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泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ
第5部:全宇宙を「私有地(マイホーム)」にした星冠女王、最愛の娘を狙う多次元の侵略者を最強夫の嫉妬という名の天災で根絶やしにしました

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第52話:全宇宙からの朝貢、陛下は「熨斗」を要求する

「――ッ、ドクン……!」


 山積みになった秘宝の頂点。漆黒の表面に回路のような銀光を走らせるその箱が、生き物のように脈動した。

 庭園に漂っていた穏やかなお茶会の空気が、一瞬にして「真空」へと変わる。物理的な呼吸が止まったのではない。空間そのものが、この箱の存在を『異物』として拒絶し、震えているのだ。


「陛下。……この箱、なんだかとてもお行儀が悪いですわ。中から『命令』の匂いがいたします」


 私はティーカップをソーサーに戻し、銀河の瞳を細めた。

 管理者を倒し、深淵を飲み込み、宇宙そのものと魂を重ねた今の私には、その箱の正体がぼんやりと透けて見える。

 それは魔力でも神力でもない。もっと無機質で、冷酷な――『事務的な意志』。


「……あいつら、掃除し忘れたゴミがまだ残っていたか。ロザリア、セレスを連れて下がれ。……あまりに醜悪なものを見せると、あの子の情操教育に悪い」


 ギルバート様が、椅子の背もたれに預けていた身体をゆっくりと起こした。

 彼が動くだけで、周囲の重力がギリギリと悲鳴を上げる。

 彼にとっては、この宇宙すべてがエルシア――つまり、私と過ごすための『プライベートな庭』なのだ。そこへ無断で届けられた、送り主不明の不吉な箱。それだけで、彼の逆鱗に触れるには十分だった。


「いやですわ、パパ! あのお箱、なんだか面白い音がしていますもの! セレスも一緒に見たいですわ!」


「セレス。……お菓子の追加が欲しければ、ルチアと一緒にお部屋へ戻りなさい。……これは、パパが『不法投棄』の犯人を教育する時間だ」


 ギルバート様が低く、けれど抗いがたい響きで告げると、セレスは頬を膨らませながらも、ルチアに抱きかかえられて宮殿の奥へと消えていった。


 ――静寂が、庭園を支配する。

 その瞬間、黒い箱がパカリと開いた。


 中から溢れ出したのは、虹色に濁った液状の魔力。それが空中で凝固し、一つの「顔」を形作る。目も鼻も口もない、ただ幾何学的な紋様が刻まれただけの、無機質なつら


『――警告。……第一階層・管理ユニットの欠落を確認。……後任の未着任につき、当区画を「廃棄予定」として受理した。……占有者諸君、直ちに存在を停止し、データの回収に応じられたし』


 その声は、感情の一切を排した機械的な響きだった。

 かつての神々のような傲慢ささえない。ただ「決まった手順」を淡々とこなそうとする、絶対的な事務処理の意志。


「廃棄、ですって?」


 私は思わず、くすりと笑い声を漏らしてしまった。

 これほど美しい星々を、陛下が私に捧げてくれたこの宇宙を、「管理者がいないから」という理由だけでゴミ箱へ捨てようというのか。


「陛下。……どうやら、宇宙の掃除屋さんは、私たちの存在が『不法占拠』だと仰っていますわよ」


「……フン。不法だと? 笑わせるな」


 ギルバート様が立ち上がり、無造作に黒い箱へと歩み寄る。

 液状の面が、ギルバート様の漆黒の気配に反応し、その紋様を激しく明滅させた。


『――事象エラー。……個体名:ギルバート。……お前の魂は、既に「虚無」として処理済みのはずだ。……なぜ、個としての形を維持している。……不適切なデータの残留を検知。……強制消去デリートを実行する』


 面から放たれたのは、白光のレーザー。

 それは物質を壊すのではなく、存在の「定義」を消し去る術式。触れれば、過去も未来もまとめて消滅する。


 だが、ギルバート様は避けることさえしなかった。

 彼はただ、掲げた左手を「しっ、しっ」と追い払うように横に振っただけだ。


 バヂィィィィィィンッ!!


 宇宙の理を消去するはずの光が、まるでハエ叩きに遭ったかのように反対方向へと弾け飛び、はるか上空、宇宙の外壁を突き破って消えていった。


「……眩しいんだよ。エルシアと私のティータイムに、そんな安っぽい電飾を持ち込むな。……それと、一つ教えておいてやる」


 ギルバート様が、液状の面をその右手で掴み上げた。

 魔力を通しているわけではない。彼の「独占欲」という名の意志が、実体のないはずの高次元体を物理的に捕らえたのだ。


「この宇宙は、既に私が買い取った。……名義は『エルシア・フォン・アステリア』。……文句があるなら、全宇宙の歴史を書き換えたその『熨斗のし』でも持って、出直してこい」


『――論理破綻ロジカルエラー。……占有権の主張を拒絶。……「上位階層」による査察を申請――』


 バキ、バキバキッ……!!


 ギルバート様が力を込めると、高次元の面は悲鳴さえ上げられず、黒い飛沫となって弾け飛んだ。

 残された黒い箱も、彼の足元から広がる漆黒の虚無に飲み込まれ、影さえも残さず消滅した。


 再び、静かな庭園に風が吹く。

 だが、空に開いた「次元の穴」は塞がっていなかった。


「……陛下。……今のが『警告』だとすれば、次に来るのは……」


「ああ、分かっている。……査察官オーディターか、あるいは全宇宙を消すための『執行官』か。……どちらにせよ、私のエルシアの平穏を乱そうというなら、その『上位階層』とやらごと、私の闇で窒息させてやるまでだ」


 ギルバート様は再び私の隣に座ると、冷めた紅茶を一口飲み、不機嫌そうに空を睨んだ。


「エルシア。……お茶会の続きだ。……次は、あの大口を叩いた掃除屋の首でも、茶菓子パイの飾りに添えてやろう」


 宇宙のオーナーとなった夫婦に、ついに届いた「立ち退き勧告」。

 理不尽なまでの愛と暴力が、宇宙の頂点を超え、その「外側」の管理者たちを戦慄させる日々が、今再び始まった。

皆様、第52話いかがでしたでしょうか!

「宇宙を廃棄する」なんて理不尽なことを宣う高次元の使者を、陛下の「個人的な不快感」だけで文字通り握り潰す……これぞ本作の真骨頂ですわ。

「名義はエルシア」という陛下のパワーワード、全宇宙の不動産王も真っ青な溺愛っぷりですわね。


そして、ついに現れた「上位階層」の存在。

管理者を倒せば終わりだと思っていたら、今度は「お役所仕事」のような理不尽が襲いかかる。

この、宇宙規模の「家主 vs 清掃局」の争い、これからどう転がっていくのか……ミオもワクワクが止まりませんわ!


少しでも「陛下の不法投棄への対応が早すぎてスカッとした!」「熨斗を要求する陛下、最高!」と感じていただけましたら、

【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で、二人の「私有地」を守る戦いを応援してくださいませ。


皆様の応援という名の「登記簿」が、次話、査察官を戦慄させる陛下のさらなる暴挙(?)を引き起こす最強の力になりますの。


これからもどうぞよろしくお願いします!

それでは、お茶会を邪魔する奴は許さない、次回もお楽しみに。

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