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泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ
第5部:全宇宙を「私有地(マイホーム)」にした星冠女王、最愛の娘を狙う多次元の侵略者を最強夫の嫉妬という名の天災で根絶やしにしました

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第60話:星冠女王の戴冠式、全宇宙がひれ伏す日

足元に広がるのは、ひどく冷たく、懐かしい泥の感触だった。

 『インペリアル・エルシア』のタラップを降りた私の目の前に広がるのは、上位階層の洗練された純白の世界ではない。

 アステリア王国の地下牢の裏、私がかつて独りで泣き崩れていた、あの汚れた庭と全く同じ光景。


 降りしきる雨は、魔力を吸い取る呪いの雨。

 漂う霧は、全宇宙から排出された「負債バグ」の澱み。


「……ここが、私の墓標。……いえ、この宇宙を美しく保つための、『掃除箱』の底だったのですわね」


 私が一歩踏み出すたびに、泥が私の白銀のドレスを汚そうと絡みついてくる。

 かつての私なら、この泥に絶望し、再び蹲っていたでしょう。

 けれど。


「……フン。不快極まりない。……エルシア、止まれ。お前の足が汚れる。……こんな塵溜め、今すぐ私の虚無で、原子の一つも残さず消し去ってくれる」


 隣を歩くギルバート様が、紅い瞳に狂気的な殺意を宿して右手を掲げた。

 彼から溢れ出す漆黒の魔力が、周囲の泥を物理的に押し潰し、地面ごと削り取ろうとする。


「いいえ、陛下。……止めてくださいませ。……これは、私のものですわ」


 私はギルバート様の手を優しく制し、その泥の庭の中心へと歩み寄った。

 すると、虚空から無数の黄金の鎖が飛び出し、私の手足を縛り上げようと襲いかかってきた。


『――不法占拠者。……生贄フィルターノ位置ヘ戻レ。……負債ノ吸収ハ、……汝ノ存在理由ナリ』


 空間に響くのは、感情のない「システム」の声。

 鎖は私の魂に直接干渉し、私を再び「無能の令嬢」へと貶めようとする。


「――お前こそ、誰に口を聞いている」


 ギルバート様が、私に触れようとした黄金の鎖を素手で掴み取った。

 バキィィィィィィィンッ!!

 上位階層の絶対的な拘束具が、彼の握力だけで、まるで安物のガラスのように砕け散る。


「私のエルシアを、誰が、何の権利で縛るというのだ? ……宇宙の理だと? ……笑わせるな。私が愛しているのはエルシアという『個』だ。システムの一部ではない!」


 ギルバート様が鎖の破片を虚空へ投げ捨てると、砕かれた黄金は彼の殺気によって黒く染まり、そのまま消滅した。

 私は彼に守られながら、庭園の最も深く、汚れの溜まった場所で立ち止まった。


「……皆様。……私を捨て、私にすべての汚れを押し付け、静かに美しく暮らしてきた上位の皆様。……その『計算』、私が今日、ここで書き換えさせていただきますわ」


 私は銀河の瞳を、かつてないほど激しく、美しく輝かせた。

 私の指先から溢れ出したのは、破壊の光ではない。

 すべてを包み込み、再定義する「女王の慈悲」。


「泥を啜れと言うのなら、啜りましょう。……ただし、私はこの泥を、『星の輝き』へと精製リフォームいたしますわ!」


 ドォォォォォォォォォォンッ!!


 私を中心にして、銀色の波動が全方位へと爆発的に広がった。

 絡みついていた泥が、私の光に触れた瞬間に結晶化し、純白のダイヤモンドへと変わる。

 呪いの雨は甘い香りのする星屑へと変わり、不浄の霧は、幾億もの銀河が瞬くオーロラへと姿を変えた。


 零地点――『掃除箱の底』が、一瞬にして全宇宙で最も美しい、白銀の宮殿へと上書きされていく。


「……ああ……。綺麗ですわ……! お母様、キラキラがいっぱいですわ!」


 セレスがタラップを駆け下り、宝石と化した地面の上でくるくると踊り始めた。

 彼女の紫の瞳が、再構築された世界の光を反射して、神々しく輝く。


「……フン。……泥を啜るどころか、泥を宝石の山に変えたか。……さすがは私の妻だ」


 ギルバート様が私の腰を引き寄せ、誇らしげに口角を上げた。

 

 システムが悲鳴を上げる。

 「負債」を「価値」に変え、「生贄」を「女王」へと反転させたこの暴挙は、上位階層の全ロジックを崩壊させたのだ。

 私は空を見上げ、その向こう側に潜む管理者たちへ、不敵な笑みを浮かべて宣告した。


「本日をもって、この零地点は、私の『玉座』となります。……文句があるなら、直接いらして? ……陛下と一緒に、貴方たちの『完璧な管理』を、私の『理不尽な溺愛』で塗りつぶして差し上げますわ」


 その瞬間、宇宙の外壁を揺るがすほどの巨大な「鐘の音」が響き渡った。

 それは敗北を認めた合図ではない。

 さらに深い深淵――【最高管理者グランド・マスター】が、ついにその重い腰を上げた音。


「……陛下。……お客様が、お見えのようですわよ」


「ああ。……今度こそ、その根源ごと噛み砕いてくれる」


 星の冠を戴き、泥を宝石に変えた女王の戴冠式。

 それは、管理される宇宙の終わりと、愛がすべてを統べる「一家の宇宙」の始まりを告げる合図だった。

皆様、第5部前半クライマックス、第60話を見届けてくださり、心より感謝申し上げますわ!

「宇宙の負債を吸う生贄」というあまりにも残酷な設定を、エルシア様が「泥を宝石に変える」という圧倒的な魔力で粉砕する……。

ミオ、このシーンを書いている最中、あまりの爽快感に扇子を振り回してしまいました!


ギルバート様も、もはや鎖を素手で引きちぎるのが当たり前になっておりますわね。

「お前を愛しているのはシステムの一部としてではない」という台詞、全宇宙の女性が震える最高の愛の言葉ですわ。


泥を宝石に変え、零地点を自分の玉座にしてしまったエルシア女王。

しかし、その暴挙がついに「最高管理者」という、これまでの事務局とは次元の違う存在を引きずり出しました。


少しでも「エルシア女王の即位が美しすぎる!」「陛下の守護が頼もしすぎて惚れる!」と感じていただけましたら、

【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、一家の「理不尽な新秩序」を応援してくださいませ。


皆様の応援という名の「戴冠の祝福」が、次話、最高管理者を戦慄させる二人のさらなるコンビネーションを引き出す魔力になりますの。


これからもどうぞよろしくお願いします!

それでは、真の支配者と対峙する次回をお楽しみに。

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