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泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ
第4部:存在そのものがエラーだと拒絶された女神、虚無の王と魂を重ねて全宇宙の因果を溺愛で上書きしました

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第38話:深淵の門番、女神の帰還に涙す

次元の底は、光が死ぬ場所だった。

 『エターナル・エルシア』の船外モニターに映るのは、何もかもを飲み込むような絶対的な虚無。

 だが、私たちが降り立つと同時に、その闇は劇的に塗り替えられた。


「……信じられません。これほど高密度の魔力が、ただの花となって咲き誇るなんて」


 ロザリアが震える手で剣の柄を握り直す。

 船から降り立った私の足元から、波紋のように銀色の花が広がっていく。それは、かつてアステリア王国の冷たい大地で、私がどれほど祈っても咲かなかった「救いの輝き」そのものだった。


「エルシア。足元が不安定だ、私の腕に捕まっていろ」


 ギルバート様は、周囲の幻想的な光景など目に入っていないかのように、私の足元ばかりを気にしている。彼は漆黒のマントを翻し、周囲に漂う「深淵の瘴気」をその覇気だけで霧散させていた。


「大丈夫ですわ、陛下。……不思議と、ここは懐かしい香りがいたしますの」


「パパ、あそこに誰かいますわ! とっても大きな……お化けさん?」


 セレスが指差した先。

 銀河の花の海の向こうから、三つの巨大な影が立ち上がった。

 それは、身長が十メートルを優位に超える、半透明の異形の巨神たち。顔には目も鼻もなく、ただ一つの「燃える銀河の紋章」が刻まれている。


「……あれは、次元の最果てを守護する『深淵の門番』……。かつて数多の神々を喰らったという、伝説の終焉兵器……っ!」


 ルチアが悲鳴に近い声を上げる。

 門番たちが一歩踏み出すごとに、次元そのものが地鳴りを上げ、圧倒的な威圧感が船を軋ませる。


「……エルシア、セレス。下がれ」


 ギルバート様の瞳が、獲物を狙う獣のそれへと変わった。

 彼の手には、いつの間にかマスター・プログラムを穿ったあの漆黒の魔剣が握られている。


「私の家族の庭に、そのような不細工な石像は必要ない。……三秒で、塵に戻してやる」


「陛下、お待ちください!」


 私は、今にも空間ごと巨神たちを切り裂こうとするギルバート様の前に出た。

 なぜだろう。私には、彼らから「敵意」が微塵も感じられないのだ。


 私が巨神たちを見上げ、その銀河の瞳を真っ直ぐに向けると、巨神たちの動きがぴたりと止まった。


『――ア……。アア……。……ああ……!!』


 地響きのような、けれど泣きじゃくる子供のような振動が深淵に響き渡った。

 次の瞬間、無敵を誇るはずの門番たちが、その場に崩れ落ちるように膝をついたのだ。

 あまりの勢いに、銀河の花がキラキラと舞い上がる。


『……おお……! 我が……原初の、母様……! ああ、……なんと、……なんと長い冬でしたか……!!』


 門番たちの顔にある紋章から、銀色の「涙」が溢れ出し、滝のように地面を濡らす。

 彼らは巨大な掌を地面につき、額を擦り付けるようにして私に平伏した。


「母様? ……また、その呼び方なのですか?」


「……フン、魔王の次は石像か。エルシア、お前はどれだけ『大きな子供』を飼えば気が済むんだ」


 ギルバート様が、不機嫌そうに剣を収める。だが、彼の眼差しは鋭いままだった。

 門番の一体が、震える声で語りかける。


『銀河の瞳が、ふたたびこの深淵に光を灯した……。我ら門番、三千界の時を経て、貴女様の帰還を……この瞬間のために、己の魂を繋ぎ止めてまいりました……!』


「三千界……。私は、そんなに長い間、皆様を待たせていたのですね」


 私が一歩近づき、門番の冷たい指先に触れると、その巨体は歓喜に震え、周囲の魔力濃度が一気に上昇した。

 だが、門番の一体がふと、私の背後に立つギルバート様を視界に入れた瞬間。


『……!? そ、その……魂の、波動は……』


 門番が、恐怖に近い驚愕でその身を仰け反らせた。

 彼らは私に抱いている「敬愛」とは全く質の異なる、本能的な「絶望」をギルバート様に感じているようだった。


『……まさか、……『漆黒の虚無』が、……女神あのかたの隣に……? ……いや、あれは、……かつての……』


「おい。何をぶつぶつ言っている」


 ギルバート様が、冷徹な一言で門番の言葉を遮った。

 彼の背後に、一瞬だけ、門番たちよりも遥かに巨大な「何かの影」が浮かび上がったように見えた。


「私はエルシアの夫だ。それ以上の情報は、お前たちのその空っぽの頭には不要だろう?」


『……ッ! し、失礼いたしました……! ……ああ、理が……。運命が、ふたたび回り始めたのですね……』


 門番たちは、畏怖のあまり体を小さく丸め、私たちが進むべき道の先――深淵のさらに奥底へと、道を切り開いた。


「エルシア様。……あの方たち、陛下を見て、まるで『この世の終わり』を見たような顔をしていましたわ」


 ルチアが小声で囁く。

 私も、ギルバート様の横顔をそっと見上げた。

 彼は何事もなかったかのように、私の手をとり、エスコートするように歩き出す。


「陛下。……今の、門番たちの言葉……」


「気にするな。……お前の帰還を祝う席に、余計な昔話は必要ない。……さあ、行こう。この奥に、お前の『兄弟』とやらが、生意気にも王面をして座っているらしいからな」


 ギルバート様の言葉通り、深淵の奥から、私と同じ――けれど、より攻撃的で鋭い『銀河のプレッシャー』が放たれ始めた。


 管理者を倒しただけでは、まだ序の口。

 この深淵には、私と同じ「力」を持ちながら、私を認めようとしない者たちが待ち構えている。

 けれど、私にはもう、孤独な祈りしかなかったあの頃の私ではない。


 愛する夫と、娘。そして忠実な仲間たち。

 私は、自分の本当のルーツを証明するために、光なき深淵の最奥へと踏み出した。

第38話、お読みいただきありがとうございました!

深淵の入り口で待ち構えていた最強の門番たちが、エルシア様を見た瞬間に「ママぁ!」と泣き崩れるカタルシス。

かつて泥を啜っていた少女が、全宇宙の根源から「母」と慕われる逆転劇、皆様にもお楽しみいただけましたでしょうか?


そして、不気味なほど門番たちに恐れられたギルバート様……。

「漆黒の虚無」という不穏なキーワードが出てまいりましたが、陛下の正体は一体……?

ご本人は「ただの夫だ」と言い張っていますが、どうやらその愛の重さは、宇宙の創生すら左右しかねない秘密があるようですわね。


次はついに、エルシア様の「兄弟」を名乗る傲慢な神々との対峙。

「お前なんて妹じゃない」と見下す神々を、ギルバート様がどう「教育」してくださるのか……ふふ、ワクワクいたしますわ。


少しでも「門番のデレっぷりに笑った!」「陛下の正体が気になりすぎる!」と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価(★★★★★) をお願いします。


皆様の応援という名の「銀河の涙」が、次話、エルシア様が『神としての格』を見せつけるための最高の輝きになりますの。


これからもどうぞよろしくお願いします!

それでは、次回の更新もお楽しみに。

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