表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ
第5部:全宇宙を「私有地(マイホーム)」にした星冠女王、最愛の娘を狙う多次元の侵略者を最強夫の嫉妬という名の天災で根絶やしにしました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/60

第55話:聖域への闖入者、他宇宙の王子の不吉な求愛

「――査察、ですか。ご苦労様ですこと」


 私はセレスを優しくルチアに預け、一歩前へ出た。

 背後の噴水では、先ほどセレスに「だいっきらい」と言われたギルバート様が、びしょ濡れのまま石像のように動かなくなっている。周囲には彼から漏れ出した漆黒の絶望がインクのように広がり、庭園の水を真っ黒に染めていたが……今は無視するしかない。


 私の目の前に立つ、銀色のスーツを纏った男――査察官ザフキエルは、感情の欠片もない無機質な瞳で私を見据えた。


「第一階層、占有者エルシア。現行の宇宙管理法に基づき、当区画の運用実態を調査する。……結論から述べよう。現名義人による管理は、極めて不安定かつ情緒に依拠しており、全宇宙の資産価値を損なう『バグ』であると判断された」


 ザフキエルが手に持ったタブレット状の光板を叩くと、私の周囲に幾億ものエラーコードが浮かび上がった。

 それは私が神となり、陛下が虚無を飲み込んで以来、この宇宙が辿ってきた「異常な幸福」の記録。


「バグ、ですって? 私たちはただ、自分たちの家で静かにお茶会を楽しんでいただけですわ。……貴方たちの言う資産価値とやらが、この銀河の輝きよりも重いとお仰りたいのかしら?」


 私が銀河の瞳を冷ややかに輝かせると、浮かび上がっていたエラーコードが、パリン、と音を立てて砕け散った。

 管理事務局が放つ「論理の圧力」。けれど、愛する夫に全宇宙を捧げられた今の私にとって、そんなものは他人の家の家計簿を見せられている程度の重みしかない。


「情緒。……やはり、この個体では論理的な対話は不可能か。……よろしい、ならば『外的要因による強制安定』を提案する」


「……強制安定?」


 ザフキエルが無機質な指先で虚空をなぞると、庭園の次元が音もなく割れた。

 そこから現れたのは、黄金の甲冑を纏い、背中には幾重もの幾何学的な輪光を背負った一人の青年。

 彼は優雅な所作で私の前に跪き、その手をとろうとした――が、私の周囲に張り巡らされた「陛下の無意識の殺気」に触れた瞬間、青年の指先からバチバチと火花が飛んだ。


「おっと、これは手厳しい。……初めまして、美しい星冠女王。私は第零階層・聖導宇宙の第三王子、アラリック。……貴女のその愛らしい『継承者』を、私の妃として迎えに参りました」


 アラリックと名乗った王子は、眩いばかりの笑みを浮かべてセレスを見やった。

 セレスは私の後ろで、「あのお兄様、お目々がぐるぐるしていますわ!」と不思議そうに指差している。


「求愛、ですって……?」


「左様。ザフキエル卿ら事務局の判断です。……この宇宙を廃棄から救う唯一の道は、安定した『上位宇宙』の血脈と交わり、因果を補強すること。……つまり、貴女の娘を私に差し出せば、この不法占拠を正式な『属領』として認めてあげよう、ということです」


 アラリックの言葉は丁寧だったが、その瞳の奥には、セレスに宿る「再始動リブート」の力を私欲のために利用せんとする、醜悪な欲望が透けて見えた。


 ――その瞬間。

 背後の噴水から、ゴボリ、と巨大な泡が浮いた。


 庭園中の空気が、一瞬にして鉛よりも重く、死よりも冷たい「虚無」へと変質する。

 先ほどまで魂が抜けたように白くなっていたギルバート様の周囲で、真っ黒に染まった噴水の水が、逆巻く龍のように立ち上がった。


「…………おい。……今、……誰を……誰に……差し出すと言った?」


 地の底から響くような、絶対的な破壊の意志を孕んだ声。

 ずぶ濡れのままゆっくりと立ち上がったギルバート様の瞳は、もはや紅い炎さえ消え、ただ何もかもを消去する「無」そのものへと変貌していた。


「……お、占有者ギルバート。精神の崩壊を確認したはずだが――」


 驚愕に顔を歪めるザフキエルを無視し、ギルバート様は水面の上を歩くようにして、アラリック王子の目の前へと移動した。


「……娘を、……妃だと? ……私のセレスに、……お前のような、……ハエの羽音よりも不快な男が、……触れるというのか?」


 ギルバート様が軽く右手を振り上げる。

 ただそれだけの動作で、アラリック王子が背負っていた黄金の輪光が、まるで見えない巨大な手で握りつぶされたかのように、ひしゃげ、砕け散った。


「ガ、ア……ッ!? 私の聖光が……っ!」


「……死ね。……お前たちの存在そのものを、私の記憶のゴミ箱へも残さず、根源から噛み砕いてくれる」


 陛下、復活。

 娘に嫌われたショックは、どうやら「娘を奪おうとする男」への殺意によって、最悪な形で上書きされてしまったようだった。


「あらあら。……ザフキエル様、アラリック様。……お逃げになるなら、今しかありませんわよ?」


 私はティーカップを再び手に取り、優雅に微笑んだ。

 理不尽な査察も、不吉な求愛も。

 愛に狂った皇帝陛下を本気で怒らせた今となっては、全宇宙の終わりよりも恐ろしい「お掃除」の対象でしかないのだから。

皆様、第55話いかがでしたでしょうか!

「だいっきらい」で精神崩壊していた陛下が、他宇宙の王子の「求愛」という地雷を踏まれた瞬間に、最悪のキレ方で復活……!

これぞ、宇宙一過保護なパパの真骨頂ですわね。

「お前の存在そのものをゴミ箱に残さず噛み砕く」という陛下の台詞、書いているミオも背筋がゾクゾクいたしましたわ。


エルシア様も、女王として淡々と事務官をあしらいつつ、最後は「逃げるなら今ですよ?」と慈悲(?)をかける余裕。

かつての捨てられ令嬢は、もうどこにもおりません。


しかし、アラリック王子の背後にいる「第零階層・聖導宇宙」。

事務局が正式にバックアップしているこの勢力、ただの噛ませ犬で終わるのでしょうか?

それとも、陛下の暴力が「宇宙の外交問題」へと発展してしまうのか……?


少しでも「陛下の復活が怖すぎて最高!」「エルシア女王の対応力が美しすぎる!」と感じていただけましたら、

【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、一家の「静かなお茶会」を取り戻す戦いを応援してくださいませ。


皆様の応援という名の「パパへの特効薬」が、次話、王子を次元の彼方へ吹き飛ばす陛下のさらなる大暴走を支える魔力になりますの。


これからもどうぞよろしくお願いします!

それでは、全宇宙が震撼する「陛下の教育」が始まる次回をお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ