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泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ
第5部:全宇宙を「私有地(マイホーム)」にした星冠女王、最愛の娘を狙う多次元の侵略者を最強夫の嫉妬という名の天災で根絶やしにしました

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第53話:落ちぶれた異母妹の再会、女神の慈悲は「無」よりも冷たく

黒い箱が塵となって消えた庭園には、再び穏やかな風が吹き抜けていた。

 だが、その風に乗って届いたのは、甘い茶葉の香りではなく、鼻を突くような「腐敗」と「執着」の混じった不快な臭気。


「――お、お姉様……っ! お姉様、いらっしゃるのでしょう!? 私を、貴方の可愛い妹を見捨てないで……!」


 宮殿の重厚な鉄格子の向こう。

 そこにいたのは、かつてアステリア王国で「真の聖女」と持て囃され、私を地下牢へと追いやった異母妹、マイレーネだった。


 かつての煌びやかなドレスはボロ布のように裂け、誇り高かった銀糸の髪は泥と埃で見る影もない。

 アステリア王国が崩壊し、陛下の手によって地図から消し飛ばされた後、彼女がどう生き延びたのかなど興味もなかったけれど。……どうやら、この平穏な私の領土マイホームにまで這いずってきたらしい。


「……陛下。せっかくの紅茶が、少し苦くなってしまいましたわ」


 私はカップを置き、門扉の向こうの「動く泥」を静かに見つめた。

 私の瞳に宿る銀河が、マイレーネの浅ましい魂をスキャンするように明滅する。


「ああ。……不快だな。エルシア、あのような塵に視線を割く必要はない。……ロザリア、今すぐあれを次元の狭間にでも放り込んでおけ。私の庭が汚れる」


 ギルバート様が、椅子の背もたれに深く寄りかかったまま、指先で卓を叩く。

 ただそれだけの動作で、マイレーネの周囲の重力が数倍に跳ね上がり、彼女は悲鳴を上げて石床に顔を叩きつけられた。


「あ、ぐ……っ! ひ、酷いわ、ギルバート様……! 私はお姉様の妹なのですよ!? 姉がこんなに贅沢をしているのに、私が飢えて死ぬのを黙って見ているなんて……!」


 マイレーネは泥にまみれた顔を上げ、私を……いえ、私の周囲に溢れ出す「神気」を初めてその眼に映した。


 その瞬間。

 彼女の不平不満に歪んでいた表情が、凍りついたように固まった。


「……あ、あ……」


 見えるはずだ。

 今の私から漏れ出しているのは、人間が理解できる「美しさ」ではない。

 宇宙の理を支配し、幾千の星々を掌に収める者だけが放つ、絶対的な断絶の光。

 彼女がどれほど背伸びをしても、どれほど過去の絆を叫んでも、今の私にとっては「数光年先の塵」を見ているのと変わらないのだから。


「マイレーネ。……貴女、まだそんな場所にいたのですね」


 私はゆっくりと立ち上がり、バルコニーの縁まで歩んだ。

 私の足元から銀色の花々が溢れ出し、重力に逆らって宙を舞う。


「助けて、なんて……。貴女が私を地下牢で笑った時、私は貴女に助けを求めましたか?」


「そ、それは……! でも、お姉様は今、こんなに幸せで……!」


「ええ。陛下に拾われ、愛され、私はこの宇宙のすべてを手に入れました。……だからこそ、貴女のような『過去の遺物』に割く慈悲など、一滴も残っていないのですわ」


 私が微笑むと、マイレーネは絶望に瞳を剥き、泡を吹いてその場にひっくり返った。

 物理的な攻撃ではない。私の放つ「存在の質量」が、彼女の矮小な精神を内側から破壊したに過ぎない。


「エルシア。……満足か? まだ足りないというなら、あの一族の魂をすべて集めて、永遠に燃え続ける星の核へ閉じ込めてやってもいいが」


 ギルバート様が私の背後に立ち、その逞しい腕で私を抱きしめた。

 彼の独占欲に満ちた熱量が、私の冷えた心を心地よく上書きしていく。


「いいえ、陛下。……ゴミ箱に捨てたものを、わざわざ拾い上げる必要はありませんわ」


 私は彼の胸に身を預け、意識を失ったマイレーネが引きずられていくのを見送った。

 けれど、彼女が落とした「古びたペンダント」だけが、私の銀河の瞳に奇妙な残像を残した。


 それはアステリア王家の紋章ではない。

 先ほど握りつぶした「黒い箱」と同じ――無機質な回路のような、上位階層の刻印。


「……陛下。どうやら、あの子をここまで連れてきたのは、ただの偶然ではなさそうですわね」


「……チッ。あの掃除屋共め、死霊(過去)まで使って査察をしようというのか」


 ギルバート様の瞳が、紅い殺意を帯びて細められる。

 宇宙を統べる女王への嫌がらせは、どうやら次元を超えて、私たちの『根源』を揺さぶりにかかっているようだった。

第53話、お読みいただきありがとうございました!

かつての宿敵(自称)である異母妹マイレーネ。

彼女がどんなに過去の絆を叫んでも、今のエルシア様にとっては「掃除し忘れた塵」同然……。この圧倒的なステージの差、お楽しみいただけましたでしょうか?

「ゴミ箱に捨てたものを拾う必要はない」というエルシア様の台詞、ミオも書いていて背筋がゾクゾクいたしましたわ!


しかし、マイレーネが持っていたペンダントに刻まれた「上位階層」の紋章。

どうやら事務局の連中は、エルシア様のトラウマを利用して、この宇宙の「不備」を証明しようとしているようです。


陛下を本気で怒らせたら、上位階層ごと消滅しかねないというのに……ふふ、愚かなこと。

少しでも「マイレーネの惨めな姿にスカッとした!」「陛下のさらなるブチギレに期待!」と感じていただけましたら、

【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、二人の「完璧な庭園」を応援してくださいませ。


皆様の応援という名の「女王の慈悲」が、次話、査察官の喉元を食い破る陛下の魔力になりますの。


これからもどうぞよろしくお願いします!

それでは、過去の亡霊を粉砕する次回をお楽しみに。

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