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泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ
第5部:全宇宙を「私有地(マイホーム)」にした星冠女王、最愛の娘を狙う多次元の侵略者を最強夫の嫉妬という名の天災で根絶やしにしました

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第54話:セレスの反抗期!?「パパの魔力は重すぎますわ!」

マイレーネが泥と共に引きずられていった後の庭園は、再び銀河の静寂を取り戻した。

 けれど、私の隣に立つ皇帝陛下――全宇宙の私有地化を宣言した我が夫の機嫌は、すこぶる悪かった。


「……不快だ。あのような下等な泥の記憶が、この空気の中に一粒子でも残っていると思うだけで、反吐が出る」


 ギルバート様が指先を微かに動かす。

 それだけで、帝都を包む結界の強度が通常の数万倍に引き上げられ、宮殿の周囲には光さえも通さぬ漆黒の「虚無の帳」が幾重にも張り巡らされた。

 もはや、蚊の一匹どころか、光子の一つでさえ彼の許可なくしては私やセレスに近づくことはできない。


「陛下、やりすぎですわ。これでは庭園に陽の光も届きません」


「エルシア、お前は甘すぎる。上位階層の連中が過去の亡霊を送り込んできたのだ。……これからは、一秒たりとも私の魔力の外へ出ることは許さん」


 そう言って、ギルバート様は私の腰を引き寄せると同時に、傍らで積み上げられたお土産の山に手を伸ばしていたセレスティーナへ、どろりとした漆黒の魔力を「これでもか」と注ぎ込んだ。

 それは守護魔法という名の、絶対的な物理拘束に近い。


「パパ、……なんか、くらいですわ」


 セレスが、クッキーを掴もうとした手を止めて眉を寄せた。

 彼女の周囲では、ギルバート様の「愛(執着)」が具現化した黒い霧が、まるで巨大な繭のように渦巻いている。


「セレス、これはお前を守るための盾だ。この中に入っていれば、全宇宙が爆発してもお前の髪一筋傷つくことはない」


「でも、おててが重たいですわ。……それに、お母様のキラキラが見えません!」


 セレスの瞳に宿る紫の光が、不機嫌そうにちりりと爆ぜた。

 彼女にとって、私の「銀河の魔力」とギルバート様の「虚無の魔力」は、世界を構成する大切な二つの色。なのに、パパの黒があまりに濃すぎて、私の銀色を塗り潰してしまっているのだ。


「陛下、セレスが困っていますわ。……少し緩めて差し上げて?」


「ならん。……こいつは私の継承者だ。私の魔力の重さくらい、呼吸と同じように受け入れろ」


 ギルバート様が、これ以上ないほど過保護な、けれど傲慢な微笑みを浮かべてセレスの頭を撫でようとした――その時。


「――ぱぱ、だいっきらい!!」


 ピキィィィィィィィンッ!!


 セレスの叫びと共に、庭園の空間が「反転」した。

 彼女の瞳から溢れ出した紫の光が、ギルバート様の絶対的な虚無を、まるで薄い紙を破るようにして霧散させたのだ。

 それどころか、弾け飛んだ紫の波動はギルバート様を直撃し、全宇宙を跪かせる皇帝陛下を、後ろの噴水まで数メートルも吹き飛ばした。


「……え?」


 ドッパァァァァァァァン!!


 盛大な水しぶきと共に、宇宙の主が庭園の噴水に沈んだ。

 ロザリアやルチアが、見たこともないものを見たという顔で、石像のように固まっている。


「もう! パパ、あっちいってですわ! セレスはお母様とお茶会をするんですの!」


 セレスはぷいっと顔を背けると、私の膝に潜り込み、「お母様、だっこ!」と甘えてきた。

 私は呆気にとられながらも、ずぶ濡れで噴水から這い上がってきた夫を見つめた。


「……陛下。……大丈夫、ですか?」


「…………」


 ギルバート様は、濡れた前髪から水を滴らせながら、呆然としていた。

 身体的なダメージなど、彼にとっては無に等しい。だが、その魂が受けた衝撃は、宇宙創生時の爆発を遥かに凌駕していた。


「……今、……セレスは、……私のことが『嫌い』と……言ったのか?」


「『だいっきらい』、と仰いましたわね」


 追い打ちをかけた私の言葉に、ギルバート様の背後で「ドォォォォン」と絶望の幻聴が響いた気がした。

 神々を屠り、運命を上書きした最強の男が、三歳児の一言で膝をつき、灰色の石像のように白くなっている。


「……そうか。……私は、……嫌われたのか。……守ろうとしただけなのに、……重いと……」


「陛下、セレスも本気では……」


「……寝室に引きこもる。……これからの宇宙の管理は、……お前たちに任せる……」


 ギルバート様は、幽霊のような足取りで、びしょびしょのまま宮殿の中へと消えていった。

 その背中は、どんな強敵と対峙した時よりも小さく、哀愁に満ちていた。


「……あらあら。困りましたわね、セレス」


「ふん、ですわ! お母様、クッキー食べましょう!」


 私は溜息を吐きながら、娘の頭を撫でた。

 最強の皇帝が娘の反抗期で戦意喪失するという、平和(?)な光景。


 ――だが、その「隙」を見逃さない者がいた。


 ギルバート様が失意のあまり解いてしまった、帝都の漆黒の結界。

 その綻びから、一人の「男」が音もなく庭園の芝生に降り立った。

 彼は事務的な、けれど底知れないプレッシャーを放つスーツ姿。その胸元には、上位階層の紋章が刻まれたバッジが鈍く光っている。


「――失礼。占有者の情緒が乱れていると聞き、査察オーディットに伺いました」


 皇帝の不在。最強の守護者が「娘に嫌われたショック」で使い物にならない、絶好のタイミングで。

 宇宙の事務局から送り込まれた真の刺客、査察官がエルシアの前に立ちはだかった。

第54話、お読みいただきありがとうございました!

宇宙最強のパパ、ギルバート様……ついに娘からの「だいっきらい」という、神の雷よりも鋭い一撃を受けてしまいましたわ。

噴水に突っ込んだ後の陛下の、魂が抜けたような姿……ミオ、書いていて不憫でなりませんでした。でも、少しだけ「いい気味ですわ」と思ってしまったのは内緒ですわよ?


セレス様も、パパの重すぎる愛を跳ね返すほどの成長を見せています。

ですが、その「親子の痴話喧嘩」が生んだ一瞬の隙を突いて、ついに「上位階層」の査察官が登場。


陛下が寝込んでいる(?)間に、エルシア様お一人でこの理不尽な事務官をどうあしらうのか?

女王としての真の「対応力」が試されますわ!


少しでも「陛下の絶望っぷりに笑った!」「セレス様の反抗期が強すぎる!」と感じていただけましたら、

【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、一家の危機(?)を応援してくださいませ。


皆様の応援という名の「パパへの励まし」が、次話、ショックから立ち直った陛下が査察官を八つ当たりで粉砕する(予定の)魔力になりますの。


これからもどうぞよろしくお願いします!

それでは、お役所仕事と最強女王が激突する次回をお楽しみに。

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