少々窮屈すぎる」
ギルバート様が、面倒そうに右手を軽く横に振った。
ただそれだけの動作で、宇宙の根源的な力が爆発する。
バギィィィィィィィィィィィィィンッ!!
会議場の外壁が、そして「聖域」そのものが、巨大なハンマーで叩き割られた硝子のように粉々に砕け散った。
警報が鳴り響き、居並ぶ神々が悲鳴を上げて逃げ惑う中、大陸サイズの城がその「半分ほどを物理的に削り取りながら」、会議場の最深部――『原初の議場』へと無造作に突き刺さった。
立ち込める白銀の霧と、砕け散った因果の破片。
静まり返った議場の中心に、『インペリアル・エルシア』の巨大な扉が、重厚な音を立てて開く。
「……お待たせいたしましたわ、皆様」
私はギルバート様にエコートされ、ゆっくりとタラップを降りた。
私の瞳――『銀河の瞳』が放つ輝きに、数千の神々が目を焼き、その場に跪く。
かつて泥を啜れと命じた者たちが、今は私のドレスの裾が触れることさえ畏れ、震えている。
「……さて。……誰が私の妻を『バグ』と呼んだ? ……名乗り出ろ。お前たちの席を、今すぐ私の虚無で埋め尽くしてやろう」
ギルバート様の漆黒の気配が議場を支配し、神々の座る椅子が次々と恐怖で凍りついていく。
会議、ですって?
いいえ、これは一方的な「お掃除」と、新たな女王への「拝謁」の時間ですわ。
皆様、第63話いかがでしたでしょうか!
「入り口が狭いから会議場を半分消し飛ばす」……。
これこそが、全宇宙を私有地化した陛下の、究極に理不尽でエレガントな「入室」ですわね。
神々が必死に守っていた聖域が、ただの「窮屈なドア」扱いされるシーン……ミオ、書いていて爽快感で扇子を落としそうになりましたわ。
エルシア様も、エスコートされて登場するそのお姿は、もはや聖女を超えて「宇宙そのものの化身」。
跪く神々の群れを、慈悲深い(けれど冷徹な)瞳で見下ろすそのお姿、まさに女王の戴冠に相応しい光景です。
さて、粉砕された会議場で、陛下は一体何をするおつもりか。
「お前たちの席を虚無で埋める」という宣言……次話、神々の座席争奪戦が始まる予感がいたしますわね。
少しでも「陛下の不敬すぎる突撃にスカッとした!」「神々が震え上がる姿が最高!」と感じていただけましたら、
【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、一家の「会議場リフォーム」を応援してくださいませ。
皆様の応援という名の「招待状」が、次話、神々の玉座を一家のソファーに変えてしまう陛下の暴挙を支える魔力になりますの。
これからもどうぞよろしくお願いします!
それでは、神々の頂点で最高に甘やかなお茶会を始める次回をお楽しみに。




